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2024年の振り返り②仕事とトピックス編
引き続ける振り返り記事を書きたいと思う。
後編は今年の弊社の仕事とトピックスに触れていきたい。
弊社(合同会社INTERFACEDOGS)は代表である自身が2022年に所属している会社を退社し、事実上独立という形で作られた個人法人である。
映像作品の制作、仕事の依頼を受けてディレクションや撮影監督として関わっていくことになったわけではあるが、今年1年を通してようやく自分達の仕事の形、映像制作のイメージのラインにのり始めることになった。
チームに協力していただいているスタッフの方々、仕事で携わった方々、演出家の谷元さん、イラストレーターのいわさき君、スクリプト開発で協力していただいたMiyaさん、撮影を支え続けてくれた山浦さんには多大な感謝を申し上げたい。
①「きみの色」 アニメーション映画 山田尚子監督 撮影監督
作品開発期間のロケに同行してから、制作を経てやっと作品公開になったのもあるが、作品、現場に自分なりに寄り添いながら最後まで歩み続けることの重要性を実感する大きなプロジェクトだった。撮影監督業はもちろん色々なことを経験させていただいたのは、何度も言い続けるが声をかけてくれたサイエンスSARU様と山田尚子監督に大きな感謝をお伝えしたい。
作品内容としてはAdobe様からの取材を受けたので以下を参照していただければと思う。
大前提として監督やスタッフの方々は制作の過程の中で相当様々なことを悩みながら理想の表現を模索しておられたと思う。私自身も例外ではなく監督の作品に込めた”ニュアンス”をどうやって形にするかと試行錯誤を幾度となく繰り返してきた。制作を終えてみて”試行錯誤”という工程をしっかり撮影チームの中で行うことをできたのは、先述したような初期の段階からずっとこの作品に向き合い続けてこれたことがどれほど大事なことだったかということに尽きると思う。タイトなスケジュールの局面では制作の方達に対して強く伝えざる得なかったこともあり、私自身と交渉することも容易ではなかったと思う。そこは本当に常に現場を悩みながら支え続けてきた制作の力でもあった。これは私主観のテーマではあるが、”どうやって劇映画的なニュアンスを映像に込めるか”という面においても監督と話し合いながら様々なアプローチを思索してきたのは自分のこれからの活動において本当に大事な経験だったように思う。”物語を積み上げていくこと””映像を空気を描くこと”、私にとっては監督と向き合い続ける中で、得た知見や対話、試行錯誤のすべてが私にとってもチームにとっても大きなターニングポイントになったことは間違いなく、改めて声をかけてくださったことに対する感謝を送りたい。どうやってアニメーション”映画”を顕現させるのか?そのことに向き合い続けた現場だった。現場が完全に終わり、イベント試写で改めてこのフィルムに触れて「あっ、我々は”映画”を作ったのだな。この映画の優しさは誰かを救う作品になるのだな」と痛感し、そのことを監督に最後にお伝えした。
作品、現場に寄り添うことの大事さを学んだ現場だった。
2、「ラッキーなサファリでおにごっこ!?【POKÉTOON】藤田春香監督
撮影監督
有限会社ゼクシズ様とは新たな現場との出会いであり、監督とは「きみの色」から引き続きのお仕事だった。規約上、内容については多く語ることはできないが、自分にとっては正に大きなプロジェクトを終え、こまごまとしたお手伝いをしながら、アニメーションの以外の映像制作も経て、改めてチームとしてアニメーション制作に向き合うことになった作品だった。当たり前のことではあるが、撮影が表現するニュアンスや要求される方向性は作品毎に違うわけで、まさに現場に少数故のフットワークで寄り添うという経験をどうやってこれからアプローチしていくかという意味でスタイルを変えながらどうすればマインドを変えずに向き合えるかを試される局面だったように思う。
3、今年後半の仕事、これからの仕事
ありがたいことに来年、再来年とディレクション仕事、撮影監督業でのご依頼をいただき、特にチーム元請けの仕事は年後半からずっと進めている。
映画、テレビ、短編 色々な現場にお呼びいただき、活動を始めて3年で自分たちが”自分たちなり”に出来ることの1つの方向性が見えてきた。
こう書くのには大きな理由があり、この3年で決して思い通り仕事をこなせてきたわけではなく、どうやってご相談いただいたお仕事に自分達のポリシーを守りながら向き合い続けられるのかというのは本当に悩みだった。
私自身”仕事として淡々とこなしてしまうこと”と”現場に最大限寄り添った仕事をすること”というのは同じ仕事でも似て非なるものであり、ポリシーとしては本当にひとつひとつの仕事を大事にしていく意味では本当に大きな選択でもある。どんな仕事であっても自分達が関わることが現場の力になっていくところまで持っていくのは、シンプルに容易ではなく、またそういう感覚そのものが邪魔になるタイミングもあるかもしれない。
それでも一緒に仕事してくれた方々が新しい現場に再び呼んでくれること、作品を通して私達を知ってくれた方々が向かい入れてくれることは制作者としては誇りであり、常に立ちふさがる壁に悩みながら乗り越えていけたらと思う。
4、アニメーション業界の変化
15年以上アニメーションの制作、撮影として携わってきた後に個人として見えた業界の景色は大きく変わっていた。2022年にチームとしては初めて元請けとしての仕事をはじめ、撮影では関わらないセクションの人々と関わり始めたのが、これに気づいたタイミングだった。
いかに優秀なスタッフを抱えながら、ビックバジェットのプロジェクトを完遂するか。ここ数年はビジネスとしてのアニメーション制作の色が最も強くなった期間だっだと思う(そしてこれからも)広告業界にとっても音楽業界、映画産業、出版、配信サービスにとって日本のアニメーション作品のプライオリティ(ある種の広告的価値)は無視できないものになりつつある。
ここ最近の大手制作会社の動きは正にそれに呼応するかのように横に広がるのではなく縦に伸びているようなニュアンスが強い。人材の流動もまた大きく変わり、常に現場が変わるのではなく、いかに固定の現場でプレイヤーが戦っていくかがテーマになっている。
一方で弊社の依頼も多くは「期間をしっかりとって丁寧に作品を作り上げたい」という現場がほとんどである。そもそも多くを求められる時代になったからこそ刹那的に勢いで作品を作るのではなく、セクションひとつひとつの効果を最大限引き出そうとする現場、監督と長い期間を経て共有し精度を上げようとする現場も少なくない。変化の良し悪しはあるにしても、今は各社がそれぞれ今の需要に備えて現場のスタイルを大きく変えていることに作りてひとりひとりがどう判断するかが重要な時代を迎えたといってもいい。
現場を選ぶのではなく、選んでくれた現場の中でどう関わっていくのかが本当に大事な局面だなというのが弊社の状況を踏まえても本当に大きいと思う。また、アニメーションにとっての何度目かのピークを迎えつつ、大きな課題点としては作品の企画の精度や映像的手法の実験の必要性がより強くなっていく状況に今なりつつあると思う。何を足して、何を引くのか、デジタル技術によって様々なアプローチが可能になったからこそ、画面を作る以前の企画=物語、そして歴史の中で蓄積されてきたノウハウの検証、またはアニメーション作品に対する批評の必要性が問われている時代になってきているとも思う。
5、てくてく日和
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最後に弊社が元々自主制作映画を作るために発足されたチームであったことそして今もなお自社作品「てくてく日和」を製作し続けていることについて触れたい。企画をしてから15年が経った。様々なトラブルや障害を経てほぼ全カット背景、作画はそろった上で現在私自身の最後のわがままとして、もう1段階ブラッシュアップをしたいということで仕事の合間にはなっているもののよりよい形で世に出すために少しずつ積み上げている。
思えば勢いに任せて未熟ゆえに完成させてしまうのもひとつの手段だったと思うし、その方がかえって作品としてはストレートな形になったのではというのは前提としてある。しかしながら学生の集まりだったチームやチームのメンバーは長い年月を経て様々な経験をし、様々な技術を身に着けてきた。
改めてこの作品はなんとために作られるのかということを改めて問い直し未熟だった自分が思い描いた理想を現在の自分の力で形にしたいというのが正直な気持ちだ。
今年から新たな仲間も加え、最後のブラッシュアップのための工程をじっくりと進めている。
この作品に登場する主人公たちの街の取材もより精度を上げて行った。
彼女たちの通う学校は?住んでいる街の周辺には何があるのか?どんな日常を過ごしているのか?より踏み込んだ形で作品の形を模索している。
何より大きかったのは彼女たちの通う学校のモデルになっている中学校に実際オファーをして取材させてもらったことだ。
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これももしかしたら自主チームではなく制作現場(法人)として作品を作れる環境になった大きな進化だと思う。取材の中で実際通っている生徒さんたちや学校関係者さんたちと交流できたのも大きかった。
また、取材の範囲を広め(舞台が谷中)上野、鶯谷、吉原など東京のこの土地がどういう磁場や空気を持っているのかをより踏み込んで臨んだ。
私たちが生活する”街”という空間はどのような世界観を持っているかを実感することができた。
もしかしたらより完成を実現するためには新たな力、新たな現場の形が必要かもしれない。
未熟だった若者の思い描いた世界を映画として見れる最良の形になるようにこれからも最大限の労力をもって制作したい。
なんだか色々頭に思い描いた内容になったかというと硬い文章になってしまってはいるものの、今年は大きな仕事を終え、本当に仕事の方向性に関してはどうやって構築すればいいのか?どうやって法人としてもアプローチすればいいのか悩んだ年だった。
いいことも嫌なことも合わせて人生なのは当たり前。
その悩みの中で「こうじゃないかな?」と勇気をもって踏み出したときに、多くの反響をもらえたのはチームを持つ人間として大きな自信につながった。来年以降の弊社の仕事や作品に是非注目していただけたらと思う。
少しずつ弊社が目指すアニメーションに対するアプローチが見えてくると思う。
よいお年を!