【デザインメンターの気づき02】デザインの別案、見た目が違う…だけじゃだめ?
デザインメンターが受講生から貰った悩みについて、掘り下げ思考するnoteです。
今日は、別案の提案は、どう変化をつけるべきなのか?という話をしたいと思います。
先日レッスンで、デザイン課題を2案、受講生が提案してくれました。
例1:ビール会社の、グローバル人材採用サイトの課題(内容はこちら>)
【A案】
「伝統を疑え」に合わせて、新卒社員が元気にジャンプ!
伝統なんか飛び越えてやれ!という感じで、ぴったり合っていますね。
常識にとらわれず世界に飛び出していくことを恐れない、グローバルな社員像を全面に押し出した、アクティブな案。
【B案】
作っている社員さんの写真をKVに、
用意されたメッセージ「地球の裏側の、言葉も肌の色も違う誰かは、今は、日本のことを知らないかもしれない」に合わせ、世界でビールを飲んでいる人たちを入れました。
どちらもデザインのクオリティとして本当に素晴らしいものでした。
ただB案について説明を求めると、あまり進んで言葉が出てこず。
都度「用意されたメッセージに合わせてイメージを選びました」と受動的な印象。
このとき、私が「B案の狙いは?B案が何のために作られた案なのかが、ストンと落とし込みづらかった」という指摘をしました。
皆さんは、どう感じますか?
別案の提案はどうあるべきか
最初は特にこれ、疑問ですよね。
時と場合によりますが、一般的にデザイン初稿は3案ほどの提案が多いかなと思います。
でも、デザイン歴が浅い人ほど「全部同じに見えるけど、何が違うの?」という程度の違いになりがち。
出すなら、
①見た目がはっきりと誰がどう見ても違うものであること
②明確に何が違うかを説明できる案であること
この両方満たしていないと、出す意味がないんですよね👀
「ペルソナを変えることで案に違いを出せばいいのでしょうか?」と質問を受けた事もあります。
うーん、それも手かもしれませんが、それよりも…
「ユーザーに、どう動いてもらう狙いがあるのか」を
「ユーザー目線で、別案がどう違うのか」の目線で説明できる
というのがいいかな、と思っています。
具体的に解説します!
他の受講生の事例
例2:「どのセールスポイントを押し出すか?」で案に変化をつけた
例えば、先日の卒業制作でクライアントワーク提案をした、
Nさんが制作したのは、ママが子連れでこれるカフェの「Instagramのサンクスぺージ」でした。
まず、初稿で出してくれたのはこちら。
デザインの完成度が高いですね!
ただ全部、情報や狙いがほぼ同じで、違いがわからない。
そこでアドバイスしたのは
「クライアントの要望を、全ての案に全部詰め込んでしまっている。」
「各案ごとに、特徴を全面に押し出して他は削いでみたら?」
まず、セールスポイントを整理しました。
「店内写真を見せたい。子どもを安心して連れてこれる場所と理解してもらい、店に訪れてほしい」
「料理の写真も出したい」
「フォローしてほしい」
「プロフィールページに飛んで、予約してほしい」
そして、出てきた修正案はこちら。
初回より、第一印象もかなり違って1案ごとに個性が出た気がしませんか?
【A案】要望全部つめこみました案
【情報】
・店の写真(x2)+店の説明
・料理写真+料理説明
・アカウントの説明
クライアント要望そのままの、要望をすべて詰め込んだ情報多め案。
最新情報を投稿しているというアカウントの説明まで理解の上でフォローしてくれるという、文字数が多くても全て読んでくれるエンゲージメントの高いフォロワー狙い。
クライアントの要望を全て入れると、逆に情報が多すぎ写真も小さくなって結果読まれづらくなりスルーされやすいのですが、
クライアントさんの要望全て理解しましたよ、ということで一つはこういう案を必須で作るといいです。
【B案】店内を見せ、フォローを促す案
【情報】
・店の写真(x2)+店の説明
情報を半分に削って、店内の温かみを知ってもらいやすい案。
押し出したセールスポイントは、店内の様子。
店内の様子を気にするユーザーが多いことから、店内の説明に特化した案を作りました。代わりに料理写真・料理説明・アカウント説明はぜんぶ削除。
情報としてはAの半分になったので、より店内の特徴が際立ち、フォローへの導線が明確に。どう動いてほしいかがよりシンプルにユーザーも理解でき、フォローが増えることを狙いました。
【C案】店内写真を1つ大きく見せる!に特化案
情報:店内写真+フォローお願い のみ
セールスポイントは店内の様子ですが、B案から更に情報量を減らし店内写真を1枚に。文字はシンプルにフォローしてね文言のみ。
1つの店内写真を全面に押し出し、写真の周囲はぬくもり・あたたかみのテクスチャであしらい、世界観を構築。
ロゴに「ふっと力を抜ける場所」というコピーも添えたことで、安心できる場所、と読まなくても、ひと目でビジュアルのみでアピールできる。フォローに直結させずお店のブランディングイメージアップのための案。
情報量の多さに慣れていない非知識層にも機能しやすい。
、、、、、
このようにNさんは案ごとに、セールスポイントを2つ入れた案と、1つ入れた案にしました。更に情報量を変えて案に差をつけた事で、ママとこCafeさんにとって、ぴったりのアプローチはどれか?という選択肢をクライアントに提案したんですね。
結果、Bが採用!
クライアントさんは最初は「全部情報を入れてほしい」という要望があったのですが、
情報を減らすことでセールスポイントがより際立つことが、クライアントにも理解されたんです。
クライアントは思い入れが強いあまりに、これもあれも情報入れてと言うことが多いのです。が、デザイナーがクライアントの向こうにいるターゲットユーザーの欲しいものや心理を想像し、情報を削ることも時には必要。
ちなみにプレゼンするときも、
×「Aは可愛い案、Bはかっこいい案です」
〇「ユーザー目線で感情がどう動かされ、どう動くか、こう違うんです。」
という風に、
主語を「私」ではなく「ユーザー」に変えてプレゼンをしたいですね。
タイプ別の別案提案方法
①初級:セールスポイントを洗い出し、全面に出す情報を絞る
まさにNさんのカフェの時の提案方法ですが、ビジュアルで見るとわかりやすいと思うので、一緒に見ていきましょう。
例3:女性向けのフィットネスジムのデザイン例
A案.「このジムは、働く女性も好きな時間に通える」
B案.「このジムは、パーソナルトレーナーが女性」
C案.「このジムは、本格派」
という3案を作るとします。KVはきっと以下みたいな感じ。
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A案「このジムは、働く女性も好きな時間に通える」
B案「このジムは、パーソナルトレーナーが女性」
C案「このジムは、本格派」
デザインを作る前に、「どのセールスポイントを押し出すか?」を決めてから案を作った結果、見た目の違いがこんなにわかりやすくなりました。
選定写真・デザイン全体の色や印象も大きく変わりますね!
②中級:商品を多角的なイメージで見せる
例4:iPhoneの新作の宣伝LP
A案. iPhoneで、プロダクト機能フォーカス案
B案. iPhoneで、好転ストーリーで夢見せる案
C案. iPhoneで、機能でできる可能性にワクワクさせる案
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A案.iPhoneプロダクト機能フォーカス案
「iPhone、新機能のカメラ搭載」
B案. iPhoneで、好転ストーリーで夢見せる案
「iPhoneで、あの子ともっと近づける」
C案. iPhoneの機能でできる可能性にワクワクさせる案
「iPhoneなら、あなたでもこんな写真がとれる」
どうでしょうか?
今多くのスマホの宣伝方法は、B寄りのC混合案、というCMが多いかもしれません。
一般的には、状況や未来を想像させる案は女性向けの商材に多く使われ、機能やプロダクトそのものを押し出す案は男性向けによく使われるアプローチ手法と言われています。
スーパーで珍しい野菜を売っている時も、よくわからないとスルーしてしまうと思いますが、
「こういうメニューだと、美味しく簡単に料理できます」と具体例をビジュアルと共に提案されたら、想像力が膨らんで「おいしそう!」と買いたくなりますよね。
相手の想像力を補完して、未来を見せて想像させてあげるというだけで売り上げが何倍にも上がったりします。
③他にも、ペルソナの興味レベル別で企画のアプローチする場合・・・
今回は
例6:料理教室のWebデザイン
A案. 全く知らない人が初めて見て、覚えてくれる案
→よし、インパクトあるビジュアルをアピールしよう!
B案. 既に何度か興味あり見てくれてる方がフォローボタンを押してくれる案
→キャンペーンを押し出そう!
C案. すでにいる固定ファンが実際に店に足を運んでくれる案
→今まで反応が良かった「3分で作れる」をテーマに料理発信しよう
などという方がクライアントには違いが分かりやすいです。
見た目の好みではなく「こうしたい」という未来像がサービスと合っているか?で選ぶことができるんようになりますよ!
以上です!
他にも以下記事もどうぞ~!
次回デザインメンターの気づき03はこちら↓