見えない星を巡る旅
かつて旅といえば、それは未知がもたらす驚嘆だった。誰もが踏み出せるわけでない、或いは訳あって出立した先にあるもの。知られざるまま野に朽ちたものも在ろう。
しかしながら驚くべき速度で長距離を移動する交通の編み目が出来上がり、人の蠢きは広がり同時にその数も増えた。そうあっては恒星間航路の実現も間もなくのことだろう。
その間に計算機が作り出す世界が台頭してから、より一層生活の様相が変化して、人々は己の旅の光景を滔々と見せびらかすようになった。
その情報を有難く享受する一方で辟易とし、半ば食傷気味になった私は荒野へと旅立つことにした。
それは実のところ逃げ出しただけなのかもしれないし、放り出されたのかも知れぬ。けれども飽和して身動きが取れなくなるよりは余程マシなのだ。
なにせ見聞は自身の耳鼻目を以てするに限るし、私を駆り立てるものは未知に対する憧憬だけらしい。
私の旅の目的は唯一つ。
星の見える丘に1本の樹の苗を植えることだ。
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