【MUSIC】ORIGINAL LOVEを勝手にレビューする vol.2 / Desire
前回の「エレクトリック・セクシー」に続く勝手にレビュー第二弾。
今回は「Desire」です。
前回のレビューはこちら
田島氏、いきなりのアップです。このアルバムからバンド解散で一人ユニットになったからなのか、前にグイグイ来ました。
さて、なぜこのアルバムをを書こうと思ったかというと、やはり好きだからです。好きなものは書きやすいのです。
このアルバム、おそらくはファンの間では賛否あったかと思います。
それはこれまでの田島オジキの音楽性の紆余曲折があったと思っています。
・1993年:「EYES」
この頃、渋谷系感盛りあがり田島氏、若きニューソウルリーダー。
・1994年:「風の歌を聴け」
田島氏、タフに笑う。
・1995年:「Rainbow Race」
田島氏、回帰する
と、ここまでアシッドジャズ、ソウル、ファンクなどの洋楽要素盛り込み、マニアのトリビア心をくすぐり、メジャーシーンに鳴物入りした田島氏。おしゃれな音楽小僧の、とくにソウルフルサイドを期待を一気に引き受けていたと理解しています。
そして、このアルバムの後にリリースされたシングル・カット曲がOriginal Love史上最大のヒット曲(数字的には。世間一般には「接吻」ですが)となる「プライマル」です。ドラマの主題歌としてヒットして、お茶の間にもその歌が届きます。
そう、これまでの流れは、音楽通や洋楽好きにも一目置かれ、そして大衆性のあるポプチューンを響かせる顔の濃いイケメンこそが田島貴男であり、オリジナルラブだったのです。
前置きが長くなりましたが、ここまでの流れをふまえての「Desire」です。
このアルバムで、急に(多分田島さんにとっては急じゃない)民族音楽とかなんか色々と新しい情報量が増えて、ジャズ!ソウル!ファンク!乾いたかっこよさ!とかを期待してたファンからすると、聴きにくい曲が増えたのではないと思います。
しかし、よくよく聴けば、雑多な音楽要素をポップスに昇華してまとめあげているとても才気あふれるアルバムなんです。田島さんの才能の片鱗と、当時の田島さんの尖った情熱を感じる一枚。
1. Hum a Tune:
私、多分、Original Loveの中で一曲選べと言われたら、多分これを選ぶのじゃないかなと思うくらい好きです。
ビートルズよろしくシタールを取り入れたファンクロック。アルバム一曲目の最初のイントロのシタールで「おや?」「何やら様子がおかしいぞ?」と思わせる。しかしその後徐々に音が重なり合いめちゃくちゃかっこよく気持ちのいい仕上がりになる。ついつい口ずさんでしまう。
Love You To トゥル トゥ トゥル ♪
希望に溢れた一曲。
2. ブラック・コーヒー:
僕的に言うと、一回ここで引っかかるのこのアルバム、ここで。いや、好きな曲なんですよ、今は。だけど当時は違和感があった。特にHum a Tuneの後だったから。
でもですね、コレはこのアルバムをある意味象徴している一曲だと思いますし、細野さんよろしくの折衷音楽ポップスの、どちらかというと日本歌謡的な要素のあるポップス。歌詞については子供の心と大人の苦味の苦味のうた。しかしまさにブラックコーヒーのような味わいのある曲。だから子供の僕にゃ早かった。
3. ガンボ・チャンプルー・ヌードル:
そして、これ。三線も取り入れたオリエンタルなロック。歌詞でも「ガンボ、沖縄、ニューオリンズ!」「みんなファンキー大好き Kiss My Ass Hole」と陽気に歌い上げます。これまでのセンスのあるオシャレムードなOriginal LoveがいきなりBeginの「オジー自慢のオリオンビール」みたいなのもってくるからこっちも戸惑うさ。でもね、これいいですよ。先入観抜きにして聴けばとても洒落たオリエンタルミュージックです。まさにチャンプルー。
4. 青空のむこうから:
一曲目の「Hum a Tune」と同系統の曲で、「Hum a Tune」がシタール始まりですが、こちらはウードの音色でスタート。やはり静かな立ち上がりから徐々に音を重ねて壮大な世界観に引っ張り込むような曲。
とても爽やかなポップチューンで田島さんの真骨頂とも言える曲。
歌詞の世界観は、タイトル通りからも想像つきそうな、これまだに溜まっていたわだかまりとかをきれいに洗い流してくれるはじまりの歌。
雨がとぎれた青空のむこうがわ
胸のどこかの かすかな想いが
雲のとぎれた青空のむこうから
光ふくんだ風になって ぼくの場所へ吹いてくる
5. Masked:
爽やかな曲の後、ゴリゴリロックサウンド。ここからB面スタートっていう捉え方でいいのかな?2ndアルバムの「結晶 -SOUL LIBERATION-」に収録の「愛のサーキット」みたいなロックブルースですが、これ演奏が豪華でかっこいい。一聴するとチャッチーな曲ではないのですが、渋くいい曲で気持ちがいい。僕このアルバムは全編通してメインでバカボン鈴木さんがベースを演奏してるんですけど、結構良いかと思ってます。
6. 黒猫:
これはいいじゃないですか、田島さん。曲もアレンジも、歌詞も歌もいい感じな中東感。素晴らしい。ウード、バグラマの音色とアコーディオンがすごくナイス。ライブでも度々演る曲ですが、曲の奥行きがあり世界観の軸があるので、アレンジ変えてもかっちょいい一曲。
こういう曲って実は他のミュージシャンがなかなか手を付けにくいところだと思ってて、ポップスでこれをやってる感じがムムムと。
7. Words of Love
シングルカット曲。この曲、当時なにげなくJ-WAVE聴いていたら、突如流れてきた曲がこの曲でした。イントロ聴いてへーいい曲だなと、でもなんか田島さんっぽいなと思ったらやっぱりOriginal Loveの新曲でした。
田島さんにしてはかなりミスチル感あるなと当時は思ったものです。プライマルの後のシングルなので、ビジネス的には色々と大変だったかも。
タイトルはビートルズ?よろしくですが、キラキラ感のある爽やかポップスです。この曲ってあまりライブでも出てこないし、ファンの方の話題にも上がらないけどどうなんスカ?
8. 日曜日のルンバ:
これ、かなーり好き。田島さん、日曜日やお休みがもう終わりで残念だ、というサザエさん症候群な歌を結構歌ってますがそれもその一つ。
ルンバのいい感じの浮遊感をポップに丸め込んだ可愛いく軽快な一曲。
この曲に重要な存在感を放つブルースハープは松田幸一さんです。このブルースハープが可愛らしい軽快な曲にじんわりさせるなんとも言えないせつない叙情感を醸し出している。日曜日の夕方に聴きたくなります。聴いてます。
9. プライマル (Album Mix):
先程ご紹介したヒット曲の「プライマル」のシングルとは違う別バージョン。シングルとは何が違うかというと、ストリングスが省かれている。そのためゴージャスさが息を潜め、PVのような路上ミュージシャン感といいますが、非常にミニマルなアレンジになっている。
多分シングルアレンジのほうがよっぽど通常は聴きやすくわかりやすい。でもでも、こちらじんわり感はあります。好みですね、これは。
僕としては、アルバムの一曲としてはこちらが正解。シングル盤のままアルバムに入れると多分、とても浮いてしまっていたと思う。
10. 少年とスプーン:
Hum a Tuneで書いた一番好きかも宣言を訂正したくなるくらい好きっす。
こちらデビュー前に書かれた曲で、前回のレビューでも紹介したRed Curtain時代のデモテープを音源化した「RED CURTAIN -Original Love early days-」にも当時の音が収録されていますが、それを改めてきちんと形にした曲。
コード進行も転調もいわゆる田島さんの変な曲です。この変な曲がしっかりいい曲、いいポップスなので驚き。これを本当にハタチそこそこで作っていたと思うと、田島さんがいかに才能あふれる音楽小僧だったかがよく分かる。
作成当時と比べて圧倒的に洗練されていることが当然ですが、その中でも演奏のアレンジを削ぎ落とし、作ったときの初期衝動感を十分封じ込めていると私は思っている。演奏はギター、ベース、パーカッションだけ。
あと、ですね、この歌詞。この時多少書き換えているらしいが、何だろ、このシズル感といいますか。タイトルにしてもなんかいいですよ。
Boys Boys 僕は君だから君と同じだけど
Boys Boys 僕は君だけど君と同じじゃない
Boys Boys 僕は君なのに君と違うけれど
Boys Boys 消せない想いが僕らを照らしているよ
大事な僕の宝物スプーン
子供でも大人でもないいつまでも少年の君が
明るいラプソディ奏でて
乾いた路地を駆けぬけて
坂道をゆっくり下りてゆく
宝物のスプーンを探して
この初めてのソロユニットになったときの田島さんはなぜにデビュー前に書いたこの曲を、このときにもう一回やろうと思ったのか。
確か当時聴いていたラジオでは、自身もこれを書いた当時にどうしてこんな歌詞を書いたのかわからない。今では書けないって言っていた。
この当時でも「想いあって」と言っている。このときの想いとやらを聞いてみたいものだ。( ↓ 演奏は今のほうが上手い)
このアルバムを堺にOriginal Loveはさらに独自の進化を遂げることになる。
ヒットシングル、ソロユニット化と激動な、まさに変革のタイミングにあったこのアルバムにおいて、当時田島氏はパブリックイメージと個人の進化の間にまさにもがきながらもやりたいことへのチャレンジの一歩ができた作品なのではと勝手に思ってい〼