ビンタなどの体罰は、しつけといえるか?
初出 2017/09/11 Blogger「PonoLipo 子ども Lab」
数年前に、有名なジャズミュージシャンが教え子にビンタをする映像がネットやTVで流され、平手で子どもを叩く行為の教育的な効果について大きな議論を呼びました。著名な芸能人や文化人の中に、しつけや教育的指導法として、そうした体罰を擁護する意見も散見されましたので、その1年前2016年にテキサス大学オースティン校から発表された研究レポートについてご紹介いたします。
Risks of harm from spanking confirmed by analysis of 5 decades of research
Date: April 25, 2016
Source: University of Texas at Austin
Summary:The more children are spanked, the more likely they are to defy their parents
and to experience increased anti-social behavior, aggression, mental health problems
and cognitive difficulties, according to a new meta-analysis of 50 years of research on spanking.
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160425143106.htm
ビンタ(平手で顔を打つ)やスパンク(平手でお尻や背中を打つ)などの軽い体罰も含めて、いかなる体罰も、教育的に期待される効果が全くないばかりでなく、逆効果であるということが、16万人の子どもを巻き込んだ50年以上の調査研究により明確に実証されているということです。
にもかかわらず、世界中の親の80%が、しつけとしてビンタやスパンクなど、なんらかの体罰を効果があるものとして子どもに対して行っているという実態調査の結果が、2014年UNICEFから出されています。体罰を受けた子どもが、親になった時に同じように自分の子どものしつけに体罰を行う傾向があるということも、広く知られています。日本だけでなく世界中で、体罰を受けた子どもの方が反社会的な衝動を抱きやすく様々な心理的な問題を抱えやすいという研究結果が出ても、なおこの負の連鎖をきっぱりと断ち切ることができずにいるのです。
たとえご自身が両親や教師から体罰を受けて育ってきたという経験をお持ちのパパ、ママであっても、こうした最新かつ体系的な研究結果を踏まえて、理性の力でこの負の連鎖を断ち切ってほしいと思います。
というのは、不安や恐怖を抱いた時に、子どもの他者へのアイコンタクトが、どのような影響を受けるか研究したUCR(カリフォルニア大学リバーサイド校)のレポートによると、最初に不安や恐怖を感じた時には、子ども全員がアイコンタクトを取って、相手の真意を組みとろうとするが、その後ずっと長い間、一度恐怖や不安を煽った人とはアイコンタクトを取らなくなる傾向があるということです。
Eye patterns in children: The development of anxiety and emotion
New study by UCR psychology professor finds that children pay close attention to potentially threatening information and avoid eye contact when anxious
Date: August 17, 2017
Source: University of California - Riverside
Summary: We now know that anxious children tend to avoid making eye contact, and this has consequences for how they experience fear. New research shows that the shorter and less frequently they look at the eyes of others, the more likely they are to be afraid of them, even when there may be no reason to be.
https://www.sciencedaily.com/releases/2017/08/170817092751.htm
つまり不安や恐怖によって、子どもを自分の思うようにコントロールすることは、一度は有効かもしれませんが、子どもは、そのような人に対して長期にわたって心を閉ざしてしまいがちだということです。親子の間のコミュニケーションが、このように子どもの方が心を閉ざした状態では、一方通行で哀しいものになってしまうのではと危惧します。
ご自身が幼い頃経験した、体罰を受けた時の心が閉じてしまう悲しい子どもの感覚を、「親として立派にふるまわなければ」という大人の感覚より大切にすれば、きっとあなた自身の子どもに寄り添って、手を上げずに子どもを諭すことができるのではと思います。
そこを自制するのが、なかなか困難で葛藤を伴うものであることを再認識すれば、多分手を上げずにはいられなかったご両親の心の葛藤にも寄り添えるはずです。苦しいけれども、先進国である現代の日本で育ち教育を受けてきたパパとママなら、強い理性できっと乗り越えられる葛藤です。そこを断ち切れたら、ほんとうに信頼し打ち解けた親子関係が築けるはずですから、気持ちを強くしてチャレンジしてみて下さいね。
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