2020年度 岐阜大学 地域科学部 小論文 模範解答

I
問1 140字程度
技術知は、知識を道具として、いいかえれば目的を果たすための手段として扱う。その際、目的そのものの善悪は問われず、知識がその目的に適合するかどうかだけが重視される。そのため、主体はその都度の目的や欲望に従うだけで、より広い視野を持たなくなるので、目的それ自身の価値について盲目なままになるから。(146字)



 
問2 400字程度
思想知は、知識を自己の中心である生き方に深く関わるものとして捉える。いいかえれば、知識というものを、目的のための単なる手段と見なすのではなく、生きる主体の価値観や人間形成の中心に据えるのが思想知の水準である。したがって思想知においては、主体の設定した目的やその都度の欲望は、無批判に措定されるのではなく、本当によいものか吟味される。ところが、大学生の就職先である企業や、大学を監督する行政がもっぱら短期的な利益の増加のみを追求し、正確さや明瞭さが重視される知識――技術知の水準――にしか関心を示さないことで、大学における思想知のレベルの営みが、迂遠なもの、「役に立たない」ものとして敬遠される事態が生じている。すぐに利用可能なように整理された知識ばかりが尊重され、私たちの欲求や目的そのものの価値を問い、さまざまな制度や事象の究極的な原因を探求することが阻害されれば、学問の衰退に直結する。(395字)
 
II
問1 150字程度
モダニズムの都市景観とポストモダニズムの都市景観について、ベルクは、それらが反規制的、反設計的な思想に基づいており、特定の場所に縛られないため風土性を無視していると批判している。ジェイコブズは、どちらの都市景観も多様性の真のあり方を誤解しており、みずからの意図に反して結局は均質な場所を作り出していると批判している。(158字)
 
問2 400字程度
伝統的な都市景観について、ベルクは、外から眺めたときには統一されたまとまりのある形をしており、また都市内部でも、建物と街路のあいだの比率を規制するといった統一性への志向があると述べる。他方、ジェイコブズによれば、伝統的な都市景観は一見すると均質に見えるが、それぞれの建物が用途と年代において異なっているので、じつは真の内容的な違いを含んだ場所である。これらを踏まえれば、伝統的景観とは、外的な統一性と内的な多様性が共存する場であると考えられる。そこで私は、日本における伝統的景観についても、こうした共存の場を保存していくべきであると考える。なぜなら、そのような都市こそ、魅力があり、住むのにも適した場所となるからである。その際、単に外観を従来のまま残したり、内部の設備を使い続けるといった方法では不十分である。新たな建物を建てたり、既存のものを改築したりするときは、新しいものを取り入れながら、建物全体、都市全体との調和を図るようにしていくことが必要である。(429字)
 

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