男のロマンとエスカレーター逆走マン
声を大にして言いたい。男はロマンのために生きている。
チームのために!会社のために!家族のために!人類のために!大義名分さえあれば、生物としてもっとも大切に守るべき自らの命、人生を投げ出して男たちは闘いの場に飛び込んでいく。何故か?そこに”男のロマン”があるからである。
ポリコレ平和平等社会の現代においても、石器を握り集落のために戦っていた原始時代から変わらぬ男気スイッチが男子全員の心には残っており、そのスイッチは平和な日常のなかでも、押される日をいまかいまかと心待ちにしている。
男は本当になりたいものは何か?趣味に生きる自由人?家族を養う父親?もちろんそれもあるだろう。しかし男が本当になりたいものはただ一つ、それはヒーローだ。過酷なホモソーシャルを勝ち上がり、世界中から羨望のまなざしを受ける名誉を欲しているのである。みんな本当は大谷翔平になりたいのである。
しかし現実は厳しい。男同士の競争社会の荒波に中高生、いや小学生幼稚園保育園のころから揉まれる中で、男性の多くはヒーローになることを諦め、現実的(それでも大それたレベルであることは多いが)な夢にシフトチェンジしていく。しかし、男の心の奥底のヒーローへの渇望が消えることは生涯にわたってないのである。
世界のヒーロー、例えば大谷翔平やマイク・トラウトのような存在になれる男は何十億分の1である。しかし、小さな世界に目をやればどんな男にでもヒーローになれるチャンスはある。自分が身体を張って頑張れば、チームメイトや職場の皆、家族を助けることが出来るかもしれない。そんな時、原始の時代から受け継がれてきた男気スイッチが押され、男たちは”こっからっす!”と叫びながら下りエスカレーターを全力で駆け上がっていく。
逆境に立ち向かい、それを退けてチームや職場、家族から賞賛や社会的承認を受けるときが男の人生が最も輝く瞬間である。何度も闘いに挑み、ときには敗れることもあるがそれでも立ち上がり、勝利をつみ重ねる経験を経て、男は勝ちぐせや失敗に対する耐性を身に着けていく。勝ち癖が付いた男はどんなピンチになっても”どうせ最後は俺が勝つ!”というプラス思考を身に付けているため、ピンチになるほどワクワクしてくるサイヤ人のようなメンタリティになっていく。こうして男子は立派な漢に成長していくのだ。
乗り越えるピンチは大きければ大きいほど、救った仲間が多ければ多いほど、勝ち切った後の周囲からの賞賛や得られる名誉は大きくなり、男のロマンは満たされる。男のロマンに脳を支配された男は、人生は筋トレだ!と言わんばかりに、家族や仲間をどんどん背負いながらより険しい山道へ突撃していく。日々コンダーラ(整地ローラー)を引いて坂道を駆け上がっているサイヤ人たちにとって、下りエスカレーター逆走など準備体操にもならない。
男のロマンの行き着く先は、リスクに笑顔で飛び込んでいける漢の誕生であり、それは平和主義的な考えの人々から見れば”破滅志向”なものにうつるかもしれない。既にリスクを負わなくても十分な収益も地位もあったはずのイーロンマスクが、落ち目と言われていたツイッターを『自分が懇意にしているSNSだから良い方向に変えたい。自分ならできる』という理由から買収した行為など、リスクを無駄に被る危険な経営的判断に見えてしまう。だがしかし、だからこそイーロンマスクのツイッター買収は”男のロマン”そのものである。ツイッターブルーも導入したので凍結だけはやめてほしい。
もちろん男のロマンは良いことばかりではない。男のロマンを追い求めたばかりに人生を失敗して路頭に迷ったり、最悪命を落としてしまう男性も山ほどいる。しかしだからなんだというのだ。どうせ人は20代の若さを保ったまま100年と生きられない刹那的で可愛そうな動物である。現世での名誉や高背に残るレガシーのために生きて何が悪い。安全で健康な生活を80年送り植物のように静かにこの世を去るなんて男の人生とは言えない。男の人生は戦って初めて光り輝く!!俺の全盛期は今なんだよ!!!
と、いうふうに男性は男のロマンが絡むと損得勘定が吹っ飛んで突き進む傾向がある。これは男気スイッチのない女性から見るとアレにしか見えないだろう。女性が男のロマンを理解することは残念ながら不可能だ。話題のエスカレーター逆走動画も男のロマンに頭を焼かれている男が見たら『逆走の方が楽しそう!』『足腰鍛えるチャンスやんけ!』となってしまう。女性から見ればアホである。
しかし、この無駄に自分の命や人生を栄光のためにベットで来てしまう男の特性こそが、女性にはない男の強者性の根っこなのだ。
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