2020 横浜市立大学 医学部 看護学科 小論文 模範解答


〔Ⅰ〕

(1)

妻による介護のもと父である茂三が庭で用を足している事実は、茂三が認知症の兆候を示す証左であり、近年、物忘れが酷い自分も父のように老いて、認知症を患うことになるのではないかという危惧の念を抱いたため。(99字)



(2)

 人が老いることによって生じる課題として、身体機能や認知機能、記憶力の低下に伴って生活が困難になることや、自分自身がこれまでのような自分でいられなくなることが挙げられる。特に、認知症の発症によって生じる精神機能の低下はより重度である。というのも、認知症を患えば自己認知もできなくなり、人は出来事をすべて忘れてしまうからだ。
 以上のような人が老いることによって生じる課題に対して、看護職を目指す者としてどのように向き合うべきだろうか。私は、老化現象に伴う課題についてよく知るとともに、認知症状を通じて自らの老いが近づくことによって生じる将来への不安や、認識能力の低下から生じる介護上の諸問題に対する同居する家族の心情について理解を深めていくことが重要だと考える。というのも、老化は誰にでも生じることではあるものの、老化から生じる課題に向き合うことは誰にとっても人生において初めての事態となるからだ。したがって、看護職を目指す者として、高齢者の心理構造や老年学についても学んでいく必要があると考える。(446字)

 

〔Ⅱ〕

(1)

過去一年以内にがん検診を受診した人は全体で5割に満たないことが挙げられる。また、男性に比して女性の方が受診している者が多い点が確認できる。さらに、年代別では40代、50代において過去一年以内の受診率が5割を超える一方で、18から29 歳は7 割以上がこれまでがん検診を受診したことがないことが読み取れる。(146字)

 

(2)

 図2から読み取れることは、がん検診を受診していない理由は多様であり、年代別による特徴も見られる点である。たとえば、30代から50代では「受ける時間がないから」という回答が4割以上となっており、他の年齢層よりも高い割合を示している。したがって、(1)において40代、50代において過去一年以内の受診率が5割を超えることを確認したものの、30代から50代は働き盛りの年齢層であり、がん検診を受診する時間を捻出することが難しいと推測できる。したがって、30代から50代の年齢層のがん検診受診が課題となると考える。
 それでは、我が国においてがん検診受診を効果的に促すために、どのような方策が有効だろうか。特に、これまで以上に30代から50代の年齢層のがん検診受診を促すためには、企業などとも協力し、がん検診受診に企業によるインセンティブを付与することが考えられる。というのも、30代から50代の年齢層は仕事や家庭生活の維持に時間を費やす必要から、がん検診受診の時間がないと答える者の割合が高いと考えられるからだ。したがって、がん検診受診に対する有給休暇制度を創設するなどの取り組みが可能であると考える。(482字)


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