2013 順天堂大学 スポーツ健康科学部 推薦入学試験 小論文 模範解答
【学科別推薦】
問1.
日本人には伝統的に腰や肚を重要な中心として位置付ける身体感覚があり、この身体の中心感覚は、精神面にもわたるものである。しかし、戦後、生活様式が欧米流に変化してきたため、日常生活において伝承されてきた腰や肚を重視する文化が断絶した。その結果、中心感覚を失った日本人には、近年、自分の身体が自分にとってよそよそしいものと感じられたり、自分の身体に力強さや張りを感じられなくなったりする傾向が加速している。(200字)
問2.
日本人が腰や肚を重視する文化を失った結果、中心感覚が失われ、自分の身体を自分にとってよそよそしいものと感じたり、自分の身体に力強さや張りを感じることができなくなったりしている傾向を筆者は指摘している。私は、筆者の述べるような傾向が進めば、日本人が身体面でも精神面でも充実さを欠き、様々な分野で力を発揮できなくなると考える。というのも、筆者も述べているように、身体の中心感覚を失えばストレスも大きくなり、仕事や勉強への集中を欠くことになると考えるからだ。したがって、身体の中心感覚を取り戻す必要があると考える。
それでは、身体の中心感覚を養い、取り戻すためにはどうしたらよいのだろうか。かつては、日常生活のなかで自然に身体の中心感覚が養われていた。しかし、子どもたちでさえ外で思い切り遊ぶ機会が失われている現在では、意図して中心感覚を養うような運動プログラムを構築し、実践する必要があると考える。たとえば、呼吸法を整える座禅や、精密さとダイナミックな動きをともに要求される「まき割」の仕事、全身運動としてのダンスなど、中心感覚を取り戻すために有効と考えられる動きを組み込んだ新しい運動プログラムである。単なるスポーツではなく、普段行うことのない運動体験の機会を、子どもたちを中心として設け、大人も参加できるように展開していくことによって、日本人は身体の中心感覚を取り戻すことができると考える。
(594字)
【アスリート推薦】
日本のドーピング検査件数は、アメリカやイギリスにはまだ及ばないものの、年々増加傾向にある。ドーピングの件数の増加は、ドーピングの疑いのある人やドーピングをする人の増加を示している。なぜ、スポーツ選手はドーピングをしてしまうのか。
私は、スポーツのビジネス化が、ドーピングの増加する理由の一つだと考える。プロスポーツ選手やトップアスリートたちは、企業とスポンサー契約を結び、経済的支援を受けることが多い。スポーツのビジネス化によって、選手は良い環境や支援体制のもとで活動できる。しかし、選手がトップで活躍できなくなれば、注目を失いスポンサーの広告塔にはなりえない。企業スポンサーからすれば、宣伝効果のない選手に投資する理由はない。スポーツ選手がトップでなくなること、あるいはトップになる見込みがないことは、スポンサー契約を打ち切られ、今後のスポーツ活動に支障をきたすことを意味する。したがって、トップであることを維持するために選手はドーピングをしてしまうと考える。現状の成果至上主義のスポーツの在り方を見直すことで、ドーピングに対する対処法が見えてくる。最高の結果を出すことばかりに価値を置き、選手の行動を歪ませてしまうこうとは望ましいスポーツのあり方とは言えない。それゆえ、スポーツ選手を多様な仕方で支援していく体制を国や自治体等も主導して作っていくべきだと考える。
(582字)
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