読書記録:インストール
綿矢りさ 『インストール 』
まだ17歳って気持ちと、もう17歳って気持ちが交錯する。ヒロインのそんなモノローグが、この本の主題だろう。優等生の人生を歩んできた人ほど、高三の春は息苦しい。学校行事を先導していたような、キラキラした人達が知らないうちに此方側に来て何でもない風に私を追い抜いていく。
この子達と同じ結果にしかならなかったら、いやいやもっともっと惨めな結末を迎えるんじゃないか。無機質な模試の結果に唇を噛む。
ヒロインが取り組むエロチャットはあくまでツールの一つで。彼女に必要だったのは一時でも自分を捨てることだったのだと思う。違う誰かになれば、私らしくないことをしても許される気がするから。
何もかも、捨ててしまいたい。
この場所から逃げ出したい。
正しいことが分かるほどに、アウトローな生き方が輝いて見える。そんな退廃的な憧れと向き合いたい時に読み返したい1冊。
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