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同人サークル設立 & M3での初CDリリース完全入門

こんにちは、poniyamaです。
普段は岩の裏で気持ちの悪いジメジメのオタクをやっています。その傍ら、Liminal Warpという同人サークルの主宰もしています。

今回はその経験を活かし、同人サークルって何?どうやってやるの?CDってどう作るの?M3でリリースするには?という疑問に、なるべく初心者の視点に寄り添って答えていきたいと思います。

章立てして進行していくので、皆さんが必要な部分だけ抜粋して読んでいただければと思います。

また、この記事はサークル活動の一般論をまとめたものではなく、読んだ人がとりあえず僕と同じ方法でリリースまで辿りけるようになる道標として書いています。他にも良い方法や選択肢が数多くあることをご留意頂いた上でお読みください。

前置きが長くなりましたが、レッツゴー。


同人サークルってどうやるの?

同人サークルには明確な定義はありません。共通の目的(作品の制作、発表など)を持った同好の士が集まって活動すればそれはもう同人サークルです。

よって今あなたが同人サークルを名乗り始めても何の問題もありません。おめでとう!同人サークル完成だ!

とは言うものの、今回はM3でのリリースを目的としていますので、以下を用意しましょう。

同人サークルに必要なものを用意しよう

  • サークル名

  • サークルロゴ、シンボル

  • 活動目的、理念

  • メンバー

  • 各種アカウント

  • 何か作品一つ

サークル名
僕の場合は「Liminal Warp」ですね、皆さんはカッコいい名前を考えてください。カッコいい名前の考え方は教えません。

サークルロゴ
そしてサークルロゴを用意しましょう。僕の場合は下記二つです。

1つ目のシンボルは僕が作りました。2つ目のロゴはデザイナーのSonodaさんに有償で依頼して制作して頂きました。(有償依頼の話は後述します)

この時、必ず「ベクター画像」で制作してください。(ベクター画像とは何か、みたいなのはググってください)死ぬほど重要なポイントです。テストに出ます。ラスター画像で用意しては後から自分が発狂することになるし、デザイナーさんに何かを依頼する時にも発狂されることになります。ベクターの画像はAdobe IllustratorやAffinity DesignerやGIMPで作ることができます。

1. Liminal Warpのシンボル
2. Liminal Warpのロゴ(Sonodaさん制作)

活動目的、理念
ここはやりたいことを文章にできればなんでもいいです。別に決めなくてもいいのですが、のちのち精神的支柱になっていったり、ブランディングにも繋がります。僕の場合は「アニメサンプリングと実験的ベースミュージックを融合した楽曲を制作し、そのスタイルの楽曲群の総量を増やすこと」です。

メンバー
え?メンバー?いません…僕一人です…
ご友人の多い皆様におかれましては和気藹々やったらいいんじゃないでしょうか…
冗談です。
ここで個人的に重要だと思うのは正規メンバーをしっかり決めて、責任分界点を分けることです。トラブル防止ですね。Liminal Warpもご協力頂いている素晴らしいアーティストさまはたくさんいますが、運営においては僕が全権を握っています。

各種アカウント
以下を作ってください

  • Twitterアカウント

  • Soundcloudアカウント

  • Bandcampアカウント

何か作品一つ
僕は結構重要だと思います。サークルローンチの告知のために、起爆剤としてオリジナル曲を書き下ろしましょう。サークルのスピリットを伝えることができ、人の目にも留まります。僕の場合は「My beloved siblings」ですね。

サークルをローンチしよう

ひと通り揃ったでしょうか。では各種アカウントで最初の投稿をしてサークルをローンチしましょう!

自分たちがどんなサークルなのか、どう活動するのか、みんなに何を届けられるのか、そういうのを入れ込んで目につくように発信していきましょう。ここで見てくれた人達があなたの作品を最初に手に取る人達になります。

Liminal Warpのローンチ投稿

M3に申し込もう

え、もうですか?作品もないのに
はい、申し込んでください。これがないと始まらないので。
自分を追い込んでください。
申し込み方法に難しいことは何もないので公式を参照してください。
一つ言えばスペースは「シングル」でいいです。

CDを作ろう(中身編)

ではサークルもできたしM3も申し込んだことなので実際にリリースするCDを作っていきましょう。

大まかな流れは以下のとおりです。

1.CDのコンセプトを決める
2.CDの参加者を決める
3.アートワークのイラストレーターさんを決める
4.マスタリング担当を決める
5.スケジュールを引く
6.全員に依頼をする
7.楽曲を制作する
8.中身完成

まあ中身については僕がとやかく言うことはないでしょう。皆さんが全部書き下ろすでもよし、人を呼ぶでもよし、公募するでもよし、好きにやりましょう。

ただ、ここで最初の壁があると思います。それは「スケジュール」「依頼」です。最初は期限感もわからず、有償依頼もなかなかしないので、その話を重点的にやりましょう。

スケジュールを引こう

M3に出るぞ!でもいつから?どのくらいのペースで動けばいいの?

今回は秋M3を例にとって考えていきましょう。春M3の場合は6か月ずらして考えてください。


6月上旬 :M3申し込み、企画立案
6月下旬 :アーティストへの依頼
7月上旬 :アーティスト承諾、メンバの確定
7月~8月 :制作
9月10日 :第一締め切り
9月20日 :第二締め切り (楽曲2mix、アートワーク一枚絵が揃う)
9月22日 :マスタリング開始、パッケージデザイン開始
10月1日 :マスタリング完了、パッケージデザイン完成
10月5日 :入稿
10月中旬 :CD到着
10月中旬から当日 :各種告知等

という感じです。
ポイントとしては、
・楽曲制作期間は2か月半程度を設ける
・楽曲とアートワークの締め切りはM3から前月10日あたりに設定する
・ガチのマジの締め切りは伝えない
  (第二締切は「遅れる場合もここまでには頼むっす!」の感じで出す)
・マスタリングを他の人に頼む場合は、先にマスタリングの人に欲しい期間を聞いて、そこから逆算して締め切りを設定する
などがあります。

目標としては、10月中旬にはすべてが揃っており、M3当日2週間前には動画での告知が開始できるのを目指しましょう。

皆さんの制作進行としての力が問われます。

有償依頼してみよう

有償依頼に絶対に必要なものが二つあります、礼儀と誠意です。
これさえ忘れなければさして困らないと思います。

大まかな流れは以下の通りです

1.作品のコンセプトがまとめられたページを用意する
2.アーティストを選定する
3.依頼文を作成する
4.依頼する
5.承諾後、状況に応じて詳細な依頼(楽曲リファレンス/イメージボードなど)を用意して連絡する

コンセプトがまとめられたページはNotionなどにまとめてページリンクを共有できるようにするといいと思います。主に以下のことが書いてあります。
・企画概要
・コンセプト
・納期
・納品形式
・楽曲リファレンスなど

依頼文は以下のように書けばいいと思います。以下例文です。

〇〇様
突然のご連絡大変失礼いたします。
私、個人で音楽同人サークルを主宰して活動しております、〇〇と申します。
この度は〇〇様に2024年秋M3で頒布する新作のコンピレーションアルバムに楽曲をご提供頂きたく、ご連絡差し上げました。
〇〇様の楽曲については、~~を拝聴いたしまして、大変素晴らしく、ぜひ本アルバムにお力添え頂きたいと考えました。
また、〇〇様は~~ており、本作のコンセプトにもご共感頂けると考えております。
ギャラはCD現物と〇〇〇円で考えております。
ご相談に応じて合意できる金額を決定したいと思っています。
締め切りは〇/〇あたりを想定しています。
詳細は以下リンクに記載しておりますのでご確認いただけますと幸いです。
以上ご検討のほどよろしくお願いいたします。
<<コンセプトをまとめたページURL>>

金額はまずこちらで予算感を提示し、相手に適正金額を教えてもらう形でやりとりをすればトラブルも起きないと思います。

アートワークの依頼の場合は、承諾後に、詳細な依頼イメージボードの作成をして連携するとスムーズです。

依頼承諾後は、Discordの鍵チャンネルへ招待し、一括で連絡がとれるようにすると楽です。

アートワークの依頼をしてみよう

アートワークの頼み方は本当に人それぞれで、正解なんかありません。ただ、イラストレーターの力を最大に活かしつつ、自分の狙ったコンセプトの演出は外したくない。そんな方のために一例として僕のやり方をお見せします。(ただ、この方法は相手のクリエイティビティを阻害すると捉えられ、嫌がる方もいる可能性があるので、相手とのコミュニケーションを重視し、その上で感じたものを優先してください)

下画像に示すのが僕が「Nocturnal Edge 4」で使用した依頼イメージボードです。これを実際にイラストレーターの052さんに連携し、制作頂きました。

基本的にはそのイラストレーターさんの過去絵を参照し、狙っているタッチと質感の方向性を伝えつつ、色や構図、入れ込みたいモチーフについてリファレンスを示して具体化していきます。

この時、二点を必ず伝えましょう
・CMYKで制作すること
・四方5%にデザインの余白を持たせること
今回はフィジカルのCDとして印刷することになるので、CMYKという色空間で制作してもらってください。(CMYKというのは印刷用の色空間ということです。詳しくはググってください。)そして、正方形の四方5%程度にデザインの余白を持たせるようにしてください。パッケージデザインをする際に裁断されてもいいセーフティゾーンみたいなのを設定するのでそのためです。

Nocturnal Edge 4のアートワーク制作にあたり用いた依頼イメージボード

そして実際に納品されたのが皆さんの目にしているこちらです。
本当に素晴らしいですね。頭が上がりません。

納品された052さんのアートワーク


CDを作ろう(物体編)

中身編で中身が揃ったみなさん、もう一息です。
最後に実際にフィジカルのCDを制作する方法を学びましょう。

大まかな流れは以下の通りです。(後述する業者の場合)

1.マスタリング済のwavデータと、アートワークを用意する
2.業者のテンプレート(aiファイル)に合わせ、パッケージデザインをする
3.業者のサイトからCDの発注をかける
4.入稿依頼メールにwavデータとパッケージデザインのファイルを入稿する
5.入金する
6.届くのを待つ

ジュエルケースCDを注文しよう

順番が前後しますが、まずは注文の話をしましょう。僕が教えられるのは株式会社ツカモトデジタルさんが提供するサービス、「底値プレス」だけです。

ここで作っていきましょう。
いろんな業者が知りたい人は老舗サークルさんに聞いてみてください。

このページ内の「ご注文フォーム」から、個人情報を入力し、
「ご注文数量」にはCDの枚数、
「商品の種類」には「10mmジュエルケース透明トレイに入ったCD/DVD」を選択します。
それで発注をかけます。この時点で空っぽのCDが発送されるということはなく、データの入稿依頼が来ることになります。

入稿データを作ろう

底値プレスさんはwav入稿を受け付けている神のサービスなので、音源に関してはマスタリングされたものがあれば怖いことはありません。まとめてzipにして入稿すればOKです。

パッケージデザインについては、上記サイトの「盤面や印刷データーについて」→「テンプレートはこちら」から該当するものをDLしてきましょう。

フロントカード、バックカード、CD盤面、帯 で4ファイル揃えばOKです。(常に変わる可能性があるので最新のテンプレートを確認するようにしてください)

必要なテンプレート

これらファイルを開き、aiファイルのテンプレに合わせてデザインを組み立てていけばOKです。

出来上がったものはこちらになります。(今回は2024年秋M3でリリースする「Recursive Point 2」を例にとっています)

パッケージデザイン(前面背面)
パッケージデザイン(帯)

これでいいですね。では入稿!
と行きたいところですが、大きな注意です。
必ずフォントを全てアウトライン化してください
フォントがアウトライン(つまり”文字”ではなく単なるベクター曲線)となっていないと、業者側でフォントが発見できずエラーとなる場合があります。

入稿時には(底値プレスが宛先なら)イラレのaiファイルのまま入稿でもいいですし、PDFへエクスポートして入稿してもいいです。AffinityなどでPDFエクスポートする際はプレス品質のdpiでエクスポートしましょう。(dpiは画質の良さみたいなものです、ググってください)

この時、エクスポートしたPDFをイラレで開いて、エラーが出るようなら不明なオブジェクトを全てラスタライズしてしまってもよいでしょう。
イラレは契約しなくても一瞬ファイルを開いてエラーが出るかどうかだけの確認はできます。

入稿して入金して祈ろう

マスタリングが済んだ楽曲wav一式とパッケージデザインが済んだaiファイルもしくはPDFファイルが揃ったら、入稿しましょう。zipファイルをオンラインストレージにアップロードし、DL可能リンクをメールに添付するのでいいと思います。

そしたら入金依頼の連絡がきますので、銀行口座に振り込みをしましょう。

あとは届くのを待つのみです。

CDDBへ登録しよう

CDが届いたら終わりではなく、いくつかやった方がいいことがあります。まずはCDDBへの登録です。皆さんも経験のある通り、CDDBへの登録がないとCDをiTunesなどで開いた時にCDの情報が取得されずまっさらなディスクが読みこまれます。みんなが各々イチからトラック名などを打ち込んでいくのは日本のGDPの消失と言っていいでしょう。登録の具体的な方法は簡単なので「CDDB 登録 iTunes」などでググってください。

BandcampでDLコードを発行しよう

これは必須ではないですが、CDの頒布時にBandcampのDLコードをつけるとものすごく喜ばれます。やった方が全員が幸せになりますのでやりましょう。

Bandcampでアルバムをリリースする際の編集画面でalbum codeを発行する画面に遷移できます。(他の場所からでもいけると思うけど)

アルバムコードを発行できる場所

遷移先ではこのような画面となります。まず「Track/album」でコードを発行したいアルバムを選び、「Group name」で任意の名前をつけます。「Quantity」で発行したいコードの数を入力し、「Generate codes」でコードを発行します。そうすると一覧にコードが現れるので、一番右の「Print」からPDFへエクスポートします。(この時、Firefoxを使っているとなぜかうまくいかないのでchromeにしましょう(なぜ?))

アルバムコードを発行できる場所

そうすると下記のようにPDFをエクスポートできるようになるので、印刷して切り分けてCDにつけて頒布しましょう。

実際にエクスポートできたアルバムコード

これでCD(物体)も揃ったのであとは頒布するだけですね。

告知しよう

告知については特に伝授できることはないのですが、以下を用意しましょう。

・140秒以内の楽曲クロスフェード動画 (Twitterアップ用)
・10分程度のロングクロスフェード音声 (Soundcloudアップ用)
・お品書き画像

M3当日2週間前くらいになったら140秒の動画をTwitterにアップし告知を解禁し、Soundcloudにロングクロスフェードをアップしましょう。

そして定期的に告知し、M3当日から3日前くらいになったらお品書きをアップし、もう一盛り上がりさせましょう。

まあ、ここはもうTwitterで表に見えていることなので、みんなの真似をしましょう。

M3に参加しよう

M3当日に絶対に必要なものがあります。「頒布物」と「サークル通行証」です。逆に言えばこれさえあればギリギリなんとかなります。(頒布物は事前に宅急便で搬入することもできます。そっちの方が圧倒的に楽なのでやり方はM3準備会が送ってくれる冊子を参照しましょう。)

準備しよう

余裕があれば用意した方がいいものもあるので、それを記載しておきます。

卓上編
卓に敷く布
  直置きだとなんかダサいです
・金を入れる箱(ポーチでも可)
  言わずもがな
・筆記用具、ノート
  頒布した枚数などを記録しておきましょう
・CDのディスプレイスタンド
  来てくれた人が見つけやすくなります(100均にあります)
・タブレット、ヘッドホン(視聴機)
  意外とフラっと立ち寄った人が聴いてくれたりします
・値段を書いた札
  言わずもがな
・「ここはJ-04b」とか書いた紙
  意外とテーブルなのがどの辺なのかわかりづらいのであるといいです
・お品書きを印刷したもの
  あるものは見た通りですよ、という感じですが、意外と見られます。

身の回り編
自分の名札
  巨大なオフ会なので積極的にコミュニケーションしましょう
・モバイルバッテリー
  必須

その他
・ガムテープ
  M3には撤収という概念もあるので必要です
・カッター、ハサミ
  M3には片づけという概念があるので必要です
・売り子(金を任せられる信頼度のある人物)
  いないとかなりしんどいです。自分が回れないしトイレすら行けなくなる。日頃から健全な人間関係を築くことで用意できるようになります。

実際に設営すると以下のような感じになります。

実際に設営した図

打ち上げしよう

流通センター付近にはマジで店がないので全然違う駅であらかじめ店を予約しておくのがよいでしょう。

まとめ

ここまでお読み頂き本当にありがとうございました。
本記事をもとにサークル活動を始めた際などはご一報くれると本当に嬉しいです。

もしわからないことがあればTwitter:@poniyama_comまでいつでも連絡ください。

そしてサークル「Liminal Warp」も今後ともよろしくお願いいたします。

謝辞

僕にサークル活動のことをいろいろ教えてくれたボニボニアさん、Dustvoxxさん、そしてサークルのコンピレーションに参加してくれた多くのアーティストの皆さん、この記事を書くきっかけをくれたバイブさん、本当にありがとうございました。

本当の本当に終わり

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