企業研究者編_#2.企業研究者は2種類ある
大学の研究と企業の研究の違いを教えてください
この就職活動をしている大学生や大学院生が良くする質問の1つについての一般的な回答について、前回の記事で取り上げましたが、今回は新しい視点で深掘りしてみます。
企業 or 大学 ; 進路の迷いに隠された心理
ポンヌフは、かれこれ10年以上、大学生のキャリア相談を受けていますが、その中で大きな気づきがありました。進路を迷われている方、例えば企業の研究者と大学の研究者のどちらになりたいかを迷われている方が本当に知りたい情報は、実は ”違い” ではなく、”どのくらい同じか” なのです。つまり、アカデミアの本質である、知的好奇心の探求や学会発表や論文発表、博士号の取得などが、どの程度、企業で出来るか?を内心は知りたいのではないでしょうか?
その答えは、殆ど語られることはありません。なぜなら、企業説明会や面接等では、限られた時間の中で、風土やヴィジョンに共感できるかを確認することに重きが置かれるからです。また、研究をどのように社会に役立てるかが重要です。単に真理を追究していきたいだけなら、企業に行く必要はありません。
キャリアアンカーと本質解明という価値観
一方で、実はキャリアアンカー(働くということに対する譲れない価値観)を考えたとき、企業が学究的視点を大事にしているかは、重要なポイントです。確かに、研究活動のやり方は、目的を達成するための手段でしかありません。しかし、学究的な活動が認められているということは、その企業で本質の解明に重きが置かれていることを意味します。学会発表や論文発表は、解明した本質が専門家から見て妥当かを確認する過程であり、その過程を通じて研究は研磨され、更には研究員のレベルが向上するのです。また、本質解明によって生まれたコア技術や特許は、その企業のシーズのクオリティーにつながります。以上のことから、学会発表や論文発表、博士号取得が認められているかは、企業の本質解明に対する価値観の表れと言えます。
2種類の企業研究者
そのようなアカデミアの視点で解析すると、実は企業の研究者は大きく2種類に分けられます。1つは研究職とは名がつくものの、開発の色が強く、学会発表や論文発表は殆ど出来ない研究者、もう1つはアカデミアと遜色ないほど研究成果を公表できる研究者です。このNoteでは、前者を開発企業研究者、後者を基盤企業研究者と定義します。
キャリアパスを考えたときに、開発企業研究者は基本的にワンウェイドアです。つまり、入社と同時にアカデミアからみて死んだ研究者になるということです。本当にそう理解して就職されているのでしょうか?一方、基盤企業研究者は、企業に属しながら、状況に応じてアカデミアに移るという選択肢も考えられます。どちらが良いとか、優れているとか、そういう問題ではありませんが、もしアカデミアと同様に基盤的な研究活動を進めつつ、社会に役に立つ研究が進められたら、素晴らしいと思いませんか?
このNoteは、次回以降、おそらく初めてアカデミアとしての企業研究者(基盤企業研究者)の実像を、客観的(統計的)に示します。大学か企業かを迷われている学生さんであれば、このデータを読み解くことにより、行動が変わり、遂には人生が変わるかもしれません。
■大学と企業の研究者で進路を迷っている人が本当に知りたい情報は、大学の研究者の醍醐味である”知的好奇心の探求や学会発表や論文発表、博士号取得が企業で出来るか?”である。こうした学究的活動が認められているかは、企業の本質解明に対する価値観の表れである。同時に、研究は目的達成のための手段の1つであるが、価値観の現れでもある。
■企業の研究者には2種類ある:
1.開発色の強い企業研究者(開発企業研究者)
2.アカデミアとしても遜色ない企業研究者(基盤企業研究者)