私はどこへ行くのか

私はどこへいくんだろう
ずっとそんなことを考えている気がする
モラトリアムなんだろうか
モラトリアムってなんだっけ
ちょっとよくわからないけれど、私はどこへいくのか、それは哲学なのかもしれない
哲学ってなんだろうか
どこまでがその範囲なのだろか、こんなことを考えて、立ち止まったままいると私はどこにもいけないような気がしている

どこにもいけない

よく、自分を制限するな、とか、自分で自分を縛り付けてはいけないよ、自分だけは自分の理解者で、自由にさせてあげて、なんてのを目にするけれど、自分の声を聞いた結果、どこにもいけないと思った

今の私はいまのままで、こうやって思いを、形にできない、お金にできない思いを暑い家の中で机に向かって打っている自分のままである

どこにもいけない

どこにもいけないから焦っているとか、どうしようと悩んだり、自分を戒めたり、そんなことをしているわけではない、どこにもいけないけれど、それでも、足踏みをしているというよりかは、眺めているような自分もいいじゃないか、なんて思ったりしている

眺めている

なんて体のいい言葉なんだろう
そこで一人で眺めていればいい
誰かが、こっちにこいよとか、その線を踏めよとか、飛び降りてみろよとか、潜ってみろよとか、そっちってそんなに楽しいかい、なんて突っかかってきたとしても、眺めているんだろうか
それはまだ分からない
そんなこともありうるかもしれない、そしたら考えればいい

花を買った
スカビオサ、という花の名前
親に言ったら、ハリーポッターの呪文みたいだねと言われた、たしかに、そんなところもあるかもしれない、羽が浮くかもしれない

その花は、いくつもの蕾が集まってひとつの花のようになっている
花屋で買ったときは、半分くらいが開花していて、買ってきてから、だんだんとその、小さな花の割合が多くなっている
この前の雨の日、火曜日に買ったから、今日で五日目、今はそうだな70パーセントくらいの開花状況になっている

花は、どこにもいかない
この部屋の花瓶の中で、私がいない間もそのガラスの中にいる
けれど、毎日少しずつ、蕾を開かせている
そして私に、時の経過を教えてくれた
きれいだな、そんな感情も一緒にくれて、切り花であるのに、生きて変わり続けている
どこにもいかないし、どこにもいけない、とわかっているのにだ

いや、花には、「どこかにいく」という概念がそもそも存在しない
もちろん、めしべとおしべがあって、それが風にのってどこかにいって新しい芽をつけるかもしれない
けれど、「どこかにいく」「どこかにいかない」「どこかにいくかどうしよう」なんてことを選択できない
それは、自然に起きていくことであって、花にはそれを選べない

では、私はどうだろう
私はそれを選べる

どこにいこうか
どこにいかないか
これからどうしようか
なにをしようか

「選べる」から、「迷える」のだ
どうしよう、と思うことも、それこそが贅沢なことであり、そして自由を与えられている

私は、常々、「猫になりたい」と思いながら暮らしている
けれど、実際に猫になったらどうだろうと考えてみた
比喩ではなく、明日もし、起きて体が猫になってしまったら嬉しいだろうか、喜ぶだろうか
考えてみた

いや、嬉しくないだろうな、喜ばないだろうな

私は、ねこではなく、人間のままで、猫になりたい
そんなの分かっていたかもしれないけれど
ねこになったら甘いスイーツを食べられないし
海外旅行にもいけないしもちろん国内旅行もいけないし
こうやって自分の気持ちを言葉にして打ち込むこともできない
人間世界でしか生きていけいないし、人間世界もなにかと魅力に溢れている、ようなきがする

花、はどこにもいかずとも、花を咲かせているけれど、
私は本当の意味でここで眺めているだけではどこにもいけない
だから、その事実を少しでも軽く、薄くするためにいまこうやって書いている
書くことで、どこかにいくとか、立っている場所が自動的に前に進むとかそういったことでもないけれど、書く、という行為をすれば何かを残すことができる、とでも思っていいるのかもしれない
眺めているだけ、よりは少しはマシかもしれない

今、文字を打ち込んでいるパソコンの液晶に自分の顔が映っていて、やはり覇気のない顔をしている
早く、反射防止シートを買わなければいけない
自分の顔が嫌いなわけではないけれど

今日の夜から実家に帰るので、スカビオサの開花状況を見ることができないのが本当に悔しい
実家から帰ってきたら100パーセントの花になっていないだろうか
それもそれで早くみたいけれども、なんだか悲しい気もする
この暑さでも強く、自分のペースで咲いてくれ
いや早く咲きたければそれも君のペースだからかまわないよ
頑張りたければ頑張ればいい、暑さを味方につけたいならそうすればいい、私は応援しているよ
プレシャーだったらごめんね、まあ、なんでもいいよ
けどすごくきれいだから、スカビオサ、この花の名前、覚えておこう


どこへいこう

さんぽに行かなくちゃ
図書館に行かなくちゃ
新しい帽子を被っていかなくちゃ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?