2015 山口県立大学 社会福祉学部 小論文試験 模範解答
Ⅰ.(1)要約
現在の教育は、好きなものを追い求め、それを手に入れることが自己実現であり、ヒーロー・ヒロインになる夢を追い続けることが、子どもを伸ばす最善の方法だと考えている。しかし、この考えは大人になりきらない非凡人の道を勧めている。なぜなら、自分の好きなものでなくとも、凡人として、社会を下支えする職業・生活を担うことが大人だからだ。したがって、教育においては、非凡人の教育と凡人の教育を峻別する必要がある。(198字)
(2)
著者は、たとえ自分の好きなものでなくとも、社会を下支えする職業・生活を担うことが大人であると考えている。私は、著者の考えに同意する。なぜなら、好き嫌いにかかわらず、行わなければならない仕事というものがあるからだ。たとえば、社会福祉にかかわる仕事はすべて、誰かの生活や生命を守るために欠くことができない。
さらに、こうした仕事を担うには、好き嫌いのような価値観だけで仕事を選ぶのではなく、自分の生きる社会において、自分の使命や役割を認識する必要があると考える。なぜなら、確実に助けや救いを求める他者の存在があるからだ。それゆえ、好き嫌いで仕事についたり、やめたりすることはできない。したがって、社会の中で何が求められ、自分には何ができるのかという視点から、生き方や働き方を考えることが求められる。そして、そうした考えに至って、はじめて多様な可能性の中から、著者の言う社会を維持するために必須となる職業・生活を担う選択肢を肯定し、選び取ることができると考える。
好きなものを追い求め、それを手に入れることが最高の幸福であるという考え方を否定するつもりはない。しかし、そうした考え方が、著者にならい、子どもじみた非凡人の価値観にもとづくのだとすれば、社会福祉のような仕事は、個人の好き嫌いを超えた、社会と自己とのかかわりを考えることを余儀なくされる大人の担うべき仕事であると考える。
(586字)
Ⅱ.
(1)
図と表から、全体平均と比較すると「不満・計」(「やや不満」「不満」の合計)のうち、ネット依存傾向「高」の該当率が、「友だち」が18.9%、 「親」が26.5%、「学校生活」が42.33%と、すべてについて全体平均の2倍以上であることが読み取れる。したがって、ネット依存傾向が「高」の生徒は、身近な人間関係や社会生活について不満を有している割合が顕著に高い傾向が見られる。一方で、「満足・計」(「満足」、「やや満足」の合計)のうち、ネット依存傾向「低」の該当率は、「友達」が72.6%、「親」が67.6%、「学校生活」が53.9%といずれも全体平均を上回ることが読み取れる。それゆえ、ネット依存傾向が「低」の生徒は、他者との関係や学校生活に対して満足を感じている割合が高い傾向が見られる。以上より、高校生のネット依存傾向と、身近な人間関係や社会生活への満足度と間には、相関関係があることがわかる。(395字)
(2)
図と表から、ネット依存傾向「高」の生徒は、身近な人間関係や社会生活について不満を有している割合が顕著に高い傾向が読み取れる。しかし、ネットへの依存が過度になれば、コンピューターや携帯電話が使用できないと何らかの情緒的苛立ちを感じたり、ネット利用の長時間化による社会生活や健康への弊害が生じる。それでは、高校生はどのようにネットを利用しながら、適切な人間関係を構築し、社会生活を送ることができるだろうか。私は、ネットへの依存を緩和しながら、現実生活への不満を解消していくことが必要だと考える。なぜなら、高校生のネット依存傾向と、身近な人間関係や社会生活への満足度とあいだには、相関関係があるからだ。そのために、学校にカウンセラーを配置するなど高校生の悩みや不満を共有する体制を整備し、生徒が相談をしやすい雰囲気を醸成することや、ネット依存を予防するための専門家による指導を行うことが考えられる。(396字)
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