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#13 介護を手放す選択(8)〜施設情報の収集と罪悪感
介護保険の申請の手続きを待っている間に、母の施設入居も視野に入れて情報収集を始めました。資料請求はすぐできても、費用もピンキリでどう考えたら良いのかわかりません。入ってもらうなら、できるだけ良い施設に入れたい。その一方で、「親を施設に入れる」=「親の人生への不必要な介入」にならないか、との心の葛藤が始まりました。今回もグダグダ一人語りです。
介護認定の面談での娘の後悔
地域包括支援センターに電話をして程なくして、母のケアマネージャとなってくださる方が決まります。並行して、脳神経外科の受診をした結果、病院の方からも手続きが進んでいたので、介護認定のための調査員の方の面談がありました。
面談は、母からの聞き取り、母の認知機能の確認、家族の聞き取り調査、の流れで進みます。母は、とにかく不機嫌。「なんでこんなことするの」と仏頂面で
対応しており、私はヒヤヒヤしておりました。一通り母のパートが終わったのでホッとして、「家族からの聞き取り」パートを、何も考えずに母の部屋のそばで行ってしまいました。
「簡単にお伺いするだけなので、こちらで良いですよ」と調査員の方に言われ、立ち話的に始めてしまったのですが、内容は、母の認知の状況について確認するものがメイン。
・スーパーで買ってきた食料品を自分の引き出しにしまっている(アイス、お弁当、野菜、果物などなんでも)。
・同じものをたびたび何個も買ってくる。
・お風呂も掃除もせずに入るし、機械類も新しいものは使えない。洗濯機も機能がいっぱいで混乱し始めている。
・お金の管理がほぼできない。「お金を銀行で下ろせる」というと驚くし、ATMって何?そんな便利な機械があるの?と言っている。
・薬もごちゃごちゃで管理ができていない。
・短期記憶はとにかく厳しく、直近話したこともすぐに忘れてしまう。
どれも事実なのですが、本人にとっては心地が良くない話ばかり。コソコソ声とはいえ、母に聞こえるところで話してしまっていたため、久しぶりに般若の再来かというような顔になっておりました。
こればかりは、私自身も配慮不足。ちゃんと介護度を判断してほしい、認定調査を終えたい、という気持ちが先走り、親への配慮は後回しに。
「認知症だからどうせ忘れちゃうしな・・」という感覚が無意識に染み付いていて、人としての配慮が緩んでいたかもしれません。
幸か不幸か、母は認定調査のことは程なくして忘れており、私が勝手に悩んで終わっていただけなのですが、何気ないところで自分のキレイでない部分がポロポロと出てくるものです。
なお、母は、認知機能面以外は家族のサポートがあれば自立的に暮らせることもあり、「要介護1」の認定となりました。
現実逃避的に施設の情報収集を開始
要介護の認定がもらえれば、デイサービスも介護保険で利用できるとのことではあったものの、家好き・一人好きの母が果たしてデイサービスに行けるだろうか、という一抹の不安がありました。万が一のため、ひとまず近隣の介護が受けられるホームを片っ端から調べ始めました。ほんと種類がいっぱいですよね。。
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我が家は民間のホームを検討し、認知症も考慮して、基本的には「グループホーム」・「介護付き有料老人ホーム」を軸に考え、念の為の情報収集ということで「サービス付き高齢者向け住宅(サ住高)」も含めて資料請求しました。
そして、非常に下世話な話ですが、運営会社の突然の倒産で施設が閉鎖となっても困ると思ったので、業界情報も簡単に調べました。
(一例)
バフェットコード:介護サービス業界売上高ランキング
https://www.buffett-code.com/industries/214
企業によっては、施設のウェブサイトに「第三者評価シート」、「重要事項説明書」などへのPDFリンクがある場合もあり、そこで詳細が確認できる場合は確認しました。
情報収集した結果として、悩みポイントは以下の6点です。
1)運営会社で設定している施設のブランド(グレード)により入居費用の幅が広すぎて、その違いが素人にはよくわからない。
2)資料だけでは、グループホームが合っているのか有料老人ホームが良いのかわからない
3)部屋は広い方が良いか、トイレ・風呂が居室内にある方が良いのか、共同トイレでもやっていけるのか
4)アクセス先は自宅近くが良いのか、施設に庭がある、あるいは周囲が自然に恵まれている場所が良いのか
5)アクティビティ?が充実している施設が良いのか。
6)情報開示されていた施設では、70代はごく少数派。ほとんど80代以上。70代で入れてしまって良いのか。
どうせならできるだけ良いところに入れてあげたいというのは、子どもの幼稚園/保育園、その後の学校探しにも似てますね(笑)
結局、腹を括って考えるしかないとはいえども
私の場合、「在宅介護」or 「施設介護」にするのか、の入り口付近でうだうだと悩み続けました。ただし、目の前の現実として引き続き「在宅介護」にする場合、どのような介護体制にするかを真面目に考えなければなりません。
当時の自分の仕事や立場的に、オフィスへの出社頻度はコロナ前水準に戻らざるを得ないことが想定される中、自分だけ白い目で見られてもひたすらにリモートワークを継続するのか?
母に無理矢理でもデイサービスに行ってもらったとしても、自分が会社でいない時間に母が自宅にいる場合には、不登校で家にいる子どもに介護を引き受けてもらう前提とするのか?
この状態で、我が家の介護プロジェクトが現実的に回るのかという疑問が残ります。
他方、施設に入れるとなると、毎月相当な費用が発生します。
母の預貯金から捻出するとはいえ、母の介護度からすると在宅介護の方がお金面では負担は少ないわけです。何歳まで生きるかを想定しながら、それまでにかかるであろう施設費用を試算して、それが捻出できるかも考えねばなりません(女性の平均寿命から逆算して計算したら、家一軒買える金額になり複雑な気分)。
さらに、お金に加えて最後まで悩む原因となったのは、「親を追い出す選択をしているのでは」という罪悪感でした。親と同居しているからこその悩みですが、特に私は、離婚して実家に戻ってきた身。実家とはいえども「家を乗っ取る親不孝もの」なのでは?という感覚が判断を鈍らせ続けることとなりました。
次回は、施設見学と、急転直下?施設入居を決めるところまでのお話です。
ではまた!