見出し画像

保存できると希望を抱いて≪in the hope of preserving them≫

 言語学者の山田真寛助さんと中川奈津子さんが消えつつある奄美大島や沖縄の諸方言(琉球諸語)の保存に取り組んでいます。そのため、そのような言葉で書かれた絵本の出版を計画しているとのことです。

 私は宮古島の下地から池間島までママチャリで島を横断したことがあります。美しい海と自然に囲まれて、島の人々の口から生きた宮古島の言葉であるミャークフツが飛び出すのが聞こえるたび、心がぷからさになりました。

 悲しいことに沖縄や南島の言葉はどんどん話者が減っていっております。私は大和ん人ではありますが、祖父母の代で北関東に疎開した関係もあり、両親の世代から方言が継承されなくなりました。その結果、私は首都近郊の標準語をベースとし、育った場所の方言に加え、一部の生き物の名前が祖母の故郷の方言のボキャブラリーで構成されている、日本語の方言のハイブリットのような言葉が第一言語になっています。私は祖父母の方言から受け継がれた単語のひとひらに万感の思いを持って、家族の歴史とたまにしか訪れることができない祖父母の故郷の険しい山々と美しい自然を言の葉に透かして見ております。

 方言、ないしは土地の言葉が理解できないとその土地の民俗文化や歴史には真の意味でアクセスできません。脳科学の分野では「クオリア」と読んでいますが、言葉から匂い立つ感覚はその母語話者でないとイメージがつかめません。その言葉の愛らしさ、面白さなどその土地の皮膚感覚が共有できないのです。そして、消えてしまった言語は修復できません。ヘブライ語のように蘇った・再活性した稀有な例はありますが、それでも現代語としての復活ですので、100%同じ言葉がそのまま蘇ったわけではないのです。アイヌ語も今、学習者は多いですが、アイヌ人であっても、自分たちのユーカㇻの意味を勉強したり、昔の音声記録でどのようなことがしゃべられているのかは和人の研究や先人が残していった辞書に頼らないと、自分たちの伝統文化にアクセスできません。

 私としてはこの絵本の出版は重要なことだと考えております。また、これをきっかけに方言・地方語の豊かさに価値を見出してくれる方が現れるのを期待しています。そして、それを積極的に継承しようと手伝ってくれるおじいおばあ、方言・地方語を好意的に捉えてくれる次の世代の育成につながればと願っております。

 お二人は絵本出版のクラウドファンディングをしております。是非一度、閲覧していただければと思います。

 草々




資料や書籍の購入費に使います。海外から取り寄せたりします。そしてそこから読者の皆さんが活用できる情報をアウトプットします!