2017 横浜国立大学 都市科学部 環境リスク共生学科 後期 小論文 模範解答
1)
自然環境の変化として地球温暖化の進行により気温が上がると、高温障害や水不足により、農作物の生産量が減少するおそれがある。その結果、地域社会における農作物の収穫量が減り、我々の食生活への影響が出てくると考えられる。また、温暖化により真夏日が続けば、熱中症患者が増え、さらに、日本にはこれまで見られなかったマラリアやデング熱といった感染症が、日本にも上陸すると考えられる。加えて、熱中症患者の増加や感染症の発生によって、地域社会における医療体制の見直しを迫られることが考えられる。したがって、近隣地域の医療機関や都市部の専門医との連携が促進されるという影響があると考える。(284字)
2)
都市の規模が大きくなればなるほど、地域におけるいわゆる「近所付き合い」が希薄になっていくことが、社会環境の変化が地域社会に与える影響として考えられる。また、高齢化の進行により、いわゆる「オレオレ詐欺」などの高齢者を狙った犯罪が急増してきている。さらに、地方都市における都市部への人口の流出によって過疎化が進行することで、地域社会において警察や消防、医療機関などの公共インフラや各種商店などの商業インフラが立ち行かなくなり、地域社会の生活そのものが成り立たなくなるおそれがある。したがって、少子高齢化や都市部への人口流入などの社会環境の変化によって、地域社会を崩壊させることが危惧される。(293字)
3)
社会環境の変化が自然環境にもたらした影響として、少子高齢化に伴う農林業の担い手の減少・高齢化は、里地・里山の荒廃を招く要因となり、森林や農地による水質・大気浄化などの公益的機能の低下を招き、野生動植物の生息・生育環境の劣化が生じてきていることが挙げられる。
したがって、若者の農林業への誘致や、農林水産物等の地域資源の活用、地域の多様な人材の活躍により、民間主体で地域環境の課題解決に取り組む動きを促進することが対応として考えられる。他方で、自然環境の変化が社会環境にもたらした影響として、近年は、短時間強雨の増加、海面上昇などの自然現象の変化に伴って、新たな防災上の課題も発生してきていることが挙げられる。それゆえ、水災害適応型社会の構築を目指し、各種の水災害を想定した地域ごとの具体的なガイドラインや被害拡大の防止策について、専門家を交えて定める必要があると考える。
(384字)