おろしは積もった春に
冬だった。雪が降っていたから。でも、その前後の日はやけに晴れていて、春用の服を出していたから、突然の雪のせいで、次の日は少しカゼを引いたと思う。お寺の短い参道には、既に桜は満開で、生き生きとした葉が木についていたのものあった。上を見上げながら不安定な砂利道を歩いた。がり、がり、という音が足から伝わって、小さいころからこの感覚が好きだった。多分石の擦れあう音だったと思うけれど、もしかしたら、雪を踏んでいていた音だったかもしれない。その日は一日中空を雲が覆っていたので、朝も夜も夕