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企業研究者編_#4.基盤企業研究者の戦闘能力の可視化_Materials and Methods

基盤企業研究者と開発企業研究者

 さてさて、前回(第2回)の記事をおさらいします。

企業の研究者には2種類ある:
1.開発色の強い企業研究者(開発企業研究者)
2.アカデミアとしても遜色ない企業研究者(基盤企業研究者)

 そして、このNoteでは、アカデミアとしても遜色ない企業研究者になるための方法を明示することを目指しています。そのために、今回は、基盤企業研究者の統計データを解析する方法を示します。どのような研究領域に、また、どのような会社に、基盤企業研究者が多いのかを帰納的に知ることによって、そうした研究者になるための演繹的方法を導こうとするものです。

基盤企業研究者の戦闘能力

 企業のアカデミアとしての能力の評価手法を考えていきます。研究アクティビティーの高さを示す指標に、論文の発表数が挙げられるでしょう。沢山の論文を発表している組織は、その分高い研究アクティビティーがあると解釈できます。従って、アカデミアとしての調査方法としては、組織ごとに研究成果を検索して論文発表数を比較するというアプローチが考えられます。この方法では、scopusやpubmedなどのデータベース検索サイトが有用です。各機関ごとに発表している論文の絶対数を、網羅的に探索し、比較できます。しかしこの方法は、2つの大きな課題があります。

①研究員が出版したジャーナルのインパクトが評価されない
 
論文の発表先はどこでも同じ価値を持つわけではありません。研究者が投稿した原稿をまともに査読・編集することなく、投稿者から出版費用を取ることで、オープンアクセスの学術誌として出版するハゲタカジャーナルが問題となっています。

②一人あたりの評点を算出できない 
 組織の人数が多いほど、出版数は高くなりますので、在籍人数を考慮して、1人あたりの研究アクティビティーを評価する方法が必要です。

 そこで発表先のJournalのインパクトや、研究員数を考慮した解析を行うために、用いるのがresearchgateです。researchgateは研究者が使うSNS の1つです。似通ったものに日本で使われるresearchmapがありますが、researchgateの方がグローバルで、統計的なデータを取得できます。Researchgateでは、RGスコアという独自の指標で研究者や研究機関のアクティビティを評価しています。RGスコアは良いジャーナル(例えば、インパクトファクターと呼ばれる、その論文がどのくらい他の論文に引用されるかを示す数値が高いジャーナル)に論文を発表するほど、発表した論文が他の文献に引用されるほど、フォローワーが増えるほど、増加していきます。そうして算出された個人のRGスコアを機関ごとに集計したものが機関のRGスコアとなります。この機関のRGスコアを使うことで、業績のインパクトを考慮して大学と企業の研究能力を比較できます。ただ注意が必要なのは、この指標はresearchgate登録者を対象にしており、全体を反映したものではないと言うことです。統計的にいうと、母集団(全研究員)から抽出した標本(researchgate登録者)の評価になります。また、標本はランダムに抽出されているのではなく、研究活動をする上でネットワーキングをしたい人や情報収集をしたい人などが多いという点を注意しなければなりません。そのため、標本を抽出しない網羅的な評価軸も重要になります。

 いずれにせよ、researchgateのスコアとscopus等を用いた検索の両方で評価の高い企業はアカデミアとしても機能していると評価できます。世の中の認識どおり、大学は企業より遥かに多くの研究成果を出しているのか?、逆に意外にも負けているのか?、気になるところです。

就職への情報の活用

他の方法は?

 もっと全体の発表論文のIFを考慮した解析が可能なツールをご存じでしたら、コメントかツイッターのDMでお知らせください。

次回

 次回は、解析結果を共有したいと思います。



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