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【MUSIC】ORIGINAL LOVEを勝手にレビューする vol.6 / 白熱

Original Loveの勝手にレビューの第6弾ですます。今回は「白熱」(2011年)

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今までにないカジュアルな田島さん
軽快にチャリでウィリー!フリーライド♪

このアルバム、そして個人的には田島さんのスタートアップ企業のようなチャレンジアルバムだと思ってます。

ポイントは、前回レビューした「東京 飛行」のあとにメジャー契約が切れて、インディーズになった後のアルバムであること。

このアルバムに関しては私が書くよりも下記のインタビューを読んだほうがよっぽどしっくり来るし、グッと来る。

音楽主義 / vol.40 田島貴男 ORIGINAL LOVE -ポップの魔術師-

以下一部抜粋

その次のターニングポイントは2011年の『白熱』ですね。あれはインディで出したんです。それまで通りアルバムを出してツアーをやるという形じゃなくて、インディで出していろんな形態でライブをやるやり方に変えた。この発案も僕からだったんですよ。お金がないじゃないかと言われて、「じゃあ、僕が全部1人でお金をかけずにやります」って言って、0円で作ったんですよね。だから『白熱』は誰の手も借りずに自分1人でマスタリングまで全部やったアルバムなんです。
僕は見切り発車的にそうじゃなきゃダメだと思ってやったんですよ。このままじゃORIGINAL LOVEが終わるような状況だったので、なんとしてもアルバムを世に出したかった。メジャーのレコード会社が契約してくれないんだったら、インディで出そう、と。
90年代はアルバム1枚作るのに1千万円以上は平気でかかってたし。まだスタッフ側にはそういう考え方が残ってたんですよ。でも、若手には自分1人で作ってるアーティストもいたんで、そのやり方で作ったのが『白熱』ですね。

なななななにっ!!!?Original Loveが終わる可能性があった!!!という衝撃な事実。軽快なジャケットのイメージとは裏腹に、メジャー契約がなくなり田島貴男氏の音楽人生において非常に大きな転機でピンチだったわけです。
でも田島さん、そこからご自身でアルバムを作り、ご自身のスタイルでライブ活動をはじめ、それまでのキャリアにおごることなく、ご自身で新たな道を切り開かれている。かっこいい。それはまさにスタートアップ企業のようである。いや、ゼロからではなく、一度築いた場所を崩して新たに始めることのほうがよっぽど大変かも。そこから積み上げた新たな側面が今の田島さんの血肉になって他を圧倒するパフォーマンスになっている点は、本当に尊敬する。まさにダイオウイカや!

2006年12月リリースの「東京 飛行」から4年半にリリースされたこの「白熱」この間にベストアルバムこそあるが、リリースはなかった。この期間は中々大変な時期だったのかもしれない。

そう思うと、前回の「東京 飛行」も改めてジーンと来ますし、その上でこの白熱」というアルバムの輝きからも変わる。
当時はそんな田島さんの大変な状況はつゆ知らず、ピュアにいいアルバムでキターって思ってました。

心の声「みなさん、大好きなアーティストでもお店でも、いつなくなるのかわかりませんので、聴ける時、会える時、行ける時には行きましょうね、応援しましょう」

兎にも角にも田島さんの再出発のアルバムです。
ピュアに聞いても非常によいポップスの玉手箱です。

1. フリーライド
昨今の田島オジキの看板曲的になりつつあるこの曲。この曲を夜に知らしめたのは、リゾネーター・ギターを使った「ひとりソウルショー」スタイルのパフォーマンス。コレを私も観た時に、このグルーブ感にビビりました。

ちなみにループマシーンを使った一人パフォーマンスはKTタンストールをYOUTUBEではじめてみて、正直ビビった。

これです、これ

田島さんがこのスタイルと取り入れた「ひとりソウルショー」をはじめた時はなるほどって感じでしたが、その後の田島さんの進化がすごい。田島流にどんどん進化していくのだ。一人で演る際にもどうしたらよりグルーブ出るか、もっと面白くなるかを徹底的に考えぬいて、創意工夫で自身のスタイルを確立している。ここが私が田島貴男氏を尊敬する点の一つだ。プロフェッショナルなのだ。アーティストとして手を抜かない、ちゃんとしている。
そう、私は真面目な人が好きなんだ!!

そして、田島流に進化したスタイルがコレだ。

コメント 2020-05-12 115327

すごい、このグルーブ感。そしてリゾネーター・ギターをバンバン叩く!
かっこいい。このスタイルをテレビで披露して、びっくりした人多かったはず!そこから田島さんが、テレビでやる演目の一つにこの曲が加わった。接吻だけじゃねーんだぞ、俺は!とwかっこいい。

話逸れたけど軽快なポップスでとてもいい曲です。まさにフリーになった田島さん、フリーにライドする曲で、その歌詞や曲もそれを体現するかごとくにフリーライドにノリノリです。

ちなみに田島氏はNational GuitarsのStyle1というリゾネーター・ギターを使っているらしい。

2. バイク
このアルバムにはフリーライド然り、歌詞の中にも乗り物というかバイクが良く出てくる。田島さんがバイクにハマっていたのもこの頃かもしれない。
40歳を超えてから免許をとったってあったので、多分「東京 飛行」(2006年)の後だと考えられる。なので、このアルバムの少し前にバイクをはじめている。ちなみに田島氏は「バイクに関係する歌詞を書いていたために散歩中にそのことを考えすぎ、ふと目に入った教習所で大型バイクの教習を申し込んでしまった」らしい。田島オジキは行動が早いぜ。

田島さんとバイクについてはこちらを。

ORIGINAL LOVE 田島 貴男 × SANABAGUN. 高岩 遼・隅垣 元佐のハーレーオーナー対談!

で、肝心の曲ですが、こちらもフリーライドに負けないくらい爽やかで軽快なポップソングで、バイクに乗ったライダーのように新しい道にすすんでいく曲。とてーも爽やかです。

ハートビートがもっと聞こえる方へ

このフレーズこそがこの曲のメッセージ。

3. セックスと自由
このアルバムの一つのクライマックス、「セックスと自由」からの「カミングスーン」!!めちゃくちゃかっこいい!こういう曲を出してくるから田島さんは油断できんよ。

ちなみにタイトルだけ先に見た時「セックスと嘘とビデオテープ」かと思ったから、曲は想像つかなかった。
きいたらね、テンポの良いポップスでカックカクなアレンジとギターのリフ、サビのメロディといい本当にナイス。
欲を言えば、このアルバム通して皆がよく言う「リズム隊の軽さ」。全て田島氏一人で、ドラムは打ち込みサウンドですので弱いといえば弱い。もっとグルーヴィーなリズム隊で聴きたい気持ちも正直ある。けど、このアルバムの「軽さ」はある意味アルバムのテーマ感ともあっているので、意図的に軽いのかもしれない。おかげて軽やかに聴こえてくる。
ライブとかでずんずんのリズム隊でのこの曲を聞いてみたいものだ。

4. カミングスーン
このアルバムのクライマックスは、盟友スチャダラとのコラボ。コレはいいっす。これもっとふゅーちゃーされてもいい曲。
90年代の渋谷周辺の風景を切り取ったドラマティックな歌詞。こういう発想はマジでスチャダラのクリエイティビティと遊び心満載でイカしてる。

当時のインタビューでも田島氏はスチャダラのクリエイティビティを褒めていて、クリエイティブスタジオみたいな仕事をしていると言ってた(気がする)。テーマの切り方や歌詞の世界観の作り方を含めて、田島さんだけだと成り立たないし、またスチャダラのラップとの相性のいいこと。
最近PANPEEとのコラボ「ORIGINAL LOVE - グッディガール feat. PUNPEE」でも話題になりましたが、田島氏がラッパーとコラボしたのはコレが最初かな?
(ピチカート時代に奥田民生氏をラッパーに迎えた伝説の「コレは恋ではない」は除く)

5. 春のラブバラッド
スムースなミドルテンポなポップス。田島のオジキいわく「アル・グリーンみたいな、ソウルっぽい曲です」とのこと。たしかに、春テーマの日本のポップス感あるけど、曲はアル・グリーン感ある、言われてみれば。でも、ソウル感はなく、ポップス感が強い。
「アル・グリーン感」についてはアル・グリーンを聴いてもらえると多分分かる。

6. ハイビスカス
出だしのギターリフから田島にいサンの曲感が強い。来たって感じで、田島さん節の色がありつつも軽快な美メロな良ポップス。この曲とか次の「ふたりのギター」にしても本当いい曲が揃ってるあ、このアルバムはと。派手さこそ無いけど。

7. ふたりのギター
これもいい曲。田島節のメロディセンスが爆発のいい曲。派手さ無いけど。
またこの曲は歌詞がいい。経験談なのか誰のことを歌っているのかわからないけど、切ない歌詞とメロディが丁度いいハーモニーでぐっと来ます。

ふたりのギターが間違いだらけの和音をかき鳴らした
あの頃音楽がすべてだったあの頃
いくつかの時代の曲を胸いっぱい溜めて
誰も知らない道の先へ行こうとしたあの頃

田島さん自身のことを語っているみたいに感じます。

8. 海が見える丘
ミディアムテンポのラブ・ソング。とーっても爽やかな一曲。
10年越しの偶然の再会を歌った曲で、なにやらその突然のドラマ感、成熟してるけど、初々しさのあるラブストーリーを爽やかに歌います。
このアルバム、実はラブソングが多く、どの曲も世界が立体的で具体的な情景が目に浮かびますね。

9. あたらしいふつう
東日本大震災のあとの歌。タイムリーな社会的な事象を歌うのは田島さんにとって珍しいことですが、それくらいインパクトがあったことだったのでしょう。この次のアルバム「エレクトリック・セクシー」に収録の「太陽を背に」でもスコップ団を称える歌を歌ってます。
震災後の生活に対して、少しずつでも一歩一歩踏み出して、地を固めていこうと歌です。

10. 幸運なツアー
ツアータイトルにもなっているこの曲。田島さんにとって、特にこの時期はだったのかもしれないけど、ツアーをして歌を歌える喜びというのを、歌を皆と分かち合える喜びというものを噛み締めているような曲。
この曲はライブでもやること多いけど、しみじみをその幸せあふれる感が伝わってくる。
曲の最後に、走り去るバイクのエンジン音がはいって静かに終わっていく。
アルバムの最後を静かに締めくくる。

当時の田島さんが日記に下記のように記していた。

なぜ「好運なツアー」なのか

ぼくがオリジナル・ラヴの今回のツアー、
「好運なツアー」で歌うことは、
ささいな男と女の間の出来事とか、
むかし観た映画の中のことや、
遠い旅の憧れだとか、
悲しさや憤りや小さな希望の歌などだ。
きっとこの世をまるごと変えるような歌ではない。
けれどもわずかながらこの世に関わっている歌だ。

これらの小さな歌を自分の体を響かせて歌いたい。
バンドメンバーとノリをあわせて演奏したい。
お客さんの前で歌える好運を噛みしめて歌いたい。
あの黒澤映画のように、
ぼくたちが自身の好運に気付いてなにか行動し始めることができたら嬉しい。

そう、このアルバム、小さい、でもキラキラと煌く幸せを寄せ集めたようなアルバムで、まさに最後のこの「幸運なツアー」にそれが集約されている。天性のミュージシャン田島貴男にとって、曲を作りそれを人に披露して歌うこと、それをみんなに喜んでもらうことこそが天職であり、天命なわけで、小さくともそれができる事自体が幸せの何モノでもないという。

この「白熱」というアルバムは、まさにその喜びをまとめたようなポップスの宝箱のようなアルバムで、どこをとっても「小さいけど素敵な幸せ」が詰まっている。自由、愛や恋、出会い、新しい一歩、せつなさこそあるけど、悲観はなく、今、そしてこれからの幸せを見つめているアルバムです。

それは冒頭でも書いたけど、メジャー契約が切れて再スタートの田島さんがこのアルバムを作ったことにも大きく影響していると思う。

大企業をやめて、一人でイチからスタートアップ立ち上げたみたいなアルバム。ミュージシャンとしてはベテランなのに、全て自分でやるという初トライにおいてもフレッシュ。マインド的にもフレッシュ。

このレベルのミュージシャンの、このスタンスのフルアルバムってなかなかないと思うんですよね。僕はある意味デビューアルバムくらいな感じで聴いてますが、そこがまたいい感じのアルバムです。キラキラしてます。


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