掌編小説:「オレオレオマエ」
「はい、もしもし?」
「おおっ、繋がった!オレオレ!」
「……」
「いや、だからオレだって!」
「オレさんなんて知りませんよ。ありきたりすぎません? 詐欺としてすら。」
「違うんだよ! オレオレ詐欺とかじゃないんだよ! オレはお前でお前はオレなんだよ!」
「何ですか、いったい。切りますね。」
「待った待った! 本当にオレはお前なんだって。ほら、試しに自分自身について、何でも質問してくれ! お前が覚えている限り答えるからさ!」
「……初恋の時期は?」
「聞かれたら、小学生って答えているが、実は大学入ってからだろ。言わせんなよ! 恥ずかしいっ!」
「……」
「……」
「いいでしょう。これ以上は俺のダメージが、大きそうです。それでオレさんは何のようですか?」
「おお! さすが俺! 話が早くて助かるぜ!」
「さっさと用件を。」
「そうだな。いいか、お前は今、駅前通りの歩道にいるな。そこに、このあとトラックが突っ込んでくる。お前はひかれて、異世界転生するんだ。その途中、神様にあう。何でもチートを貰えるって言われ、過去の自分と通話出来るスマホをもらって今電話している。お前がオレならわかるだろ、今すぐ右に避けろっ!」
「!」
「おい! 俺! 避けられたかっ!? 今日はこの後、プロポーズするんだからなっ!」
「ゴハッ! うぅ、トラックは避けたが、トラックに先にはねられていたバイクとぶつかっちまった……。血、止まらねぇゃ……。」
「ぱんぱかぱーん。転生おめでとうー!神様だよっ!さっそくだけど、異世界記念にチートを上げよう!何がいいかなっ?」
「……過去の自分と通話できるスマホで。」
「はい、どうぞー。今度は、上手くいくといいねー!」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?