2020年度 青山学院大学 総合文化政策学部 B方式 小論文 模範解答
問1
ホッブズによれば、誰をも畏怖させるような共通の権力がない社会は、万人が万人を敵とする闘争状態になるという。というのも、共通の権力が存在しなければ、人間の本性としての敵愾心、猜疑心、自負心が人々に生起し、人々は自己保存のために他者に対する侵略に走るからだ。また、万人の万人に対する戦争状態においては、法も存在せず、法がなければ不正も存在しなくなり、さらには所有も支配も存在しない状態になる。(193字)
問2
ホッブズによれば、共通の権力がない社会においては万人が万人を敵とする闘争状態になるという。しかし、共通の権力がなくとも、必ずしも万人が万人を敵とする闘争状態になるとは言えないと考える。というのも、人々が闘争状態になることが自然であるというならば、人々が理性を働かせて、相互の安全を保障する合意形成などを行うこともまた自然であるといえるからだ。したがって、ホッブズの主張は妥当ではないと考える。(196字)
(別解)
ホッブズによれば、共通の権力がない社会においては万人が万人を敵とする闘争状態になるという。しかし、共通の権力がなくとも、必ずしも万人が万人を敵とする闘争状態になるとは言えないと考える。というのも、未開社会においては人々が共通の権力としての国家や、所有の概念を持たず、我々の生きる社会の権力構造とは異なった社会が構成されていることが確認されているからだ。したがって、ホッブズの主張は妥当しないと考える。(200字)
問3
ホッブズによれば、共通の権力がない社会においては万人が万人を敵とする闘争状態になるという。私は、この主張に反対する立場をとる。というのも、問2において述べたように、共通の権力がなくとも、必ずしも万人が万人を敵とする闘争状態になるとは言えないと考えるからだ。たとえば、東日本大震災時には地震や津波の被害によって生じた壊滅的な状況において、警察機構も機能しないなか、人々は暴動などに陥ることなく、炊き出しの列に整然と並んだり、他者と協働する姿を見せたからだ。したがって、警察権力のような共通の権力がなくとも、人々は闘争状態に陥ることはなく、理性的に行動することができると考える。(287字)