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ピーナツバターの魔法


 子供たちが小学校低学年の頃まで、我が家には「ピーナツバターの魔法」が存在していました。それは朝食のパンにぬるピーナツバターがなくなると、夫がピーナツバターの瓶を「お祈りをして出す」というものでした。

 ちゃぶ台の前に神妙な顔をして座る子供たちに、目をつぶって「ピーナツバターを出してください」とお祈りしようと声をかけ、テーブルの下に隠していた同じサイズのビンとすり替えていたのです。「目をつぶってないと魔法はきかないよ」なんて適当なことを言いつつ、夫も私も毎回かなり楽しんでいました。

 サンタクロースと同じに、いつまで信じてくれるか心配していましたが、ある朝だんだん変だと思いはじめていた小学校4年になった長男が、薄目を明けてみていたらしく「お父さんがビンを!!」と笑い出して、2年生の次男も気がついたようです。

 その日から魔法はなくなりました。私としては最初に明治屋の大瓶のピーナツバターで始めてしまった魔法なので、金額的にも、ストックするために買いに行くのも大変だったのが解消されてほっとしました。その後、ハリーポッターに子供たちがハマッてしまったのは必然のことだったのかもしれません。

 すでに結婚した息子達は、いつかきっとこの魔法を使ってくれることでしょう。

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原 ふゆこ
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