2018 山口県立大学 社会福祉学部 小論文試験 模範解答
1
(1)
ひとはみな、「平均」から多かれ少なかれ、ずれている。このずれがそれほど大きくない場合は、自分を建物やきまりに合わせて暮らしていくことができる。他方、どんなに努力しても、平均に合わせて作られた建物やしくみに適応できない人がいる。そういった人々はまとめて障害者と呼ばれる。障害を持つ事実は変えようがないかもしれない。しかし、障害を持つことからどの程度の不利益が発生するかは、環境に大きく依存する。(196字)
(2)
課題文では、障害を持つことによってどの程度の不利益が生ずるかは、環境に大きく依存すると指摘されている。
私も筆者の指摘に同意する。なぜなら、環境を改変することによって、現在障害と認識されているものも、障害ではなくなる可能性があるからだ。たとえば、エレベーターや自販機のボタンなどを車椅子に乗る人々や小さな子供にも押しやすい位置にも設置する。そうすれば、足が不自由なため車椅子に乗ることや背が低いことは、エレベーターに乗ったり、飲料を買う際には障害として意識されなくなるだろう。したがって、障害者が生きる環境や扱う事物を、障害者の有する障害が障害だと意識されないように改変することで、障害者を含む我々の社会全体がもっと生きやすいものになると考える。
こうした社会を作るためには、障害者との積極的なコミュニケーションによって、彼らの生きる世界において何が本質的な障害なのかを明らかにすることが必要だと考える。そのためには、障害者を含む他者のあり方に対して想像力を働かせるべきである。具体的には、自分の物の見方やとらえ方を基本的なものとせず、多様な観点から物事を考えられるようになる必要がある。そこで、年齢や考え方の異なる人々に会ったり、外国に行き、多様な価値観の存在を知ることなどをとおして、自分の物の見方や考え方を相対化できるようになることが重要だと考える。(576字)
2
Ⅰ. 図1より、三世帯世代は昭和61年から平成28年までに4分の1まで減少していることがわかる。他方で、単独世帯は昭和61年から平成28年までにおよそ2倍増加し、夫婦のみの世帯も約1.7倍増えている。以上より、高齢者の一人暮らし、あるいは高齢者のみの世帯が増加したことがわかる。図2から、現代の一人暮らし時に受けたいサービスとして、「通院、買い物等の外出の手伝い」、「日常的な家事支援」、「急病などの緊急時の手助け」などの割合が高いことがわかる。したがって、一人暮らしにおいては、生活に必要不可欠な事柄に対するサービスや、一人では対処できない事態に対するサービスが求められていることが伺える。(293字)
Ⅱ. 図からわかるのは、高齢者の一人暮らしや高齢者のみの世帯が増えた結果、生活に必要不可欠な事柄に対するサービスや、一人では対処できない事態に対するサービスが求められていることである。たとえば、高齢者にとって買い物や通院は、健康・生命維持のために必要不可欠な営みである。しかし、高齢者になると、買い物や病院に行くための足である車の運転をすること自体が困難になる。したがって、買い物や通院が、高齢者が生きる上での最重要課題となる。というのも、高齢者が買い物をしたり、病院を利用できる環境を整備しなければ、少子高齢化が進行する日本において、高齢者の生活は危機を迎えることになるからだ。
以上より、高齢者の移動問題を解決することによって、高齢者が安心して生活することのできる環境や社会を実現することが、今後の社会福祉の課題の一つだと考える。この課題に取り組むためには、移動が困難な高齢者に対して、通院や買い物等へ行くための移動手段や補助人員の確保をサービスとして展開するのみならず、定期的な移動式販売の充実化や地域ごとの回診を行う医療チームの構成などの施策が考えられる。(478字)
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