第5回UE5ぷちコン映像編 応募作品『穴ぐらの男』振り返り記事
技術関係は独立した記事にまとめているので、本記事は作品制作に関する解説や反省をまとめました。
半分は自分が振り返る用ですが、作品をより掘り下げているので興味ありましたらお付き合い頂けましたら幸いです。
つい熱くなって調子に乗ってしまい長々と書いています。
応募作品
テーマ:脱出
応募動画『穴ぐらの男』
コメント
不運にも深い穴に落ちてしまった冒険者の行く末とは…。
キャラクターはVroidをベースに自作しました。
駆け足ですが、冒険者の穴の中の日々とテーマである”脱出”の開放感を感じて頂けたら嬉しいです。
わかりにくいので補足ですが、深い穴は遺跡の地下へと繋がっていました。
スクリーンショット
提出したスクリーンショットです。
概要
レギュレーション(UE5ぷちコン映像編 公式Webページより)
制作期間
個人的な制作期間:2023年12月31日~2024年1月9日
(応募受付:2023年12月15日(金)~2024年1月8日(月)(1月9日(火)AM10:00まで))
作品の振り返り
最初に用意していた絵コンテがあったのですが、いざ作ってみたら半分くらい時間の都合上カットになりました。
制作後半は、いかに消しても差し支えないシーンを除外するかという戦いがありました。
物語の全プロット(カットなし)
想定していた物語は以下になります。(自分用コンテの説明なので怪文書風味)
カットした部分は細字です。
なんで1分でいけると思ったんだろう、という反省がありますが、一度作ってみないと1分でできる温度感はわからないものですね…。
動画を制作する際のコンセプト
一番意識した、この動画を見た時に感じてほしかったことは”脱出”のカタルシスです。最後のシーンで少しでも解放感を感じ、”よっしゃー!”というスッキリした気持ちになってもらえたら大成功なので嬉しいです。
その他のシーンは最後のシーンを盛り上げて感情移入してもらえるような布石として考えていました。
短い動画の中で、穴の中で長い年月が経っていること、なんとか生き延びてきて脱出したがっていることはカットせずに伝えたかった部分です。
含めなかったシーンにあったように、”もう諦めかけていた矢先…!”や”家族の存在”も脱出シーンを輝かせるために入れたかった部分ではありましたが、最悪無くても繋がるためカットしました。
回想シーンも、老人は何者でどうしてここにいるのか、何故宝のある遺跡に繋がったのかなどの物語のバックボーンを補強する目的で入れたかったのですが、これも想像力で補って頂ける部分ではあるかと思ったので泣く泣くカットしました。
テーマについて
UE5ぷちコンでは毎回お題が発表されるのですが今回は”脱出”でした。
少しでもテーマの要素があればかなり自由な解釈もOK(だと個人的に思っている)ので、どんな感じにしようかあれこれ考えていましたが、
今回、映像編は初参加なのもありど真ん中ストレートで”脱出”を表現することを試みました。
”脱出”を表現する際、監獄や爆発寸前の機内など、脱出をしなければならない状況はいくつか考えましたが、舞台は大穴にしました。
「穴に落ちている」という状況だけで、細かい説明をせずに「それは抜け出さなければならないね」と考えてもらえそうなシンプルさが1分という短い時間の中でやりやすそうだったのが大きな理由です。
物語の世界観
穴の中で生活をしている、という設定で動画映えさせたいと考えた時、薄暗くなりがちなので見せ方を少し考える必要がありました。
ファンタジー寄りな世界観にしてしまえば良いやと思ったので、
青く光っている石”夜光石”を置いて光源を確保することにしました。
(オレンジの謎光源も使用していますが…)
さらに、夜光石の光を好む夜光キノコという存在も作りました。
キノコは、夜光石があればむくむくと成長するので、老人の貴重な食料源となっていました。
また、陽の光は差し込む時間帯があるので、植物は僅かながらも育っていています。
上の方から水が少量ずつ流れ込んでいるため水も確保できる状況です。
そういうものだと受け入れてもらえそうな部分はファンタジーにしつつ、短くない年月と地続きの生活の部分は説得力をもたせたかったので、はじめのカットでそれとなく説明したかった思いがありました。
(裏では設定としてありましたが、そこまで読み取ってもらえる程作品に落とし込めてなかったのは反省です)
ライティング
動画の作業をやっていてライティングに意図を含めるのはとても楽しい作業でした。
(ゲームでもできると思いますが、動画の方が意図した画面を作れるので個人的にやりやすかったです)
はじめのシーンは意図して薄暗く状況がわからないようにして疑問を持ってもらい、後から周囲を照らすことで穴の中であるという状況の説明を印象的にしています。
老人が脱出する際の暗い場所から一歩踏み出して光に照らされるシーンも、
長らく暗い穴の底に捕われていた老人が、自分の足で光の下へ踏み出すという暗示を含む意図がありました。
(カメラのフレーム外にプレーンを置いていい位置に影が落ちるように調整したりしています)
まだまだ未熟ですが、このようなライティングに意図を込めたり物語を演出する技法はもっと学んでいきたいです!
作品に対する反省点
・時間配分
完全にミスしていたので次はちゃんとコンテ段階で尺も確認するようにしたいです。
また、駆け足なので何回か見ないとどういう状況かが見えづらい仕上がりだと思います。早口すぎて聞き手の理解が追いつかないコミュニケーションみたいなことをしてしまっているのではないかと感じました。落ち着こう。
・表現しきれていない
こうやりたい・表現したい という思いで色々と設定を練ってはいるのですが、肝心な作品に落とし込んで伝える部分はまだまだだと思いました。
もう少し大袈裟に表現してみたり、客観的に見た時に意図が伝わっているか?は制作途中でも考えられると良いと思いました。
完成してから初めて第三者視点で見れるようになって”伝わってるかこれ…?”になりがちなのは改善の余地と言えそうです。
とはいえ、今回大幅カットをしてみて学んだのですが、蛇足的な情報はごっそりと削ってしまう勇気も大切なのかもしれません。
技術面の振り返り
はじめてチャレンジしたこと
・Vroidベースでキャラクターモデル作成
・UE5 Mannyのコントロールリグを使用してアニメーションシーケンスを書き出し
・Mannyのアニメーションシーケンスを自作キャラにコンバート
上手くいった点
・前回のUE5ぷちコンで1Dayタイムアタックした際に、なるべく工数をかけずにキャラクターモデルを自作する手法を検証&メモしていたので、キャラクターモデル周りは効率的に作業することができた
試す&上手くいったらメモするのは大事…!
・前回学んだこと(IKリグ・IKリターゲッタ)の応用でコントロールリグからモーションを流用するという選択肢が増え、新しい技法を獲得することができた
一つできることが増えると掛け算的にできることが増えたり、もっと踏み込んだことができるようになるのが楽しいです。
ゲームなどでちょっとした技のアニメーションを増やしたいなと思った時にちゃちゃっと作れるようにもなったので、今後も生かしていける技だと思います。
・Vroidベースから顔のモデリング(スカルプト)・MarvelousDesignerでの衣装作成・体型調整でオリジナル色の強い自作キャラクターを3~4日くらいで作れるようになった
ざっくりと見えればOKくらいの、インスタントキャラモデルとでもいうべき手法だと思いますが、スピード感を持って構想を形にできるのは強いと思いました。とりあえず動くキャラクターがいるとモチベーションにも繋がる気がします。
技術面での反省点
反省点と次回映像編(開催されたら)に向けて気をつけたいことです。
・動画の時間が想定より大幅に長くなった
大幅にカットするシーンができてしまい、伝わらない動画になってしまった
→動画は先にPremiereなどで絵コンテ状態から時間を詰めておく
BGMやSEなどの作業も先につけられるのもイメージが湧きやすい
不要な作り込みが減る(今回は制作したのに使わないものがあったのが勿体なかった)
・最初に荒くていいから必要なアクタを揃えておく
→カメラ配置など、「まだやっていない作業」を放置するのはストレスが掛かる(すんなりいくかわからないものは特に)。
できる作業の方が進めやすいが、ある程度うまくいく見通しをはじめに立ててしまった方が精神的に楽に作業を進められると思った
・データを綺麗にする
タイトな期間なのもありデータが毎回ごちゃつきがちなので反省
ぼちぼちデータ周りも気を回せるようになりたい
理想は自分以外の人が触ってもわかりやすいこと(時間経って全てを忘却した時に触っても大丈夫なように…!)
・モーションの切り替えが時折ぎこちない
今回アニメーションシーケンスを自分で作成して動画になるよう繋げていくということに初挑戦したこともあり、モーションの繋ぎ目に違和感があったり無理やり対処した箇所が悪目立ちしていると感じました。
まだ流れがよくわかっていない中の作業だったのが原因だと思うので、次回はデータを整えて改善したいです。
・キャラクターデータが重かった
MarvelousDesignerで衣装作成の際、「動画だしUE5だしいっか!」とポリゴン数のことを考慮せずに書き出してしまうおおちゃくをしました。とても愚かな行為だと後から反省することになります。
△70万くらいになったのですが、DCCツールでブレンドシェイプをつける際など重くて作業の負担になっていました。
また、MarvelousDesignerの書き出し設定も深く考えずに行ったので、裏面を消していなかったりして余計にDCCツールで修正するはめになりました。
ちなみに自分の環境だと△70万はMAYAでは作業は可能ですがストレスになるくらい重かったです。意外なことにBlenderはそこまで気にならなかったです。
いずれにせよ、個人制作においてもポリゴン数は多くても△10万以下くらいを目安にすることに決めました(個人の環境に左右されると思います)
動画でもリトポ&ハイポリベイクはサボっちゃ駄目だ。DCCツールを介する可能性があるならば。(´;ω;`)
Zblushから直出し→UE5Nanite コースであればまた違うかもしれないですが…。
まとめ
ゲームでも一貫して言えることですが、グラフィック作業の前に「あらかじめ必要なものを最低限の形で組んでからはじめる」のが限られた時間や労力を無駄にしないためのコツだなあと個人的に思いました。
どうしても最初から詰めてクオリティを出さないと安心できなかったり、見えてこないこともあると思ってしまって詰めてからにっちもさっちもいかなくなるパターンが多いです…(反省)
映像編は初チャレンジでしたが、ゲームとはまた違った面白さがありました。
画作りに全力投球できる映像作品はどちらかというとデザイン寄りの自分にとって相性が良いように感じました。
この記事を書いている現在は結果発表はまだですが、また是非チャレンジしたいです。
X(旧Twitter) メモ
制作期間中、第5回UE5ぷちコン映像編 についてのツイートをまとめました。後から見返すと制作過程がわかりやすくて良いです。
第5回UE5ぷちコン映像編 備忘録まとめ記事
参加作品を制作した際に学んだことを個人的に備忘録として記事にまとめていたのですが、量が多くなったので一連の流れがわかるようにリンクをまとめたページを作成しました。
最後までご覧頂きありがとうございました…!