2019 埼玉大学 経済学部 国際プログラム小論文 模範解答

問1

 貧困を示す指標は二種類ある。第一に、絶対的貧困率はある国や地域において生活そのものの絶対水準が低い者の割合を表し、飢餓が発生するかどうかを判断する指標を示すことに適している。第二に、相対的貧困率は全国民を所得の低い順に並べ、所得の中間値の半分に満たない状態にある者を貧困層とみなし、その割合を求めたものである。それゆえ、相対的貧困率は所得の相対的な大きさにもとづいて貧困状態にあるかどうかを判断することに役立つ。以上より、社会において人々が所得の相対的な大きさにもとづいて幸福や不幸を判断するならば、相対的貧困率を指標として用いることが妥当であるため、貧困率を相対的な尺度で測る必要があるといえる。(299字)


問2

 貧困者全体における子どもの貧困者が占める比率は、少子化の影響により低下しているといわれる。しかし、グラフより、子どもの貧困率自体は1984年から10年ごとに上昇していることが確認できる。なぜなら、親世代の貧困率の上昇が子どもの貧困率の上昇の原因だと考えられ、それと同時に親世代の貧困が少子化の要因となる可能性が示唆されているからだ。したがって、子どもの中の貧困率が高まったとしても、少子化の影響によって貧困状態にある子供の数自体は減る可能性が高くなる。その結果、必要な対策を行うべき貧困の状態にある子どもの存在が、数字の上では見逃されてしまうため、筆者は子どもの貧困対策に注目したと考えられる。(293字)



問3

 高齢者全体に占める貧困者の比率は低下しているにもかかわらず、医療制度や年金制度など実質的な高齢者の貧困対策は充実している。他方で、子どもの貧困率が上昇しているにもかかわらず、少子化によって子どもの数自体が減少しているため、子どもの貧困対策は重視されなくなる恐れがある。したがって、筆者が歪みのない貧困対策を進める必要があると主張しているのは、貧困者の数に注目して貧困政策が立てられるとすれば、貧困対策が必要な箇所に適切な対策を講じられなくなる点に問題があるからだと考える。

 それでは、新たにどのような貧困対策が必要だろうか。私は特に子どもの貧困対策に対しては、養育費支払いの徹底が重要だと考える。なぜなら、親の離婚において子どもの養育費等について十分な協議や対処が行われないまま離婚が成立しひとり親となる場合も多数あり、子どもの貧困はひとり親世帯が貧困であることに起因するからだ。それゆえ、民法などの法改正や新たな法整備を行うことによって、両親が離婚する場合に子どもの養育費についてより厳密な規定を定め、ひとり親世帯の子どもの生活や将来に経済的に不安のない体制を整える必要があると考える。(493字)

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