メロディーは止まらない。
♬にゃんにゃん、にゃんにゃん、
にゃんにゃん、にゃにゃあ〜にゃ、
にゃあ〜んこだあ〜いせんそお〜略♬
(エンドレスリピート)
にゃんこ大戦争の歌を高らかに歌いながらお尻に穴の空いた検査着に着替える。
これがいけなかった。
看護師さんに連れられ、大腸内視鏡検査室に入室する。
「この部屋でこの検査着に着替えてからあちらのドアから奥の部屋へとお進みください」
そう言って看護師さんは奥の部屋に出ていった。
白い壁の更衣室。照明を反射してまばゆい。
セットアップのシャツに手をかける
小さく息を吸い込む
分厚く湿った唇。
静寂を破る唇はゆっくり開きながら
メロディーを紡ぎはじめる。
♬にゃんにゃん、にゃんにゃん、
にゃんにゃん、にゃにゃあ〜にゃ、
にゃあ〜んこだあ〜いせんそお〜♬
(エンドレスリピート)
軽やかに高らかにそして絶妙なビブラートも忠実に再現しながら、釦をトントンと外してゆき、そろりしゅるりと袖を抜く。
唇は紡ぐ。メロディーは止まらない。
♬にゃんにゃん、にゃんにゃん、
にゃんにゃん、にゃにゃあ〜にゃ、
にゃあ〜んこだあ〜いせんそお〜♬
(エンドレスリピート)
セットアップのパンツからつるんつるんと右、左。うなぎのように足を抜く。
ボクサーパンツも右、左。籐籠めがけて宙を舞う。
唇は、なおも紡ぐ。メロディーは止まらない。
♬にゃんにゃん、にゃんにゃん、
にゃんにゃん、にゃにゃあ〜にゃ、
にゃあ〜んこだあ〜いせんそお〜♬
(エンドレスリピート)
検査着をさっさ、さっさと身に纏う。
音圧はなめらかに弱くなっていく奥の扉に手をかける
そして、
唇をゆっくり閉じながら、
扉をゆっくり押し開ける。
目に入ってきたのは、
懸命に下を向いている医師と看護師。
肩をヒクつかせて、なにかがこぼれそうなのを必死に堪えている。呼吸の乱れは隠しきれない。
あぁ…お聴きになられましたか…お聴きになられたんですね…そ~ですか……
せ…選曲ミスったああああああああああああああああ!!!!!!!
つづく。