2018 京都府立大学 公共政策学部 小論文後期試験 模範解答
大問一
問一
現行の生活保護法は、外国人への適用が認められてはいないとしながらも、これまで「実質的に内外人同じ取り扱いで実施」されているものとみなされてきた。しかし、一方で、厚生省による口頭指示によって、外国人への生活保護の対象が永住者や日本人の配偶者など一定の範囲に狭められてきた経緯がある。以上より傍線部は、時の行政の方針によって、外国人の生活保護政策が簡単に変更されてしまうことを意味している。(198字)
問二
筆者が生活保護を「国民」に限定する方針を批判する論拠は大きく三点ある。第一に、外国人も納税者であるにもかかわらず、生存権が認められない矛盾である。第二に、国籍国と生活の本拠が異なる人々が存在することは珍しいことではもはやなく、国籍国と生活の本拠が異なる人々に生存権を認めないことはグローバル化した世界の実態にそぐわないことが挙げられる。第三に、国際社会において、移住外国人の生存権を含む社会的権利が認められるようになった経緯があり、国際人権規約においても社会保障は内外人平等の権利であると位置付けられていることである。
以上の論拠にもとづき、外国人への生存権や社会保障を認めるべきだとする筆者の見解に、私は賛成である。その理由は大きく二点ある。第一に、外国人との共存が今後ますます求められる状況にあり、外国人に社会保障を認めないことが、在留する外国人に反日本人の感情を増大させ、社会不安を助長し、社会的連帯を破綻させる点が危惧されることが理由として挙げられる。というのも、少子化が進行する日本において、不足する労働力を外国人労働者に求める動きがあり、外国人との共生社会を構築していくためにも、外国人に社会保障を認めることは不可欠であると考えるからだ。
第二に、グローバル化した世界において、日本人が他国に移住すれば社会保障が認められる一方で、日本においては外国人に対して社会保障が認められないというのであれば、国際世論からの批判を被ることは必至だと考えるからだ。それゆえ、国際社会において標準的とされる制度を我が国も構築する必要があると考える。つまり、我が国においても外国人に対してシティズンシップを認め、我が国の国民と同様に社会保障制度を利用できる体制を整備することが望ましいと考える。その結果、外国人への社会保障の拡充は外国人労働者を誘致するための魅力となると考える。(784字)
大問二
図1より、就学前児童の年齢が上がるほど、保育施設や幼稚園等を利用する割合が増加する傾向が見られる。また、図2からは、認可施設と認可外施設を比較すると、総じて、認可施設では重大事故件数が圧倒的に多く、2012年以降増加傾向が見られる。また、認可施設での死亡事故件数の推移は横ばいの傾向が見られる。さらに図3からは、我が国の保育、幼児教育への公的支出の対G D P比は、北欧諸国と比較すると最大5分の1程度であり、O E C D加盟国と比べても半分程度である。以上より、日本における幼児教育の傾向は、就学前児童の年齢層が上がるほど、保育施設や幼稚園等を利用する割合が増加する中で、認可施設では重大事故件数の増加傾向が見られ、認可外施設では死亡事故件数が横ばい傾向にあるなどの問題を抱えているのに対し、我が国の保育、幼児教育への公的支出の対G D P比は、他国と比べて数分の1程度しかないことから、日本の就学前児童への教育が手厚いものになっているとは言い難い現状にあると言える。
以上の現状を鑑みた場合、保育、幼児教育の課題は、就学前児童の保育施設における管理者や保育士の拡充をいかに行うかにあると考える。というのも、保育施設等での事故の増加は、管理者や保育士が不足することによって、児童への目が行き届いていないことに起因すると考えるからだ。したがって、保育、幼児教育への公的支出を拡大し、管理者や保育士の増員を行うことが急務であると考える。また、子育て等によって離職した保育士などの再雇用を促進することも課題となる。以上より、就学前教育に携わる人員の確保が日本における保育、幼児教育の課題だと言える。(690字)
大問三
問一
ポピュリズムは反多元主義であり、多様性を認めない。なぜなら、ポピュリズムは政治を道徳的に純粋で不可謬な人民と腐敗したエリートの対立ととらえ、道徳的に正しい指導者が真の民衆を統率すべきだと考えるからだ。(100字)
問二
安倍政権下において、働き方改革関連法案やカジノ法案、水道法改正案などの法案決議に際して、政権与党である自民党は、強行採決を行なってきた。慎重かつ十分な審議にもとづいて各種法案は採決されるべきであり、さらに野党が審議の継続を求めているにもかかわらず、自民党議員が一方的に審議を打ち切り、採決を行なってきたことは、正当な反対派である野党の存在を認めようとしない適例であると言える。
なぜなら、野党政党の多様な主張や考え方を認めようとせず、多数派かつ唯一の政権与党である自民党の論理によってのみ政治が進行されているからだ。それゆえ、安倍政権における自民党のこうした政治運営は、課題文でも述べられているように、ポピュリズムの特徴である反多元主義が体現されていると考える。以上より、各政党や議員のそれぞれに立場や主張があり、多様性が存在することを認めないからこそ、自らの論理のみによって自民党は強行採決に及ぶことができたのであると言える。しかし、こうした自民党の行動は、自分たちが、それも自分たちだけが人民を代表すると盲信するポピュリストの姿勢と軌を一にすると考える。(478字)
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