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一身上の理由で退職します。公務員を辞めるまでvol.1

これはポンコツ地方公務員が11年働いた役所を退職するお話です。

身元がばれそうな記述はしませんが、おそらく私を知っている方が読んだら私だとわかってしまうでしょうし、そうすると文中の登場人物も特定できてしまうので、一応言っておきます。

「この物語はフィクションです。」

だから怒ったりしないでくださいね!


調子に乗っていた自分…崩れるのはあっという間だった

私はとある地方自治体の職員をしております。

産休育休を2回取りながらも、気が付けば就職して11年目になりました。

その役所を今年の8月末で退職することにしました。

まだ新年度が始まって2か月ちょっと、周りからすれば急すぎる決断です。

自分自身でもどうしてこうなったのか、どこで道を誤ったのか、不思議に思うところがあり、そこでこうしてnoteを書いて振り返ってみようと思った次第です。

退職まであと2か月半、自分へのささやかなはなむけになればいいなと思います。


先日、5月の私の時間外勤務が出たのですが、私の時間外勤務は91時間でした。

厚労省によると、過労死ラインの残業時間は80時間とのこと。もっとも、これは80時間以上の残業が2~6か月以上続く状態とのことです。
私の場合、長時間の残業はせいぜい4月からなので、まだ過労死ラインとは言えないのでしょう。

しかし、つらかったのは長時間の残業ではなく、先の見えない業務内容でした。

私は新型コロナウイルスワクチン接種担当でした。
というか現在進行形で担当です。

この予防接種について知らない方はおそらくいないと思うので、説明は不要かと思いますが、自治体の職員がどれくらい振り回されて疲弊しているかを知っている方は多くはないと思います。

最近、コロナワクチン担当部署の職員の長時間労働についてニュースになり、顕在化してきた感がありますが、問題は長時間労働ではなく、担当者にかかる重圧にあると思います。

コロナワクチン接種業務の特徴

①前例のない未知の事業である

②ワクチン接種に関する国からの情報が小出しに出てきて、自治体はそれに対応できる体制をとっておかねばならない

③人命にかかわるため、失敗は許されない

①について。基本的に自治体の、それも保健福祉部門の業務は年によって大きく変わることはありません。大体1年の業務の見通しがあり、それに沿って事務を進めていくというのが普通です。それが令和2年度の11月に突然全く聞いたことのない大規模予防接種をやるということになりました。
ただでさえ前例のないことに取り組むことが苦手なのが公務員なので、ポンコツ公務員である私には、それがどれくらい大変なものなのか予測すらできませんでした。

②について。厚生労働省が自治体向け説明会を行ったり、通知を送ったり、手引きやQ&Aを作ったりしているのですが、その情報が少しずつしか出てこず、また覆されることも多々ありました。国も走りながらなので仕方がないとは思うのですが、それに振り回される自治体はとても辛いものがありました。
また、情報が手引きに一括で掲載されているのではなく、膨大なQ&Aから探さなければならず、何かを調べようとするときにも通常では考えられないくらい時間がかかります。そして、しばしばこのQ&Aも過去に回答したものから上書きで変更があり、かなり混乱されられました。

③について。ファイザー社のワクチンについては当初からアナフィラキシー等の副反応についての報道が多々あり、予防接種を実施するうえでかなりの緊張感がありました。
さらに集団接種会場での、コロナウイルスの感染にも配慮しなければなりません。それでありながら迅速な接種が求められるという、前が見えない中で必死でバランスを取るような状態での実施となります。

そんな大きな事業が、11月に「ほいっ」とポンコツである私の方にのしかかってきました。

私がもともと「予防接種担当」だったからです。

ちなみに、母子保健推進業務も担当していたのですが、それもそのまま背負っています。

その時点では、コロナワクチン接種事業がどのような業務なのかがわかっていませんでした。

年が明けて、予算の確保や交付金の申請などの業務が滝のように押し寄せてきたとき、私はすぐ上の上司である班長に伝えました。

毎日毎日すごい量のメールや通知が来て、とてもすべてを確認している余裕はないこと、通常業務と並行してコロナワクチン業務をこなすのは難しそうだということ。
ほかの自治体はチームを組んで取り組んでいること、自分ひとりの手には負えなさそうであること。

班長の返事は「今年度は、今の状態で乗り越えよう」とのことでした。

私はその言葉を信じました。新年度である4月になれば、追加の人員配置があるのかと。

結果、3月半ばの人事、さらに4月の事務分掌を見て、人は増えておらず、業務は一個も減っていませんでした。

しかし、私自身がコロナワクチン接種を甘く見ていました。「それなら仕方がない、やってやろう!」と思ってしまったのです。

これがいわゆる「正常化バイアス」というやつでしょうか。コロナワクチン業務が、そんなに大ごとだとは思っていませんでした。

また、正直に言えば、私はこの頃調子に乗っていました。地域系の雑誌に「若手公務員の好事例」として2度掲載してもらい、自分を過信していました。その実態は、しがないポンコツ公務員です。

4月に課長から、集団接種が始まるのに全然準備ができていない、と指摘された時も、正直「今更何言ってんだ、こっちはずっといっぱいいっぱいでやっているんだよ」という気持ちになり、返答もかなりぞんざいなものになりました。今思うと反省しかないですが、その時は怒りで頭がいっぱいでした。
(そういうところがポンコツなんでしょうね。)

何とか走り出した集団接種、しかし問題は山積です。やってもやっても増えていく仕事、ゴールデンウイークもほぼ毎日出勤、何かが起こらないか祈りながらの集団接種、答えを膨大なQ&Aの中から探す日々、課長は「早くしろ」としか言わない…

人生で数えるほどしかない「眠れない夜」が続きました。

眠っていても仕事の夢で起きてしまい、夢の中に出てきた人は「眠りを妨害した人」として、自分の中で敵認定してしまいます。
同じ職場の人全員が敵のような気がして、気が滅入ってきます。

「元気のないときは懐メロを聴くといい。」
そんなことを誰かから聞いた気がして、高校生の時に聴いていたJUDY&MARYやブルーハーツをよく聴いていました。
あれから20年、JUDY&MARYは進化したのではなく、その時その時が完成形だと思いました。
ブルーハーツは当時とは違うところが胸に響きます。毎日でっかい声で甲本ヒロトに「ガンバレ!」と励まされながら仕事に行く日々でした。

ある日曜日。
早朝出勤して、庁舎に一人。
涙が止まらなくなりました。
マスクが涙でみるみる湿っていきました。
その時に思いました。
「辞めよう」と。

(続く)

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