老け顔の女
ただの近況報告。
最初は小学校6年、最後の春休み。身長160センチの身長におかっぱ頭の私が、引っ越してきて始めての文房具屋に消しゴムを買いにいったと思いなされ……。
女主人は私にきく。
「お勤め帰りですか」
一瞬の間があり、互いの視線が合う。
中学の入学のために買ってもらったトレンチコートを着ていたせいだろうと考え、すっぴんの私はいう。
「いいえ違います」
29歳で結婚して始めて一緒に暮らすために引っ越してきて窓を開けたわたしに隣家の女性が挨拶してくれた。
「こんにちは、息子さんは大学生かい?」
一瞬の間があり、窓越しの視線がささる。
夫はキューピー顔で、真っ白なカッターシャツにジーンズだったから若見えしたのだろうと考え、私は答える。
「すみません、あれは夫です。今後ともよろしくお願いいたします。」
我が家に義弟が遊びにきたとき、本を処分したいから、古本屋に持っていつてほしい、売れたらその代金はお小遣いであげるというと喜んでいくという。念のためわたしの免許を身分証明書代わりに預けたのだが、かえってきた義弟がいう。
「お母さんの免許を持ってきたかいっていわれたよ(笑)」
一瞬の間があり、義弟もまた夫の血筋、家系的な若見えなのだと気がつく。
「えー、失礼しちゃうわ(棒読み)」
ただ、老け顔も還暦をすぎると加齢の足が遅くなってくる。先日89歳になる実母のアルバムをみていて、何ページにもわたって同じような写真がはってあるのを発見。毎年旅行していて、似たようなシチュエーションで叔母と一緒に撮っていたのだとわかる。
それで確認すると私の母の顔は60歳から80歳まではほぼ同じ……。ほうれい線がくっきりと出てきたのが70代の終わりで、その後はぐっと老人の顔になっていったが、それまでは同じ顔のまま年を重ねていたようだ。食べ物や体質や環境が違うのでなんともいえないが、今更ながら老け顔は歳を取らないのかもと、わくわくしているのだった。