2018 宇都宮大学 国際学部 国際学科 一般入試 (前期) 小論文 模範解答

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 課題文によれば「同調圧力」とは、多数意見と異なるものへの反発や、多数意見への同意、あるいは同調を促す雰囲気のようなものとされる。つまり、多数派の見解や流れに逆らうことなく同調し、同調することが当たり前であるという雰囲気を通して、多数派が持つ感情への一体化がおし進められることが「同調圧力」である。それでは、こうした「同調圧力」が個人と社会にどのような影響を与えるだろうか。課題文の筆者も述べているように、多数派の感情に水を差すような批判的な見解を示すことや、社会の流れとは異なった切り口の言を述べることによって、多数派による「風圧」として個人への非難を生じさせる。その結果、個人や少数派の見解は、黙殺されることになる。それゆえ、「同調圧力」は、社会において危険を孕むものだと考える。というのも、多数派の意見や感情が常に正しいとは限らないからだ。 
 たとえば、ナチスの時代、ドイツの人々はナチス政権を選挙という正当な手続きを経て生み出し、その政策を素晴らしいものとして受け入れた。さらに、多くの国民がヒトラーの演説に酔い、それを受け入れることが正しいのだというような空気を、社会全体でつくり上げていった。こうした「同調圧力」こそ「ナチス的な良心」であった。他方で、この「同調圧力」に抗い、ナチスを批判する者はゲシュタポに処刑されることになった。さらには、ユダヤ人は絶滅の危機にさらされた。こうした歴史における悲劇は過去のものではないと考える。というのも、現代の日本においても安易な共感によって生じる「同調圧力」が政治や組織を多かれ少なかれ腐敗させているという指摘が昨今多数あるからだ。会社の中で早く仕事を終えて定時に帰ろうとしても、他の社員が働いている手前帰ることができなかったり、学校の中で奉仕活動という時間が設けられ、生徒の意思に関係なく半ば強制的に実施されたりする事態は、皆が行っているからするべきという「同調圧力」による弊害だと考える。それゆえ、何をどのようにすることが正しい事なのかについて考えたり、正しいと判断した行為を阻害する点で、「同調圧力」は危険なものだと言える。
 以上より、多数派意見への同調やその同調を促す雰囲気は、危険性があると言える。したがって、「同調」する雰囲気に安易に乗ったり、「同調圧力」に屈してしまい自らの見解や感情を抑圧することがないようにすることが重要だと考える。そのためには、事物を客観的かつ批判的に見ることが必要になる。つまり、必要本当にそうだろうかという問いを常に持ち続けることが「同調圧力」に抗する一助となると考える。個人や少数派としての意見や行動が黙殺されたり、封じられることは、健全な組織や社会を維持する弊害となると考える。それゆえ、「同調圧力」に屈しない知性や行動力を各々が身に付けていくことが望ましいと考える。(1178字)


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