【演奏会感想】日本フィル×カーチュン マーラー9番
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プログラムの発表時から楽しみにしていた演奏会。マーラー9番は最も好きな曲の一つ。そして指揮のカーチュン氏も4年ほど前に神奈川フィルとの共演でベートーヴェン7番を聴いて以来、その生命力溢れる音楽作りに惚れ込んでいる大好きな指揮者である(「生命力溢れる」というのは極端に例えれば、踊り食いをしている時のような、まざまざと「生」を突きつけられる感覚、と言えばいいか)。
弦の厚みにこそ少し不満が残ったものの、やはり演奏会は期待を裏切らない素晴らしい熱演だった。体全体をつかって表現するカーチュン氏の明瞭な指示にオーケストラは的確に応え、音楽の一体感は尋常ではなかった。金管の鋭い咆哮や大胆なアゴーギクなど、所々大袈裟に装飾している部分がありながらも全体としての統一感をしっかり保つカーチュン氏の腕前はさすが。
今日の演奏を聴いて、改めて氏とオケの相性はますます良くなっていることが確認できたし、国内では聴き逃すのが勿体無いコンビの一つではないかと思う。
あともう一つ、演奏会の話からは逸れるが、半年前に祖父が亡くなったことで「死」というテーマを扱う本作品の聴き方に少し変化があった。特に終楽章の聴き方だが、これまでマーラー自身の死を意識して鑑賞してきた一方で、今回は祖父と重ねずにはいられなかった。祖父の死に際に立ち会い、この目で見た一人の人間が呼吸と無呼吸を繰り返しながら一歩ずつゆっくりと死に向かって歩を進める姿は、まさに雄叫びと囁き声を繰り返し、最後には穏やかに無に帰す終楽章と重なった。音が消え入るとカーチュン氏は1分ほど静止しホールは無音になったが、それは死後の人間に捧げる朗らかな追悼にも受け取れた。慣れ親しんだ曲も人生経験とともに聴き方が変わる好例だと思う。
さて、マーラー9番を次に聴く機会は来シーズンのベルリンフィルになるのだろうか。まだ今後の予定の見通しが立っていないが聴いてみたい…。