2018 埼玉大学 経済学部 国際プログラム小論文 模範解答
問1
(1)
図1、図2より、いずれの年においても生活習慣・上位と生活習慣・下位の正答率には差があることがわかる。また、この差について一九八九年における差と二〇〇一年における差とを比較した場合、いずれの教科においても二〇〇一年のほうが正答率の悪化が拡大している。つまり、家庭環境が子供の学力に及ぼす影響が拡大したことが確認できる。したがって、一九九〇年代から二〇〇〇年代初頭までに、学力の階層差は拡大したと言える。(200字)
(2)
筆者によれば、学力の階層差に変化をもたらす要因には、以下の二つが挙げられる。第一の要因は、親世代の所得、職業的地位の不平等の拡大によるものである。第二の要因は、学業達成に至る過程の変化である。たとえば、教育政策の影響として学校週五日制の実施、授業時間、教育内容などの削減などの結果、公立学校の学力補償の役割が弱められることによる要因である。
私は、学力階層差の拡大の要因としてもっとも妥当な要因は、教育政策の変更であると考える。というのも、一九九〇年代初頭にはバブル崩壊期にあったものの、その後、低成長期が続き、国民生活への影響は少なからず安定したと考えるため、第一の要因は当てはまらないと考えるからだ。他方、一九八〇年代後半から二〇〇〇年代まで、ゆとり教育と呼ばれる学校教育が展開された。この教育政策によって、学校週五日制の実施、授業時間、教育内容などの削減が実際に行われた。その結果、塾の利用や家庭学習による学力の補填をできない家庭環境の子どもの学力が低下したと考える。以上より、私は、教育政策の影響によって、一九九〇年代から二〇〇〇年代初頭までに学力の階層差が拡大したと考える。(491字)
問2
子どもの学力が高い場合には、高校、大学など高等教育機関への進学の可能性が高まる。その後、その子どもが親世代になった場合に、自分の子どもにも高等教育を受けさせる選択肢を示すことは、自然だと考える。その結果、親が学歴のメリットを自明のものとし、教育意識が高く、それゆえ子どもに対する教育への投資を続け、社会的に高い地位を維持することを求める家庭環境が生まれると考える。
他方、子どもの頃の学力が低い場合には、たとえば、その子供が義務教育を受けるにとどまり、高等教育機関に進学しない、あるいはできない可能性がある。その後、この子どもが親世代となったときには、自分の子供に将来的に高等教育を受けさせるか、あるいは高等教育を受けさせるための投資を子どもに行うかどうかの判断材料を親が持たないと考える。というのも、親が高等教育を受けていないため、高等教育を受ける意義を見出すことができない可能性があるからだ。したがって、学歴に対するメリットが意味をもたず、教育への投資も行わず、子どもに対する教育意識の低い家庭環境が生じると考える。(459字)