可惜夜 超掌編
9月下旬
残暑も影が見えなくなってきた。
26時半
1日で1番心地よく、悲しい時間
だだっ広い公園の床にはぽつんとふたりだけ、
やわらかな芝の上に並んでねそべっている
辺りは真っ暗で、遠くにひとつだけ見える点いては消え、また点いては消えかけてを繰り返す明かりが、眼の端で酷く目立っている
また青黒く染まる空には、鬱陶しいくらいに星が飛び交っていた
「なんだか、プラネタリウムみたいだね」
君はたまに急に変なことを言う
「はは、君はおかしいね」
そう言い一瞥すると、一瞬ムスッと睨んだ目とあってしまった。
「ご、ごめんよ」
あわてて僕が謝ると
次の瞬間には、睨んでいたはずの目と眉は跳ねて、2人して笑っていた。
だんだんと視界がボケていく。
僕と君と世界が、一緒に溶けていく…
僕らは、まぶたの向こう側の景色を思いながら、しばらく沈黙を噛み締めていた。
「ずっとこのままがいいのにね」
沈黙を破った君の言葉は、僕もまた言いかけた言葉だった。
心地いいから、悲しい時間。
役目を終えた遠くの明かりは、もう直ぐ朝が来ることを静かに知らせていた。
読んでくれてありがとうございます。
開けない夜もたまには欲しいですよね。
ちなみに最後の行は
踏切のように点滅した街灯は、夜が通り過ぎると静かに消えて行った。
と迷いました。
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