ベースアンプの振り返り。そして決別も振り返る。
【10Wの安物でスタートしたベース人生】
アンプを持ってないし使った事もない。
スマホ直のまま音楽を聴くのが当たり前。
いきなりそこに異を唱えるってのも老害的な感じはするけど、でも自分としてはやはり、違和感以上に寂しいものを覚えるのが正直なところ。
誰かから聞いた話って事じゃなく、現実として目の当たりにした分だけ、ショックを受けてしまった。
どんな形であれ、エレクトリック楽器を弾くのであれば、アンプに触れる事をまずおすすめしたい。
ベースを弾く人が増える。興味を持ってくれる人がいる。それだけで自分なんかは嬉しくなってしまうし、お節介だろうが何だろうが、色々教えたくなってしまう。
安物のショボいアンプだろうと、持ってるとやっぱり違うもんなのだ。
振り返ると自分は、全くの無知からエレクトリックベースを始めた。
どんな音が出るのか知らなかっただけでなく、なんと、アンプの存在すらロクに知らなかった。
エレキって言葉は知っててもアンプって何の事かよく分かってない、電気が無ければ楽器として成立しない、そんな事すら知らなかったという、笑えるような笑えないような、何とも恐ろしい話。
しかしまぁ、そんなスーパー世間知らずでも、超物知らずでも、何とかなるモンである。
「ベースやりてぇ!」って勢いだけはあったのと、両親共に理解があり、実兄が都内でプロやってたのも幸いだった。
ベース本体は兄貴に譲ってもらい、ベースアンプは親に買ってもらえたという、楽器を始める中学生のスタートとしては、それだけでも最高だったと言える。
正直、そのベースもアンプも全然大した物ではなかったけど、気持ちのまますぐ始められたってのが素晴らしい。
運が良い。縁がある。それって本当に大事。始められない人は一生かかっても始められない。世の中、人間ってそういうもの。
入口を見つけるだけでなく進む事まで出来る。それだけで結構凄い話なんだってのが今はよく分かる。
そんな、色々と思い出深い存在でもある、F社の10Wアンプ。
繰り返すようだけど、物自体は全然大した事ないし、わざわざ褒めるポイントなんてのも出てこない。
しかし、そんなのでも有ると無いでは話が全く違う。これまた繰り返すように、アンプが無ければ楽器として成立しない、それがエレクトリックベース。
「生音だって音楽になる!」とか、そんな話はする気が起きない。電気で増幅して鳴らさなければ、まともな道具として機能しない。
持ってるだけで天と地ほどの差があるってのは実際、バンドをやってアンプが必要になる機会が生まれれば、嫌でも分かる。
初心者中学時代なんかは勿論、音楽学校時代にジャズトリオ(ピアノ/ギター/ベース)をやってた際なども、このアンプを使用していた。
小さなレストランや結婚式で使う時もあったり、合宿みたいなやつでも持ち込んで使ったり、意外と思い出があったりする。
どんなに高級で素晴らしいベースを持っていようが、音にも弾き方にもこだわりを持ってようが、アンプが無ければどうにもならない・・・
身に染みて実感した。
とは言えまぁ、いくら大袈裟な音量が必要無いとはいえ、あれは厳しい試みだったとしか言い様がない。
良い音なんてしてくれるわけもないし、希望通りになるはずもない。無謀だろって断罪したぐらい、どうにもならないスペック不足を感じ続けた。
しかも、あの頃にメインで使用していたのは、G&Lの5弦。
そのパワーを発揮できるわけもなく、低音をブーストしたり音量を上げると、すぐに歪んだり割れてしまうのが悲しい。
入力ゲインのセッティングすらできない安物のコンボだったが、それでもそれしか持ってなかったんだから、泣き言なんか言ってられない。
音が悪くても条件が不利でも、音が出るだけありがたい。
10Wだろうが何だろうが、何とか工夫して現場をこなそうとしてたのを覚えてるし、自然と鍛えられていたようにも感じる。
なんて格好いいこと言いつつ、何が恥ずかしかったかって、バンドのギターの方が良いアンプ使ってたって事である。
【AER】の【BINGO】
超小型軽量だけど60Wぐらいの出力がある優れ物。
現行品は【COMPACT60】という名前。
完全にアコースティック系のサウンドを狙ったアンプな為、入力が二つあったり、ミニPAアンプみたいな感じでも使えたこのアンプ。ギターに限らずコントラバスで使ってる人なんかもいるんじゃないかと想像。
今考えてみれば、上手くセッティングして一台で出すのも有りだったのかと思うが、無知の塊、固定観念の塊では、そんな発想は微塵も出てこなかった。
「ただのギターアンプ」としか考えてなかったんだろうなと反省したい。
安物で過ごしたのも良い思い出っちゃそうだけど、一方、良いアンプを使って良い音を出す、良い音の為に良いアンプを使うっていう、そこを致命的にサボっていた事実は戒めるべきだろう。
ちっこいアンプ、ショボイ機材から自分のベース人生始まったのかと思うとしみじみもするし、そこから生まれた工夫があるのも確かだが、その小さな限界や怠惰に縛られていた状態は、あまり褒められたものではない。
アンプに妥協すると悲惨な事になる・・・・
エレクトリックベースの現実だと痛感する。
【二台目は65Wにパワーアップ!しかしベースアンプに限界を感じ始める】
順番的にややこしくなるが、音楽学校入学以前、実はもっと良いアンプを手に入れていた。
高校入学祝いに買ってもらった某社のベースアンプ。12インチスピーカー1発・65Wのコンボ。数値で見ても歴然。最初のアンプとは比較にならないか感動があったのを覚えている。
自宅用に丁度良いサイズだったし、カーペットデザインで高級感があったのも手伝い、一瞬でめっちゃくちゃお気に入りのアンプになった。
しかし、すぐに悲劇がやってきた。
このアンプを手に入れた後、新たなベースも手に入れたのだが、予想してなかった事態に見舞われる事に。
ニューベースだとなんと、歪んで割れてしまうのである。せっかくの超お気に入りアンプのはずなのに、故障かと思うような音が出てくるって悲劇。
そのアンプ、入力ゲインの調整が出来なかった為、出力の高いベースはま~相性が悪いのなんの。
「おらぁ!最高のベース買ったぜ!18Vだぜ!とんでもねーパワーだぜ!」って喜べるはずが、まともに鳴らせない悲しさ。
仕方なく、内蔵プリアンプは常時OFF。
今考えれば、ベース本体のボリューム絞れよって話なのだが、そんな発想は当時の自分では生み出せなかった。
ただ、実は正解だったのかとも思うところだったり。
そのベース、プリアンプをOFFにすると言っても、電池がなければ音が出ないタイプだったのが興味深い。
パッシブそのものになるのではなく、バッファだけ通してプリをスルーする構成だったのではないかと想像。
当時の印象としても、そっちの方が音が素直なような、自然と抜けてくるような、扱いやすいような、そんな風に感じていたのだから面白い。
この事実を考えてみても、自分がジラウドに辿り着くのは必然だったような気がする。
実際、そのベースアンプを気に入っていた期間は僅かで、違和感の方がどんどん増していった。
使うベースが変わったのも手伝い急速に上達、ベースマガジンなども読み始めて知識も増えていった為、【ウーハーのみ】というベースアンプの構成に限界を感じ始めていた。
【ツイーター】
この存在にどれだけ憧れた事か。
その後、音楽学校に入ったり、工房巡りなんてのも始めたり、視野が広がるほど「ベースアンプはおかしい!」と、疑念と確信を持つようになっていったように思う。
自分が出したい音が出てくれない・・・
欲しい帯域が明らかに再生できていない・・・
思うような音抜けもレスポンスも得られない・・・
ずっとずっと、気持ち悪くて仕方なかった。
読んで頂きありがとうございます。サポートして頂けると今後の力になります。