USJ編(4)〜雄山、無惨〜
ホグワーツ城から出ると、息子と私でしばし別行動をする。
息子と二人であちこち周り、しばし休憩していた。
しれっとマイブームの美味しんぼごっこをやりだす。当然、息子も巻き込む。
海原雄山になりきる私。
自販機で購入したコーラを手にし、キャップをおもむろに捻る。
プシュッ!
「うむ」
「お父さん何のうむw」
「よいか士郎!コーラは五感で味わう飲みのものなのだ。この封を切った時に谺する力強い音、噴出する炭酸の勢いを目で、そして耳で味わう!この器(ペットボトル)も申し分なし!!」
「www」
そして飲み口を鼻に近づけて嗅覚で味わい出す雄山…クンクンクン…
「むぅ…この鼻腔を抜ける芳醇な薫りは人工的な香料…弾け飛ぶ炭酸とともに拡がるこの薫り…そしてこの弾けて唇を刺激する炭酸の躍動感、触覚までもこの雄山を喜ばせよる…まさに至高!!」
息子の愛想笑いを横目にゆっくりと目を閉じて、こくんっと一口飲む雄山。
「むぅ…サラリとしつこくなくそれでいて後を引くこの爽やかな余韻…にもかかわらずしっかりと感じるこの甘みは何だ!?………アセスルファムKだな!…疲れた体に染みるこの爽やかな甘さ…岩清水のような清涼感と共に体を包み込むこの多幸感、恍惚感はどうだ!!このコーラを作ったのは、中川ではないな……さては士郎!貴様だな!!この雄山を誑かしおって…って……おーいww息子よwww下向くんじゃないwwwww」
徐々にヒートアップしていく私の雄山。
「女将を呼べい!」だの「力士の背中から羽が生えて大空へと飛んでいくのを見送ったような余韻…」だの「干した布団をよっちょりなっちょりと舌の上で引きずってるような滑らかさ」だのなんだのと、嬉しそうに楽しんでる私をある程度泳がせたあと、息子はキリのいい所で、カラカラと笑いながらバタつかせていた足を止めて…急にスマホを出して
「この、数学の問題どうやって解くの」
コノ、スウガクノモンダイドウヤッテトクノ………
へ……いま何ておっしゃりました……??もっかい、もっかいぷりーず……
「これ何やけど、解き方教えて欲しい」
息子よ………ここ、USJですよぉwww
ホグワーツで魔法でも掛けられましたかwwww
中学三年間、息子は全然勉強をしてこなかった。
そして私はほとんど勉強を促したことが無い。
ただ、いつでも教えてあげる事ができるからいつでも聞きにおいでとだけ言っておいた。
一度も聞いて来たことは無い。
ここでかよwwwここUSJですよぉwワカルゥ彼女と行ったらそんな話題振っちゃだめだよ
まぁ、美味しんぼごっこもだめだろうけどwww
「ふう…よかろう!!!(うれしい) 」
聞いてきたのは定番にして超良問。これが解ければ他のこの手の問題ほぼイケる…良かったこれなら秒!!
「史郎!よくきけーい!!」
「お父さん、もういいですwww聞いた俺が間違ってましたwww」
「わーまてまて、ちゃんと教えますぅ……これはねっここに補助線をね…」
「お父さんありがとう。よくわかったわ」
………………。
……あなた
………ほんとにこの問題
…………あなた…まさか
……………美味しんぼごっこをやめさ……
……ハッ…ハハッ…いやいや…それはないない……。
程なく、ムスメ組が戻ってくる。
つづく。