ponny

ponny(ぽにぃ)と申します。 オリジナル小説『ぼくとバク。』を連載します! お読みいただけると嬉しいです*.(๓´͈ ˘ `͈๓).*

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ponny(ぽにぃ)と申します。 オリジナル小説『ぼくとバク。』を連載します! お読みいただけると嬉しいです*.(๓´͈ ˘ `͈๓).*

最近の記事

『ぼくとバク。』44

僕は生まれつき身体が弱く、色も白かった。人並みに日光に当たることも許されず、冬でもつばの長い帽子が必需品だった。クラスの席順は陽の当らないよう、いつも廊下側の席にしてもらっていたし、髪も瞳の色も友達と比べると薄いことが明らかで、夏は特に嫌いだった。みんな日焼けした褐色の肌の中に自分だけが白く浮いていたから。 両親にそんな体質はない。遺伝ではなく僕だけが生まれつき白く生まれた。両親のどちらにも似てなくて、金髪とも取れる白髪に薄い青色の瞳を持つ僕はよその子のようだった。本気で自分

    • 『ぼくとバク。』43

      この先には何が待っているんだろう…? あつゆは心の中で口にはできない疑問を呟いた。 不鮮明な視界がこれから私たちに降りかかるであろう恐怖を増長させている。橋を渡る前に川の向こうに目にしていた霧は、対岸に降り立ってさらに濃度を上げて漂っていた。 この不愉快な霧にあつゆは見覚えがあった。 最初にここへ来た時、ウサギのパピヨンから出された霧と同じだったからだ。人の心から安心を奪う、重苦しい圧力を伴った灰色を含む濃い霧。 あつゆがゴクリと唾を飲み込んだその時、再びピヨ助がけたたましい

      • 『ぼくとバク。』42

        二人の足音に水の流れる音が加わる。 とてもゆっくりと感じていた夢世界での時間が、通常の早さに流れを戻したようにあつゆはハッとした。水の音が聞こえてすぐに視界を横切る大きな川が見え始める。川の前にはモジャモジャ頭の老婆が仁王立ちで待ち構えていた。 「おやぁ、これまた珍しい人が来たもんだねぇ」 老婆は組んでいた腕を広げてにんまりと笑みを浮かべた。耳まで裂けてしまいそうなほど大きな口であつゆ達を出迎える。あつゆとピヨ助はその笑みに背筋を凍らせた。まるで身体の防衛本能が近寄ってはいけ

        • 『ぼくとバク。』41 夢世界

          「本当の気持ちを言ってごらん」 「本当の……気持ち?」 にっこりとうなづいた夢絵師が、ゆっくりとショートの背後を指さした。彼の指し示す方へとショートが振り返るとそこにはショートの兄が立っていた。 5年前と同じ、記憶の中の印象と変わらない大きな兄貴の姿。兄貴はにこやかに俺を見つめている。 「君の本当の気持ちは?」 そうだ。俺は、兄貴を疎ましく思っていたんじゃない。本当は、ほんとうは… 「俺、兄貴みたいになりたかったんだ」 心の奥でくすぶっていた気持ちが言葉になって紡がれる。ショ

          『ぼくとバク。』40 夢世界

          ゆっくりと暗闇に落ちていく。 グラデーションのように暗さが増していく底へと向かってゆっくりと。落ちていく感覚が心地よい、と感じたその瞬間、暗闇が柔らかな明るさに染まっていく。 ショートの目の前には両親に囲まれて新しいサッカーボールを手に喜んでいる兄の姿がある。年に一度のジュニア杯で優勝した時だ。 五歳離れた兄はいつも家族の中心であった。兄のテストが返ってくる度に母さんがご馳走を作った。兄が大会に出る度に父さんが新しいゲームを買ってきた。 兄は何でも出来た。むしろ出来る事が当た

          『ぼくとバク。』40 夢世界

          『ぼくとバク。』39 夢世界

          ウサギの紅い瞳に吸い込まれるような感覚に陥る。意識がもうろうとし始め、口を開きかけたその時、夢絵が腹から飛び出した。すぐさまうさぎとショートの間に滑り込み、夢絵はウサギの顔面にぴったりと張り付く。驚いたウサギは思わず飛び上がった。圧力から解放されたショートのぼやけた頭が明らかになると、仰向けのウサギが短い両手を懸命に振りまわしている様子が映った。 ショートが意識を取り戻したことに気付いた夢絵はウサギの顔から離れる。彼はショートの周りを一周して止まり、四辺を大きく広げた。その身

          『ぼくとバク。』39 夢世界

          『ぼくとバク。』38 夢世界

          「久しぶりのお客さんだ」 ウサギは親しげに話し掛け、草むらをかき分けて近付いてくる。ショートは聞こえない振りを決め込みお腹に手を当てたまま黙って森を進んだ。 「君にはどんな願いがあるんだろう」 そう言って当然のようにウサギはついてきた。服の下に隠した夢絵がバレないようにショートは注意を払って歩いていく。先ほどよりも目の前の霧は濃くなっているように感じた。先の風景が白く見えていただけだった視界が、今は木の輪郭さえぼやけている。 「叶えたい願いがあってここまで来たんだろう?」 背

          『ぼくとバク。』38 夢世界

          『ぼくとバク。』37 夢世界

          橋の中腹で夢絵は向きを変えた。バクの絵が描かれた面を縦にして、まるでショートに立ちはだかっているよう。 「どうした?」 夢絵に合わせてショートも足を止める。疑問を口にしただけのはずが唇は小刻みに震えていた。呼吸に合わせて上下する胸も少しだけ強張っていることに気付く。 目の前で通せんぼしたままの夢絵は上の二辺を軽く丸めて捻じれてみせた。捻れが真っ直ぐに戻った薄墨のバクの絵は薄まっているようにも思えた。その姿に、ショートはうなづいて答える。 「この先に入れば戻ってこられなくなるか

          『ぼくとバク。』37 夢世界

          『ぼくとバク。』36

          「あつゆちゃん、学校は楽しいかい?」 「うん。雫ちゃんもショート君もいて、とっても楽しいよ」 二人と一羽は再び白い世界を進んでいた。 来た時と変わらない、上下左右に広がる真っ白な光景。最初に感じていたあつゆの中の緊張感はもう消えていた。ここは夢の世界。どんな夢でも叶う場所。 握る右手は温かくて、大きな手に包まれ安心感を覚えると同時に、他にも異なる感情が胸の奥をつついている。ハクタクの声を聞く度に耳の奥がこそばゆく思う。 「そうか。それはうらやましいな」 「でも、ショート君は

          『ぼくとバク。』36

          『ぼくとバク。』35 ショートののぞみ

          「なるほどなぁ。あの子の弟か」 おばばは手の平を叩いて納得した。 この勢いを逃す手はいけない。ショートは再びこんぺいとうの入った小瓶を差し出す。 「橋を渡してくれ」 瓶の中には多角形の砂糖菓子が詰め込まれている。雫が母お手製のクッキーの次に好きなものだった。夢から戻った雫の話から、ショートはこの小瓶で橋を渡してもらえる確信を持っていた。しかし、目の前のおばばはため息とともに首を横に振る。 「あんたじゃぁダメだよ」 「何でだよっ」 おばばは差し出された瓶を受け取ろうともしない。

          『ぼくとバク。』35 ショートののぞみ

          『ぼくとバク。』34 ショートののぞみ

          視界を横切る大きな川が見えてきた。川の向こう側には濃い霧がかかっていて、奥の様子は全く分からない。 「ここが三途の川か」 ショートがそう尋ねると、肩の高さに浮かぶ夢絵が隅を丸めて返事をした。川は長さもその幅も広かった。もし橋を渡れないなら泳ぐ覚悟もあったのだが、霧で向こう岸が見えないこともあり泳いで渡れる距離かどうか分からない。見える範囲だけでも学校のプールぐらいはありそうだ。 ショートは周りを見渡した。ひょっとしたら他に渡る人がいるかもしれない。しかし案の定、誰一人いないし

          『ぼくとバク。』34 ショートののぞみ

          『ぼくとバク。』33 ハクタク

          コキリコさんの世界の馬車はとても心地が良かった。まるで綿に包まれているような柔らかな座り心地で、静かな空気の中に小鳥のさえずりが聴こえてきたりと何だかとても安心する。膝に乗るピヨ助もうとうと気持ち良さそうにしている。背もたれに身体を預けながらわずかな揺れに身を寄せているうち、リボンで出来たお城の前へと到着する。 馬車から降りる際に差し出されたハクタクの手を見て、あつゆは無意識に手を伸ばしていた。手の温かみが伝わったかと思うと、思わず気恥しさが全身を駆け巡る。あつゆは耳の先が熱

          『ぼくとバク。』33 ハクタク

          『ぼくとバク。』32 ハクタク

          「わぁっ」 あつゆは思わず声を上げてしまった。自分の体がヒラヒラのレースとピンク色に包まれていたからだ。ヒラヒラで、淡いピンク色で、自分には似合っていないドレス姿にきっとハクタクは変に思うだろう。あつゆは顔を覆ってしゃがみ込んだ。顔面が恥ずかしさで火が出てしまうんじゃないかと思うほどに熱かった。 絵本の中のお姫様みたいな素敵なドレス。女の子らしくて可愛らしい姿。ヒラヒラのレースがたくさん付いていて色も可愛いピンクで。長い髪の毛先はふわふわ揺れて。雫ちゃんだったらお似合いだった

          『ぼくとバク。』32 ハクタク

          『ぼくとバク。』31 ショートとバク

          「水やりの時、朝顔のこと詳しかったよ」 あつゆはショートに関してとにかく知っていることを話した。二人と一羽はわずかな手がかかりを頼りに花の世界を覗いてみることにする。 ハクタクはあつゆに微笑んでから、かかとを鳴らした。奇抜なカラーから一変して、あたりはシンプルな暖色に包まれる。たくさんあったおもちゃは全て消え去り、騒がしかった雰囲気がとても落ち着いた空気に変わる。 最初に目にしたのは満開の大きな桜の木だった。駆け寄って幹に手を広げてみれば、あつゆ一人では回りきらない程立派な樹

          『ぼくとバク。』31 ショートとバク

          『ぼくとバク。』30 ショートとバク

          「ところで、この可愛い小鳥さんは?」 ハクタクは自身の右肩を示して尋ねた。ピヨ助がいつの間にか彼の肩に移動していた。羽根をしまいこんだ黄色のまん丸がハクタクの肩にすっかり腰を据えている。 「ピヨ助っていうの」 「この前は一緒じゃなかったよね」 「うん。前はショート君の方についていて、 私ははぐれちゃったから一緒じゃなかったんだ。帰らなきゃいけない時間を知らせてくれたり、パピヨンが近付くと教えてくれるんだって」 驚くほどにパピヨンの名を口にした心は落ち着いていた。それよりもハク

          『ぼくとバク。』30 ショートとバク

          『ぼくとバク。』29 夢の後

          前と同じ真っ白な世界。前も後ろも何も無い。どこまでも広がる世界に根拠のない不安が押し寄せるが、それは大きな問題にはならなかった。一度来た場所であるという経験があつゆの心を強くしている。しかし、あつゆはどちらに進めば良いか分からなかった。前回はショートについて行けば良かったのに、今度は自分一人きりだ。 「ピ」 頭のすぐ後ろで何かが聞こえた。人の声ではないが機械特有の電子音とも違う音だった。音の聞こえた方に振り向けば、黄色の球体、ピヨ助がそばに浮かんでいた。真ん丸な黄色の体に黒く

          『ぼくとバク。』29 夢の後