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仕事さがし①
🐢おかめちゃん
亀と人間のハイブリッド
亀の名残りは、甲羅と
ゆっくりの歩みのみ
ハイソサエティにみえるが
じつはおとぼけな二十歳
幼馴染のおつるちゃんと
おめでたい席に呼ばれて
舞を舞うこともある
🐬おさめちゃん
サメと人間のハイブリッド
サメの名残りは、
鋭い歯とへの字口
そしてサメ肌
いちご大福が大好きな
自他共に認めるおとぼけな
二十歳
おかめちゃんと幼馴染
今日はおさめちゃんが
おかめちゃん宅へ
🐬『おかーめーちゃーーん
おかーめーちゃーーん』
🐢『はあーい あら
おさめちゃん、
らっしゃい』
🐬『あけましておめでとう』
🐢『あけましておめでとう
本年もどうぞよろぴこ』
🐬『本年もどうぞよろぴこ
ぴこぴこぴこりん』
🐢『このやりとり、そろそろ
やめようよ、元日から毎日
会ってるんだから、4回目
なんだよ』
🐬『わかってるけど、
言わずにはおれない!』
🐢『なんで?』
🐬『だってさー
あと一週間もしたら、
この挨拶、できないだろう?』
🐢『まあ、松の内も終わるし
世間も仕事や学校が
はじまるしね』
🐬『そうだよ。でもあれだね
今年はさー、
家事手伝いっていう職業を、
一度お休みしてさー
よそで、お仕事してみるのも
イイよねー⭐️』
🐢『おさめちゃんがかい?』
🐬『そうだよ!だってさ
二十歳過ぎて、一度も
お勤めに出たことないのも
なんだか人生経験っていう
観点からみると、ちょっと
物足りなさを感じるんだよね
いずれ玉の輿に乗る私と
しては、ゆくゆくそういう
経験の必要もなくなる
だろうし…
その点、おかめちゃんは
おつるちゃんと一緒に
おめでたい席に呼ばれて
立派にお仕事してんじゃん
うらやましいよ』
🐢『いやいや、月平均してみたら
一ヶ月に二~三度、あるかないの
ほんのお小遣い稼ぎだし
どっちかいうと、お稽古代の
方が、高い時もあるよ』
🐬『それでも、ギャラを
いただくってことは
世間様から
認められてるって
ことじゃん、それって
大きいと思うんだよ』
🐢『まあ、ありがたいことだね
おさめちゃんだってさ
じっちゃんを手伝って
立派な売り物のイモや
ネギ、作ってんじゃん
食は命の基本だよ
もっとも大事な仕事だよ 』
🐬『まあねーじっちゃんには
手伝ってるっていうより
じゃましてるって言われる
けどね』
🐢『鮫治も
なかなか言うよねー』
🐬『じっちゃんはねー
常日頃、繰り返し言うんだよ。
農は、土を知ること
水を知ること、天気の
移り変わりを知ること
そして何より』
🐢『何より?』
🐬『野菜と話すこと』
🐢『あーだからじっちゃん
ぶつぶつ言いながら
畑にいるんだね
わたしゃ、てっきり
グチをぶつけてるんだと
思ってたよ!
聞いてはいけない
老人の闇だと思ってたよ』
🐬『いやいや、
うちのじっちゃん、
怒りでも
してほしいことでも、
相当に上手に
自分の思いを笑いに変えて
伝えることができるんだよ、
大学時代 落研だってさ
だからほぼ、グチはないと思う』
🐢『落研て落語研究会?』
🐬『そうそう』
🐢『へえー!』
🐬『じっちゃんにとっちゃ
畑が寄席
すべての野菜は、みんな
落語聞きにくる客なんだ
ろうねー ☺️ 』
🐢『そんなに落語家に
なりたかったのか?』
🐬『いやあ、どうだろう
そこは鮫治の闇といえば
闇だよねー』
🐢『鮫治のことはともかく
おさめちゃんだってさ
やりたいことやなりたいもの
ないの?』
つづく