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パリに現われた都市の森

オリンピックで盛り上がるパリ、2024年7月頭のまさに熱狂の直前に都市計画に関する学会のため行ってきました。

その学会のエクスカーションに「都市の森(アーバンフォレスト/urban forest)」コースがあり、そういえばパリはかなり緑化を進めていくぞと宣言していたあとどうなったんだろうと思い、選んでみました。
案の定、面白かったのでご報告します。おそらく完成後、日本でもまだ報告されてないように思います。
(森林の専門家ではないのでその点の甘さはご了承ください)

見学会自体は学生がオーガナイズをしてくれ、現場ではアーバンエコロジーの専門家でもある担当者の方がご案内してくださいました。

都市の森といえば、オフィス街に森をまるごと持ってきた東京駅近くの大手町の森を思い出しますが、パリも大都心の街中に森をつくりました。

ラウンドアバウトが森に変貌(出典:Guillaume Bontemps、パリ市
主にラウンドアバウトの真ん中部分だったところに植林されています

ますます高温化していく都市の気温に適応していくため、パリの気候計画(PLAN CLIMAT DE PARIS/ PARIS CLIMATE ACTION PLAN)では2030年までにクールアイランドをつくり、そこにあらゆる人がアクセスできることを目標としています。
具体的は、水浴びできる場所や緑地、博物館などの涼める場所をつくるということのようです。
また、2030年までに20,000本の木を新たに植えることも目指されています。

今回見学で行ったのは、アーバンフォレスト創出の第一弾として2024年に完成した、モンパルナス駅近くのカタローニュ広場(Place de Catalogne)です。
この広場は12,400㎡の広さがあり、ここは以前、巨大なラウンドアバウト(環状交差点)があり、車が大量に行き交う場所でした。夏には大きなヒートアイランドとなることが問題視されていました。

反射しすぎてよくわからず申し訳ないですが、かつてのラウンドアバウトです

そこにできたのが4,000㎡の森です。
車道だったところは半分くらい歩道になっていました。

計画図 凡例の上から二番目が歩行者ゾーン、三番目が自転車道(出典:パリ市
歩道部分はかつて車道だったところ

大手町のように、あらかじめ別の場所で森林を育成してから移植したのではなく植林の手法をとったようですが、生態系に配慮してデザインがなされました。
軽い土壌を用いて、沈み込まないように樹木をベルトで固定する工夫もされているそうです。

4階層にわけて植栽の多様性を実現したそうです
縁には歩道の水が流れるようにしています(出典:パリ市

周辺の緑地との連続性も意識され、コリドーとされる緑地帯とつなげ生態系ネットワークの形成にも寄与しています。

周囲の緑地との連続性(出典:パリ市

当然、交通量に影響が出ることからドライバーたちからの反対もあったそうですが、押し切って実現させたようです。

日本の専門家も事前に呼んだと担当者の方がおっしゃっていたので、大手町の森の関係者の方だろうか?と推測しましたが正確なところもわかりません(どなたか辿ればわかりそう…?)。

緑被による気温低減効果も確認

木々に囲まれた部分は公園のようになっています。
見学したときも若い親子がいて、子どもたちが遊んでいました。

私は森林や生態学、気候の専門家ではないですし、今回も見学しただけなので、ぜひいろんな方が効果について分析・評価をしてくださればと思います。
10年くらいすると様子は一変するよう予測されているみたいです(パリ市ウェブサイトにフォトモンタージュあり)。

ともあれ計画を立てて本当に実行してしまうパリは、さすが近代の都市計画からやることが思い切っているなと驚いた事例でした。

詳しくは、パリ市のウェブサイトをぜひご覧ください。
https://www.paris.fr/pages/foret-urbaine-place-de-catalogne-la-concertation-est-lancee-19389


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