2019 上智大学 総合人間科学部 看護学科 推薦入学試験(公募制)小論文 模範解答
私が繰り返し立ち返る意味領域は、物語を書くことである。私は中学生のとき中島敦の「李陵」や「光と風と夢」といった作品に触れて以来、物語を書くことに興味を持ち、時間を見つけては趣味で創作活動をしている。そのときに痛感するのは、自分のなかの引き出しの少なさである。新しい作品を書こうとして構想が出てこなかったり、人物描写がワンパターンになったりすることがよくある。
こうしたとき、「どうすればよいか」と考えながら生活をしていると、家族や友人との何気ない会話や、普段の読書のなかで、思いがけない表現や言い回しが見つかり、作品作りのヒントになることがある。これは、物語を書くことに活用できるかどうかを基準にして、さまざまな情報が受け取られているということを意味する。
したがって、日常生活のなかで物語を書くということは、私という人間がどのような意味連関に価値を見出し、その連関に関わる行動を取るのか、という視点から理解することができる。自分が満足できる作品に仕上げるために「どうすればよいか」という問いを発し、それに答えられるように自分の行動を工夫する。そうした多様な行動は、物語を書くというひとつの意味領域に関わっている。ある意味領域に繰り返し立ち返ることが、その人の価値観のあり方を示すものであるとすれば、創作活動はまさに私の価値観の中心である。
このように、日常生活のなかの行動は、それ自体で孤立しているのではなく、創作活動を軸とした意味連関のなかに位置づけられており、行動は意味連関のなかで特定の価値を持つようになる。それゆえ、創作活動とそれに寄与する情報は、私にとって生活の中心をなし、私の個性を表すものと言えるだろう。(707字)
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