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数に親しむ遊びの大切さ

初出 2017/03/21 Blogger「PonoLipo 子ども Lab」

頭の中でイメージする力を育てる〜遊びを通しての体験学習が重要

 小さな子どもにとって、手でいじって遊べるおもちゃは、体感的にいろいろなことを覚えていくのに、とっても大切です。2歳くらいから、少しずつ数の概念を子どもに教えていくことになりますが、いきなり「数字」をパターン学習で教え込むことは、とても危険なことです。

 最近、5歳の未就学児〜小学校低学年の子供達を教える中で、「数字も書けるし、100まで数えられるし、簡単な足し算もできるけれど、実際のモノやおもちゃの硬貨を数えたり、重さや大きさを数字から具体的にイメージ(自分よりどのくらい重いか大きいか)したりすることが苦手という子に時々出逢います。
 こうしたお子さんは、小学3年生までの集団学習の中では、他の子どもより抜きん出て優秀とされ、体験的に実感として数字の意味することがイメージできていないということを見逃されがちです。けれど算数の文章題のウエイトが大きくなり、国語でもいくつもの段落でできた物語を想像しながら読み進めていくことが必要となる小学校3年生くらいで伸び悩みます。頭の中で絵を描いて、それを動かして思考を進めていくことが苦手で、シンプルな計算問題のような正解を求める課題には直線的に素早く回答しますが、「自由連想」の課題になると何も言葉が出て来なくなるのです。

 こうした子達は、手指を使って数を数えたり、自然の中で自由に動き回って思い切り好きなことに熱中して遊んだり、ごっこ遊びやお芝居をしたりという身体を使った体験的な遊びをする時期に、早期教育としてパターン学習のドリルをやらされている共通点があるように思います。遊びの中で自分で見て触って考えて「なんで?どうして?」という疑問が湧いて「知りたい!」と思ってから学ぶのではなく、「これはこうと決まっているから、こう答えるのが正解」と先に教えられて、その通りに繰り返すことを強化されてしまっているのです。早過ぎるパターン学習を上手にこなすのに「自分で見て触って考えて試行錯誤する」ことは、「先生のいうことをちゃんと聞けない子、先生の言う通りにできない子」とされてしまい、よくないこととして排除されていきます。そうした環境に置かれた子どもは一生懸命適応していき、好奇心のままに自由に見て触って考えることを自然にしなくなっていくのではないでしょうか。

 先生も親も、大人の言いつけを素直に聞いて守って、真面目に言われた通りに振る舞う子供の方が楽で扱いやすいですし、優秀と感じやすいと思います。好き勝手振る舞う子供の方が「多動」とか「発達障害」とかのレッテルを貼られて、困ったちゃん扱いされることの方が少なくないかもしれません。私自身、マンツーマンに近い状態で、じっくり一人一人の子どもとやり取りをして教える場面を通して、初めて、そうしたパターン学習を早期教育としてやる事の弊害について気づき始めたところです。もしも園や学校で、そうしたパターン学習を取り入れているのでしたら、お家では、思う存分自由に思考し体験させていくことで、バランスをとってあげて下さい。

 園や学校で「多動」や「発達障害」「学習障害」という見方をされる場合も、パターン学習に適応してしまい自発的な想像力が後回しになってしまっている場合も、どちらも手厚いマンツーマン形式の自由な体験学習プログラムに参加する方が、その子の可能性が広がるのではないかと、私は最近考えています。

数を体験的に学習して親しんでいく遊びや絵本はたくさんあります!

 「数字」ではなく、身の回りのいろいろなものを数えることから遊びとして取り入れていくのが自然で楽しくできるコツです。体の部位を触りながらカウントしてあげるのが、一番最初赤ちゃんの頃から自然に始められます。お目目が2つ、お鼻が1つ、おててが2つ、お指は5本と5本で両手合わせて10本。抱っこして、体の部位を触りながら、その部位のお名前を言って優しく数えていきます。

 そのうち、その子のお歳を指で「2歳」「3歳」と表現できるようになり、だんだん数を数えることができるようになったら、おもちゃの数、お菓子の数、お皿の数、靴の数、キッチンからトイレまで何歩で行けるか?お家からコンビニまでの間に電信柱は何本あるか?お出かけ先に着くまでに赤い車を何台見るか?などなど、親子でなんでも数えてみよう!ゲームをすると、案外大人も楽しくワイワイ一緒に遊びながら数に親しんでいくことができます。

 スタッキングやパズルなど、2歳くらいから楽しく遊べるもので、理数系のセンスを刺激するおもちゃは、いろいろあります。3歳くらいから遊べるお店屋さんごっこのレジのおもちゃなども、ちょとずつ数字と親しんでいく楽しいおもちゃです。マグネットになっている数字のおもちゃなどは、形を手指でなぞっていじって遊べるので、数字を読んだり書いたりを教える前に使うと、その子の頭の中に数字の形がイメージとして記憶されますのでスムーズに読み書きへシフトできます。

 5歳以上になってくると、100までの数、10進法の概念を理解していくことが、だんだん少しずつ求められていきますが、この辺も100までいろいろなものを指差しながら数えさせるカウンティングの絵本や、絵本「100かいだてのいえ」シリーズなど、楽しく良い絵本がいっぱいあります。

 小学生になってからは、算数をテーマにした英語の絵本で、丁寧な図解・挿絵とフラップの仕掛けを上手に使った良い絵本が出ています。
 小学校低学年までに、ビーズやおはじきなどを数える遊び、カップや箱でいろいろなものを計量する、物差しやメジャー、歩数などを使っていろいろなものを測る、お菓子やおかずを人数分に均等に取り分けるなどなど、手や体を使って数に親しむことを生活に取り入れていくと、その後の算数学習が、楽しく面白いものとして理解されていくのではないでしょうか。

 家族で、ボードゲームをしたりカードゲームをしたりして、だんだん戦略的な駆け引きを覚えたり、点数をつけられるようになったりすることも、数に親しみ数学的な思考を育んでいく体験学習として有効です。

 「子どもに算数を教えていく」ことに、プレッシャーを感じるパパ、ママも少なくないものと思います。短期間で計算問題をテキパキこなせるようになるパターン学習は、そういう意味でも親御さんにとって魅力的に映るでしょう。けれど数字や文字の読み書きよりも、夢中になって思い切り遊ぶ事の方が5歳くらいまでの子供にとってはとても重要で、順番を逆にするような先取り型の早期教育については、その功罪についてきちんと認識すべきではと、子どもを教えていく中で日々実感しています。

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