2021年度 早稲田大学 スポーツ科学部 自己推薦入試 小論文 模範解答

 表から読み取れることは、第一に、テニス全英オープン、FI FAワールドカップの賞金額は経年とともに上昇してきたことがわかる。第二に、テニス全英オープン、FI FAワールドカップともに男女チームの別において賞金額には差があり、男子のほうが女子の賞金額を上回っていたことがわかる。しかし、テニス全英オープンにおいては、20 10年以降の賞金額は男女において差がなくなっている。他方、FI FAワールドカップでは20 19年においても男女の賞金額に差があることに加え、男子の賞金額は女子の賞金額の約9倍となっており、男女の賞金額には大きな差があることが読み取れる。それでは、こうした推移や変化が生じる要因はどのような点にあるだろうか。
 第一に、テニス全英オープン、FI FAワールドカップの賞金額の経年的な上昇については、スポーツ産業の発展そのものに加えて、新聞社や放送局などのマスメディアによって各種の世界的大会が協賛、演出されるメディア・イベントとして、スポーツが興隆してきたことが要因として考えられる。というのも、速報性を備えた映像メディアにとって、大衆の娯楽となるスポーツは格好のコンテンツになりえたと言えるからである。
 第二に、男女チームにおいて賞金額の差がある点については、近代スポーツにおける男性中心主義を要因として挙げることができると考える。というのも、現在に至るまでスポーツは「男性に向いている」という神話が有効であり続ける要素があり、現代社会ではスポーツというものが非常に大きな影響力を持つ文化的領域として根付いていると考えられるからだ。たとえば、現在、競技スポーツの多くの種目において、男性の競技レベルは女性のそれに比べて高いレベルにある。したがって、この事実が男性は女性よりも肉体的に優位にあると解釈され、社会全般の領域においても男性を優位に立たせる根拠として機能することがある。その結果、スポーツの世界大会における賞金額においても、男性のほうが高額となり、男女における差異が意図的に設けられてきたと考えられる。しかし、テニス全英オープンにおいては、20 10年以降の賞金額について男女による差がなくなっているのは、賞金額について男女の区別を設けることが、社会的文化的性別としてのジェンダーの観点にもとづけば、妥当ではないことが了解されるようになってきた成果であると考えられる。(976字)

いいなと思ったら応援しよう!