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祖母の料理

話はGW、自粛生活で暇を持てあましていたときのできごとです。

その日も3日ぶりの外出で食糧調達のためいつものスーパーへ行ったとき、

いつもとかわぬ陳列棚のラインナップに気になる食材を見つけたんです。
「蕗」でした。

蕗を見かけると祖母の作ってくれた蕗の煮物を思い出す。
あまじょっぱくて、噛むとほのかに蕗の独特な香りがする煮物が大好きで
春の終わりになると作ってくれとよく祖母に頼んでいたんです。

私の家は両親共働き、父は公務員、母は百貨店勤務でお互い管理職。
家族全員が揃うのは夜8時以降だったんです。

そんな家庭環境もあり、日々の食事は私が高校を卒業するまで祖母が作っていました。世間一般で言う母の味は私でいうと祖母の味。

そんな祖母ももう87歳。痴呆が進んで私の顔を見ても誰だか思い出すことができません。歩くことにも歩行器が必要なため、祖母の料理は私の思い出の中の代物となっていました。

蕗の煮物、食べたいなあとは思ってたんですけど普段は見かけても1束298円という日々食費を切り詰める私には手が出しづらい値段と祖母の「アク抜きがこれまた大変なのさ」という言葉から、自分で買って作るということは倦厭していました。

でもこの自粛生活を強いられた大型連休、
出掛けないから時間も、金もある。これは作るしかないっしょ!!!
と買い物かごに一番でっかい蕗をどどんと入れちまいました。

しかし、でかい。というか長い。
買いもの袋からネギが飛び出ている光景は目にすれど、
買いもの袋から蕗が飛び出ている光景はあまり目にすることはないのではなかろうか。
すれ違いざまのおじさんに2度見されました。

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↑これを抱えて帰るの恥ずかしかった、、、

早速家に帰って蕗の下処理について検索する。
下処理方法は

塩で板ずり → 沸騰したお湯でアク抜き →    水にさらしながら筋取り

で、完了。

とりあえずやってみる。
へー意外と簡単そうじゃんとなめてかかった私をどつきたい笑。

アク抜きまでは比較的スムーズだったのですが、すじとりが時間がかかる、、、
そしてアクで手がきしきししてなんか気持ち悪い、、、
下処理終わった頃にはアクで爪先が黒くなっていました。

こんなに大変な作業なのに孫からのお願いをきいてくれて1人台所で同じ作業をしていたのか、、、、
とまだ元気だった祖母について思いを馳せてしまう。

社会人にしてはじめて1人暮らしをして自分の生活を自分の力だけで運営していくことがいかに大変かということを痛感する毎日です。
生活費の全てを自分の力で稼ぎ、その範囲で工夫して生活を賄っていく。
実家暮らしでは決してわかることがなかったであろう経験でした。

特に食事は自分ひとり分だけでも3食つくることはかなり時間と労力がかかる、、
家族6人分の食事を掃除洗濯その他の家事をこなしながら毎日作っていた祖母はとても大変だったと思います。

本当に今更だけれど、祖母への感謝の気持ちが溢れて、その気持ちを伝えたいのに、もう伝えても、伝わらないのが悲しい。

そんなこんなで下処理が終わってようやく味付けの段階にこぎつける。
味付けはMAIさんのYouTubeのレシピ、砂糖だけ倍量で作りました。

祖母は甘い味付けを好んでいたので、砂糖も倍量でより祖母の味に近づけるためです。生姜焼きも、肉じゃがも、もちろん蕗の煮物もあまじょっぱいの中でも
甘味が強い味付けをしていました。

調味料と唐辛子を入れて煮つけると狭いキッチンいっぱいに醤油と出汁の香りが広がる。

懐かしい香りがしました。

程よくだし汁の水分が飛んだ煮物を食べると蕗の香りが鼻に抜け、懐かしいあまじょっぱい味、祖母の思い出の味でした。

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嬉しくて、母に思わずラインをしていました笑。

いつも通りだと気づかないけれど、ある日失った時にその人が自分にとって大切な人だったんだとハッとする。もうそのいつも通りが戻らないって知った時に思うことってもっとたくさん話が聞きたかった。もっと一緒の思い出を作っておけばよかったという事。

どんだけやっても後悔はあるんだろうけど、私の側にいてくれて、私が大切にしたいと思う人たちともっとたくさん話して、もっと思い出を作ろう。
おばあちゃん、もう私のことはわからないと思うけど、これまでの感謝をこめてたくさん会ってたくさん話をしよう。祖母の好きな甘いお菓子を手土産にして。

祖母の料理を通してそう強く思った大型連休、昼下がりの出来事でした。

■蕗の煮物
参考にしたレシピはこちら↓
✳︎私は砂糖だけレシピの倍量にしています。

1人前食堂
https://youtu.be/vhiltwNIMRQ

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