マーシャル諸島の少年が
眺める水平線のふもとにて
小船に乗る父の姿を見つけようと
たかくたかくヤシの木に登る

離陸するボーイングの粉塵で
視界が曇り きっとナレウは許さないだろうと眉を顰める

けれどかれは知ることはないのだ 
百年後に滑走路は海原へ完全に沈み
馬尾草が神々の遺跡を破壊することを

父の船が沖合までエンジンを走らせるのは
浅瀬で成魚がとれずじまいであるからだと

島の人々が憎む太陽の熱い日差しを
北国の人々はフレイヤとフレイの夫婦神の訪れと喜ぶことを

大海が六千海里を超えて白波を運ぶとき
少年の寂寥をば運んではくれない

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