
2022年度 東京学芸大学 学校推薦型選抜 E類教育支援専攻 カウンセリングコース 小論文 模範解答
はじめに、私は多様性には二種類あると考える。一つ目は、比較的表層的な多様性である。たとえば、性別や人種、障害の有無など、一見してわかる違いがこれである。二つ目は、その人の考え方やコミュニケーションの仕方、ライフスタイルといった、より深層に関わる多様性である。
こうした区別をしたうえで、多様性を認め合うとは、人々のあいだに以上のような表層的および深層的な違いがあることを当たり前のものと見なし、違いを持つ他者を受け入れるだけでなく、自分も他者から受け入れられる立場にあると自覚することである。そして、学級においてそうした認識が成立していれば、児童・生徒は各自の意見や望みをためらいなく表現しあうことができるだろう。私は、これが多様性を認め合える場としての学級であると考える。
では、そのような学級を実現するには、どのような方法が考えられるだろうか。私は、個々の児童・生徒が上記二種の多様性を持つ他者がいることを直視すること、そしてその違いを理由とした攻撃や排除をしないことが重要であると考える。
たとえば、学級のなかには、肌の色が違う児童・生徒もいれば、さまざまな性格や意見を持った子どももいる。そうした違いのすべてを肯定して支持するとか、すべてに同調して自分の意見を譲るといったふるまいは、現実的でないばかりか、多様性を認め合うことでもない。なぜなら、そうすることで自分の好みや意見という一つの多様性を抑圧してしまうことになるからである。むしろ、自分と異なる人が学級にいるということをまず認識したうえで、そういった違いがあることを理由にからかわれたり仲間はずれにされたりするのはおかしいという姿勢を持つことが大事である。
多様性を認め合うというと、ともすれば他者に対する無関心を奨励しているかのように誤解されることもある。しかし、それは本来のあり方ではない。互いの違いを直視し、対等な関係を築くことを目指して共に生きること、いいかえれば、対話を通じて考えを共有しながら助け合おうという姿勢が重要なのである。したがって、多様性を認め合う学級の実現には、無関心ではなく、他者に対する前向きな関わりというスタンスが必要になってくる。
こうした態度に加えて、自分とは異なる境遇で生きている人のことを知ることが、多様性を認め合うためには必要だろう。多様性には意識しなければ見えてこないものもある。しかし、授業やその他のメディアを通じて、日常生活のなかにも他者と自分との異なりに気づくきっかけがたくさんある。そのようにして多様性の存在を認識し、認め合うことが、人権の尊重やジェンダー平等といった普遍的な価値の実現の基礎になるだろう。(1106字)