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なぜ人は推し活に夢中になるのか?

令和の日本ですっかり定着した言葉がある。それが"推し活"だ。

推し活とは自分が好きなアイドルやキャラクターなどを愛でたり応援したりする活動のことだ。アイドルや俳優、バンドなどを推す人もいれば、アニメや漫画のキャラクターを推す人もいる。

今は推し活という言葉が発明されたことで、自分が応援したい芸能人やキャラクター、スポーツ選手やバンドマンの活動を追いかけてライブやイベントに参加したり、時には投げ銭やグッズ購入を通して金銭的にもサポートする行為は、趣味や生きがいとして社会からも受け入れられているようになった。今や多くの人が自分の推しを持ち、それを隠さない世の中になった。

しかし、10年ほど前までは今でいう推し活は社会的には受け入れられているとは言い難かった。特定のキャラや人間を追いかけて必死に応援したりグッズを買いあさる人々は、バンギャやジャニオタ、アイドルオタクやキモオタクなど各ジャンルごとに蔑称で呼ばれ社会から蔑まれた。平成時代まではいい歳になっているくせにアイドルやキャラクターに入れあげる男女は、オタクとして笑われる存在であったのだ。

それが今や、当時は推し活勢を笑っていたような層の男女も、推し活に手を出すほどに、社会が大きく変化したのである。

なぜ"推し活"は市民権を得るまで一般化したのであろうか?その理由は大きく3つある。

まず一つ目が生涯独身世帯の増加や若者の恋愛離れだ。

バブル崩壊後に訪れた就職氷河期からはや30年、氷河期世代はすでにアラフィフのオジオバである。そのうち3割の男女は経済的な問題などが原因で結婚したり子供を授かることができなかった

未婚独身のロスジェネ中年たち、彼らがこれから家庭を持つことは年齢的にほぼ不可能だろう。婚活業界でも40代以降の成婚率はほんの数%と統計が出ている

もし独身ロスジェネたちの人生が、昭和までの極々普通の道筋に乗っていたとすれば、今頃は成人した子供達に囲まれて暮らしていたはずだ。そんな彼であるが、今から子供を持つことは絶望的なのだ。

独身中年たちはマグマのような父性や母性を抱え込んでいる。親戚の子供にやたらと尽くしてしまう独身中年男女が多いのも、行き場のない愛情の矛先を探してウズウズしているからである。

そんな彼らにとって、推し活とは思う存分に父性や愛情を注げる代償行為なのである。もし結婚して子供を授かっていれば娘や息子と同い年ぐらいであろうアイドルたちに推し活するのは、疑似的な子育てのようなものなのである。

若者たちの恋愛離れ、正確には恋愛の若者離れも深刻だ。今や20代の若者の4割が異性との交際経験がない。SNSやマッチングアプリの普及により、モテる男女がさらにモテて、モテない男女にはほとんどチャンスがなくなってしまった

なかなか異性のパートナーに恵まれない多くの男女は、恋愛感情を満たすためにアイドルや二次元のキャラクターを推して心の空洞を埋めようとしているのである。

そして2つ目が愛情や好意を受け取ってくれる人々の減少だ

先日の記事にも書いたとおり、人には他者へ何かを与えて感謝されたり、返礼を受けて交友を深めたりしたいという気持ちがある

しかし、現代社会は自由を何よりも尊ぶ社会だ。赤の他人の好意を気持ちよく受け取ってくれる人はどんどん減っている。一昔前までは先輩は後輩に食事や飲みを奢ることは当たり前であったが、今の若者たちは上司や先輩から奢られることをあまり喜ばない

なぜなら貸しを作りたくないからである。プライベートであまり上に世話してもらうと、仕事などを振られたときに中々断れない。もし転職をするときも言い出しにくい。そんな状態を作りたくないのが若者の本音なのだ。

若者の間では交際相手の男性にも奢られてばかりなのは重いと感じる女性も増えている。誰かに甲斐性を見せる場面はどんどん減っているのである。

また地域コミュニティもどんどん失われ、核家族化も進み親戚づきあいも壊滅的だ。誰かに親切にして感謝される、誰かに甲斐性を示して頼られる。上位のごく限られたハイスペックな男女であれば、今の時代でも甲斐性を見せる場面を持てるだろうが、そうではないごく普通の男女、特に未婚で子どももいない場合、誰かに何かをして喜ばれる、推しをプライベートで作ることは難しい。

その結果、多くの人々の甲斐性の発散先として推し活が人気なのである。売れないアイドルやVtuberのライブ配信に行き投げ銭することで、いくらでも画面の向こう側からめっきり聞くことの少なくなった感謝の言葉を聞くことができる。

そして最後の3つ目、推し活がここまで広まった最も大きな要因が……

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