雲隠れ蜘蛛吉その陸
【おかめちゃんとおさめちゃん】
登場人物
🐢おかめちゃん
亀と人間のハイブリッド
亀の名残りは、
甲羅とゆっくりの歩みのみ
ハイソサエティにみえるが
じつはおとぼけな二十歳
🐬おさめちゃん
サメと人間のハイブリッド
サメの名残りは、
鋭い歯とへの字口
そしてサメ肌
いちご大福が大好きな
自他共に認める
おとぼけな二十歳
前回までのお話↓
誘拐された
米屋のおよねについて
身辺を探るうち
およねの婚約者である
呉服屋の三代目の与吉と
旅籠「亀屋」の女中さよ
の企てであることがわかった。
さらに与吉は
知らず知らずのうち
さよにもだまされていた。
糸屋の蜘蛛吉と指南役の鮫治
二人は 亀屋の物置小屋で
監禁されたおよねを助けるべく
賑わう宿場町へ
ワーーイイワーーイイ チャリントン トントントン
ガヤガヤガヤガヤ(宿場の賑わい)
🐬(旅籠亀屋の客引き)
「だんなー安くしておくよー
そこの兄ちゃんはせがれかい?
お二人で泊まってくださるなら
さらに安くしておくよーー
どうだいーどうだいーー」
🐢(鮫治)
「あーそうかいー
そしたらここらで
一泊とするか なあ !」
🐬(蜘蛛吉)
「うん そうだね
父っつあん」
🐢(鮫治)
「よし そんなら部屋を頼む」
🐬(亀屋の客引き)
「へえ ありがとさんです
お二人さん お泊まりだよー」
🐢(鮫治)小さな声で……
「おい……女中のさよは、
どこにいる?」
🐬(蜘蛛吉)
「目が切れ長で口の右下に
大きなほくろがある
ほら、今、酒を
運んでらー」
🐢(鮫治)
「あ、今、階段おりてくる
あの女中か……」
🐬(蜘蛛吉)「ああ そうだよ」
🐢(鮫治)
「ああ 女中さん」
🐬(女中 さよ)「へえ」
🐢(鮫治)
「折入って頼みたいことがある
すまんが あとで
部屋に来てくれ
ああーそうそう
もちろん礼ははずむよ 」
🐬(女中 さよ) 「へえ」
しばらくして……
🐬(女中 さよ)
「だんなご用はなんで?」
🐢(鮫治)
「あーーすまないねーー
まあ入っておくれ 」
🐬(女中 さよ)「へえ」
~さよ ふすまを開ける~
その瞬間 蜘蛛吉が
さよに網をかぶせ
🐬(女中 さよ)
「あ痛たたたた
痛いじゃないか
何すんだい!」
🐢(鮫治)
「まあ 突然に手荒なことして
すまないがちと
聞きたいことがあってねー」
🐬(さよ)
「おんたら 客じゃないね
人を呼びつけて
おいてひどいじゃないか」
🐢(鮫治)
「まあ そう怒りなさんな
聞きたいことは他でもねえ
米屋のおよねさんのことだ
これから およねさんの
居場所を 教えてもらえるかい」
🐬(さよ)
「ふん 教えてやってもいいが
あんたみたいな老いぼれが
あそこにいってもねぇ 生きて帰れるか保証はないね」
🐢(鮫治)
「ハハア確かに老いぼれだあ
まあ この生い先短けえ
老いぼれに免じて
ひとつ 教えてくれ
およねは、どこにいる」
🐬(さよ)
「裏庭にまわると
薪なんかが置いてある
その隣の物置小屋にいるさ」
🐢(鮫治)
「そこに 与吉もいるのか」
🐬(さよ)
「あ~ら 爺さん
なんでもお見通しだね
昨日から およねを
物置小屋に入れてから
あのお坊ちゃん
急に弱気になってね
ごちゃごちゃうるさいから
一緒に入れてやったよ
あそこで夫婦仲良く早速に
にらみ合いの喧嘩でも
してるだろうよ!
ハッハッハ 」
🐢(鮫治)
「そうかい 一番の度胸と
利口者は さよさんあんただね 」
🐬(さよ)
「それにしてもこの網
さっきから
ベトベトするんだよ
この網、
切らしてもらうよ エイッ
あれ? エイッ」
🐢(鮫治)
「小刀隠してるなんざあ
物騒だねえ さよさん
もがいても無駄だよ 」
🐬(蜘蛛吉)
「蜘蛛は 一度巣にかかった
獲物は 絶対に逃さねえ
さよさん そのベタベタ
あんたの罪とおんなじで
しばらくとれねえよ そこで
おとなしく雲隠れしてな 」
🐢(鮫治)「行くぞ」
~つづく~