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『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』②

お母さんの手紙
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音へ
今、真夜中の2時を少し回ったところです。今が最後のチャンスかも。
そう思って、病院の方に便箋とペンを借りました。
もうあまり字が上手く書けなくて恥ずかしいけど、便箋を光に透かすと、小さな花びらが浮かびます。素敵でしょ?

音。お母さんはそろそろいなくなります。あっと言う間だったね。
時間が足りない。まだ何にも出来てない。まだ死ねない。
あなたを、ひとり残してしまうの。

音。あなたを父親のいる子にしてあげられなかったこと、何度後悔しても足りません。お母さんはもう髪を結んであげることも出来ません。
それでもお母さん、あなたを産んで良かったと思っています。

あなたはとても質問の多い子だった。何で水は濡れるの。髪の毛はどんどん伸びるのに、何で眉毛はちょうどで止まるの。どうして淋しい気持ちはあるの。

あなたには絵本が必要なかった。自分で作った物語をわたしに話して聞かせながら眠りに就くから。

歩くのが速いわたしの後を、大丈夫や、そう言って付いてくる小さなあなたを見ていて、いつも思いました。この子には人生を切り開く強い力がある。

音。たくさんの人に出会ってね。自由に見て、自由に話して、自由に手に取って自由に歩いて。好きなように生きて。それはあなたが心に持って生まれた大切な宝物だと思う。

あなたはいつか学校に行って、友達を作るのかな。中学生になって、高校生になって、誰かを好きになってるのかな。どんな恋をするんだろ。
恋をすると、嬉しいだけじゃなくて、切なくなったりするね。きっと人が淋しいって気持ちを持っているのは、誰かと出会うためなんだと思います。

時に人生は厳しいけど、恋をしている時は忘れられる。
恋をして、そしていつか、たったひとりの人に出会えるといいね。
その人はきっと、あなたの質問に答えてくれる。あなたの物語を聞いてくれる。あなたが産まれたことを喜んでくれる。

音。字が上手に書けなくてごめんね。お母さんはどこに行ったの。
今のうちに答えておきます。空の上にはいません。土の中にもいません。
お母さんは音の中にいます。

葡萄の花は葡萄の味がする。バナナの花はバナナの味がする。
愛するって、心から心へと残していくことだと思う。
音が笑ってる時、お母さんも笑ってる!音が走ってる時、お母さんも走ってる!大好きなわたしの娘。大好きな音。愛しています。どうか幸せに。 母より。
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たくさんの人に出会ってね。自由に見て、自由に話して、自由に手に取って自由に歩いて。好きなように生きて。それはあなたが心に持って生まれた大切な宝物だと思う。

愛するって
心から心へと残していくことだと思う。

↑私の大好きな言葉です。

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