「Policy Fund」で、政策を軸にした社会課題解決を加速する。
こんにちは!PoliPoli代表の伊藤です。
この度、政策を軸にした社会課題解決のための寄付基金「Policy Fund」をリリースしました。
PoliPoli社としても大きなチャレンジで、会社の節目としても、Policy FundやPoliPoli社についても書かせて頂きたいと思います。
1.PoliPoli社の現在地
創業からは5年半、今のPoliPoliプラットフォームのリリースからは3年半経ちましたが、創業以来、政治行政の新しい新しい仕組みをつくるというミッションを達成するため、数々の方針転換を繰り返しながら、政策共創のプラットフォームづくりを行なっていきました。
今年には、大手通信キャリア各社を含むシリーズAの資金調達を行い、応援して頂いている皆様のおかげで、スタートアップとして急成長フェーズに突入しています。
大きく分けると、以下の図のように4つの事業を展開しています。
政治家や政党の方々に声を届けるためのオンラインプラットフォーム PoliPoli、行政機関の方々に声を届けるための PoliPoli Gov、企業の方々向けのルールメイキングのサポートPoliPoli Enterpriseを展開しています。
こうして、政策共創のプラットフォームや取り組みを進める中で強く感じたのは、日本には政策提言を行うNPOやルールメイカーが少ないという課題です。そこで、始めたのが右上の財団向けの事業です。すでに世界規模の財団の方々と連携し、グローバルヘルス分野のルールメイカーをサポートするReach Out Projectなどの取り組みが始まっています。
この財団事業の新しいプロジェクトとして、Policy Fundを始めることになりました。
2. なぜPolicy Fundをはじめるのか
PoliPoli社としても5年半多くの社会課題や政策に関わる中で、以下のような課題を感じるようになりました。
①取り組むべき課題が多くある
②政府・自治体の政策実行までのコストが大きい
③寄付が少なく、民間のソーシャルセクターの社会課題解決が足りないこと
これらによって、民間からの政策提言や政策提言のリーダーが少なく、政策を軸にした社会課題解決が足りないという状況になっていると思っています。
※ここでの「政策」は、「社会課題の解決」「より良い社会の実現」といった公益を実現するための手段を意味しています。政府主体だけでなく、民間と共創する場合もあります。
①取り組むべき社会課題が多くある
多くを説明する必要はないかと思いますが、日本や世界には多くの課題があります。
例えば、日本国内ですと、日経新聞さんの以下のデータなどでもわかりやすいように、先進国平均から見ても、多くの指標に課題感があります
また、グローバリゼーションが進み、気候変動、グローバルヘルスなど、あらゆる社会課題は地球規模のものになっています。
②政府・自治体の政策実行までのコストが大きい
政府や自治体などが行う政策は、大きな予算やリソース(人材、時間、公共財など)をかけて大きな社会的なインパクトを出すことも多いです。しかし、国民の税金を使っている以上、基本的に以下の図のような年間スケジュールで予算案が進むなど、政策実行までには説明責任や公益性などが強く求められます。
また、政府のリソースにも限界があり、これらの社会課題を解決することにも限界がきています。また、少子高齢化、人口減少、経済成長の伸び率などの状況をみていると、今後数十年で政府のリソースが大きく増えることは期待できません。複雑化し多様化している社会において、公的リソース配分はますますシビアになり、公的セクターが政策を行うのが難しくなっていく時代になっていくと思います。
③ 寄付が少なく、民間のソーシャルセクターの社会課題解決が足りないこと
上記のように公的なリソースに限界がある中で、日本では民間の寄付が圧倒的に少ないという状況があります。海外では、民間の寄付基金で、公的なリソースよりも「早く・小さく」社会課題を解決していくことで実証を行い、成功事例を政府に取り込んでもらうという流れが多くあります。
しかしながら、日本は、富裕層はアメリカに次いで、世界で2番目に多い一方で、先進国の中で見ると寄付総額が少ないというデータがあります。
例えば、2020年時点で、アメリカの個人寄付総額が34兆5,948億円なのに対し、日本の個人寄付総額は、1兆2,126億円です。(うち、半分以上の6,725億円をふるさと納税が占めています。)
個人的な想い
政策共創のプラットフォームを運営しているため、普段から個人的な意見などは発信しないようにしているのですが、今回は少しだけお話しさせてください。
政策共創のプラットフォームを運営していると、たくさんの社会課題やそこに苦しんでいる方々によくお会いすることになります。社会はこんなにも多くの課題があり、苦しむ方々がいるんだということを知るようになりました。
個人的にもボランティア活動などを通じて、目の前の方々を助けるという素晴らしい経験をさせていただいている一方で、これらの課題は「構造的な問題」であることも多く、政治家、官僚、メディアなどの特定の個人の悪意のせいではなく、複雑に絡み合った課題を一つ一つ解決していくしかないと感じるようになりました。
政策というのは、ルールなど社会の根本に関わることが多く、構造的な問題を解決する上で大事な要素であると思います。政策を軸にした社会課題解決を加速していきたい理由はここにあります。
3.Policy Fundの概要
上記のような社会課題を大きく、下記の二つの指針で解決していくのが、Policy Fundの概要になります。
①民間のリーダーたちからの寄付を集め、社会課題を解決する
一つ目の指針は、民間のリーダーからの寄付を集めるということです。フィランソロピー活動と言われるように、現在は主にITスタートアップで財を成した経営者の方を中心に寄付をしていただきます。
自身も19歳でスタートアップを起業し、前職はVCで働いていましたが、スタートアップエコシムの素晴らしさに魅了されてきました。
スタートアップの世界は、(当事者単位で見れば大変なことばかりですが)リスクを取って努力し成功した方にはリターンがあり、失敗しても次のチャンスもあり、成功した方は次のスタートアップにエンジェル投資や支援を行っい、エコシステム全体が成長していくという仕組み自体が素晴らしいものだと思っています。何より、日本社会全体で見ても珍しいようなモメンタム(勢い)が中心の世界が広がっています。
「成功者が次世代にリソースを回していき全体として成功する」というようなスタートアップのような仕組みをソーシャルセクターでも作りたいと思っています。
エンジェル投資や社会課題に関心のあるビジネスリーダーの方々にヒアリングをしたところ、寄付をしたことがある方も多くいましたが、「自分のお金でどのようなインパクトが出たのかわかりづらい」「手触り感がなく、面白くない」といった意見も多くありました。
Policy Fundでは、ビジネスリーダーの方々に馴染み深いKPIマネジメントなどのビジネススキームを使うことで、ゴール指標や社会インパクトを定量し、寄付の効果を示していきます。
②小回りが効く民間の予算で小さく成功実績を作り、政府の政策に反映してもらい、政策の質をあげる
政策共創のプラットフォームを運営する中で、今では毎月のように政策が進み、実現しています。
例えば、PoliPoliが一つのきっかけになった生理の貧困のようなムーブメントが起きれば、政策としても10億円単位で政府予算が動き、文化にも影響があり社会インパクトが生み出すこともできます。
また、PoliPoli社として主催しているReach Out Projectなどでも後援していただいているビル&メリンダ・ゲイツ財団やフェイスブック共同創業者ダスティン・モスコヴィッツさんらのOpen Philanthropy財団などの世界規模の財団とコミュニケーションする中で、民間からの寄付リソースで「どれだけレバレッジをかけて社会インパクトを出せるか」という視点を非常に重要視しているのを感じています。
例えば、ビル・ゲイツさんはフィランソロピー(企業による社会貢献)について「政府機能に対するベンチャーキャピタル」と表現しているようです。
これらの経験から民間で小さく社会課題解決の成功実績を作り、政府の政策に反映してもらうという社会課題解決の流れを加速することができるのではないかという仮説が、Policy Fundの出発地点となった考えになります。
具体的には、下記の図のような仕組みになります。
①左のようにまず、ビジネスリーダーや財団から寄付を集めます。
②Policy Fund内に、寄付者が興味あるテーマごとに基金ができていきます。
それぞれの基金ごとに寄付が行われ、個人の基金、数名の個人の基金、他の企業や財団との共同基金など様々な基金ができていきます。
③基金ごとに、公募なども行いつつ、NPOやルールメイカーの方々を募集・選定させていただき、寄付を行います。
④PoliPoliが、政策プラットフォームなどで培ったノウハウやネットワークをもとに政府等への政策提言のサポートを行いつつ、政策へのインパクトを出していきます。
また、PoliPoliは、寄付先の最終意思決定やテーマ選定などは行わず、全てのプロセスにおいて、あくまでも黒子として寄付先のサポートや運用を行います。寄付者が最終の意思決定などを行います。PoliPoliは寄付者と別途業務委託契約を結び、基金の運用や寄付先へのサポートのための資金を一部いただきます。
Policy Fundを一言で説明すると、「政策のベンチャーキャピタル」です。民間の単位で小さく早く社会課題解決のソリューションをつくり、政府にソリューションを実績とともに提示することで、政府の方々から見ると確実で効果的な社会課題解決を政府でも行えるという、まさに政府の政策づくりを補完するような仕組みになります。
海外の財団とは違うのは、日本では数兆円単位で寄付を行うビジネスリーダーが少ないため、多くのビジネスリーダーに共同で寄付を行なって頂くという点です。
4.今後の展望
Policy Fund自体もはじまったばかりですので、アジャイルにアップデートしながら、インパクトを大きくしていきたいと思います。
その中でも、大きく以下の3点が今後の展望になります。
①NPOやルールメイカーの方々と、政策的なインパクトを出す
Policy Fund成功のセンターピンは、政府に政策を反映していただき、社会インパクトを出すような成功事例を継続的に作っていくことです。最初の寄付先は、社会課題へのソリューションや実績があり実行性のある政策立案を行うことができる、年間予算数千万~2億円程度の団体が中心になる想定です。
リリース時では一つ目の基金として、国内利用者数No.1の中小企業向けビジネスチャットを運営するChatwork社代表取締役 CEOの山本さんの「山本正喜ポリシー基金」が既にスタートし、寄付先を探しています。NPOやルールメイカーの方々はぜひご応募いただけると嬉しいです。
※基金とありますが、NPOの方への寄付は返済義務はなく、政策提言に関係する取り組みに利用して頂きます。
②自治体や政府との連携を行なっていく
政策提言の受け手として、政府機関や自治体の方々との協力は欠かせません。自治体・政府のパートナーの方々を募集しています。既に自治体や政府の方々とはお話をさせていただいておりますが、多くの自治体や政府の方々とコラボレーションをしたいと思います。
自治体や政府の方々から見れば、実証実験の資金を民間から寄付をさせていただき、全国のソリューションを持ったNPOなどの方々と一緒に地域課題や対象テーマの解決を行えるという仕組みになります。興味のある自治体や政府の方は以下のフォームよりご連絡をお願い致します。
③寄付者を増やし、規模を大きくしていく
Policy Fundでは、2024年末には数億円、5年後には数十億円から100億円規模の基金サイズを目指しています。すでに年内にいくつかの基金設立の内定していますが、ビジネスリーダーや財団の方々からの追加の寄付が必要不可欠です。
もしご興味ある方がいれば、伊藤個人まで直接ダイレクトメッセージをいただければ幸いです!
https://twitter.com/kazuma12222
5.おわりに
半年前ほどから動き出したPolicy Fund構想をリリースできることをまずとても嬉しく思っています。多くの関係者の方々に助けていただきました。
Chatworkの山本さん、NYLEの高橋さんには、最初に寄付をコミットいただきました。
https://forbesjapan.com/articles/detail/65754
また、パートナーとして以下のような素晴らしい方々に応援をしていただいています。
クラウドファンディングでの連携をさせて頂くCAMPFIREさん、日本での政策起業の第一人者であり寄付先へのサポートなどでご一緒させてフローレンスさん、政策起業家のプラットフォームPEPさんにはパートナー団体として協力して頂く予定です。
個人のアドバイザーとして、ルールメイキングのシンクタンク・コミュニティ「Public Meets Innovation」の石山アンジュさん、アカツキ共同創業者の塩田さん、社会的企業・NPO団体連盟組織の「新公益連盟」の白井さん、多くのベンチャー企業へのサポートをしている須田さん、「Speee」や「Datachain」の創業者で、非営利スタートアップの創業期へのサポートを行う財団「Soil」の久田さん、「ふるさとチョイス」など地方創生の事業などを行う「チェンジホールディングス」の福留さんなど、素晴らしく強力な方々にご協力いただいており、寄付先へのサポートなどをはじめ様々なご虚力を頂く予定です。
また、ここでは書ききれませんが、本当に多くの関係者の方々にご助言とサポートをいただいています。本当にありがとうございます!
Policy Fund自体もまだまだ小さいですが、私たちの活動が呼び水となって、社会全体にフィランソロピーや政策提言の機運が広げていきたいと思っています。ぜひ、一緒に社会をよくしていきましょう!
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