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とりのこされる
ひとが話した言葉が残ってしまう。
だから、「そんなこと言ったっけ?」とか「ああ、あれはもういいんだ、それより××なんだけどさ。」とか、目まぐるしく生きてる人に置いていかれる。
『え?なんで?前はあんな風に話してたのに?!こんなことやっちゃうの?!』というような、予想外の動きに驚くこともちょいちょいある。
逆に『その話はもう五回目なんですが……』みたいな目にもよく合う。
要はわたしが年季の入ったモブキャラだからなんだろう。使い捨ての言葉を投げつけられてしまうようだ。
言った本人ですら、すぐに忘れてしまうような。
最初から、見るからに使い捨ての言葉ならいいのだけれど、投げてくるときは見事にラッピングされていて、ひとつひとつ、真摯な悩みっぽく、苦しい心情の吐露っぽく飛んできているように見えるのだ。
……そのときは、その瞬間は本当に悩みだったし苦しかったのかもしれないけど。すぐ忘れちゃうけど。
たまに、言われてめちゃくちゃ嬉しかった言葉なんかもあったりして、でも発した本人は「そんなこと言ったっけ?」くらいでしかないという、ほんとに笑っちゃうくらいかなしいこともある。
使い捨てられた言葉といっしょに、季節外れの砂浜みたいなところにポツン、と残されてる。